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白瀬さんちの開かない扉  作者: いもっち
11/18

【11】研究、そは真理の探究なり

 夕飯時。我が家に毎度の面子が揃ってダイニングテーブルで頭を抱えていた。


「私の職場、普通に行こうと思ったら3時間コースなんだけどなぁ…変な所でガッツあるよね、蒲野くん。」

「はいはーい、とうさんにしつもーん。その普通なら3時間コースの通勤なのに朝七時半に出勤して夜七時に帰宅してたのってどーいうことですかー?」

「えー…それはー…」


 ここで隼瀬おじさんをチラ見する我が父。やはりヤバい通勤方法なんですね知ってた。


「隼瀬くん、怒るからなぁ…。」

「怒られるのがわかってるなら腹決めて吐いとけ。」

「うぅ~………えと、うちの最寄り駅と大学の最寄りのトイレにこっそり転移ゲート作っておいた。」


 ごぃん。


「隼瀬くん暴力反対ー!」

「言葉で言ってわからないヤツに芸を仕込むにはこれしかないだろ!身体で覚えろ!」

「そんなこと言ったって他の大学に勤めるアテなんてないもんー!」

「死ぬほどあるわ!キサマが人見知りするからだろ!」

「「ひとみしり」」

「雪雄さん、初めての人相手だと緊張しぃだからねぇ…。」

「凪ちゃんがいるから何とかなってるのもあるわよね〜。」

「あたしゃ翻訳機じゃないんだけどなぁ。」

「凪ちゃんとじゃないと研究が進まないんだよ〜、私の理論や発想を形として作り上げられるの凪ちゃんしかいないから〜…。」

「他の研究者や技術者が理解できる所までダウングレードせんか!」

「えぇ~!」

「えーじゃない!」


 唯と目が合って、頷きあった。ダメだこの人。


「はいはーい。要するに、うちのとうさんは人見知りの自重できないマッドサイエンティストで、かあさんは共犯者って理解でよろしいですか〜?」

「「娘がひどい!」」

「「その理解で合ってる。」」

「「お隣さんまで!!」」


 夫婦同士でハモってて仲のよろしいことで。だけど、これじゃ話が進まないんだよね。


「とうさんのやらかしの追求はまた今度にして「追求しなくても(ゴン!)」昨日と今日の蒲野?って人について話し合わないとでしょ?」

「そうそう、蒲野くん、うちにある資料やら文献が欲しいって言ってたんだよね?」

「何かそんな感じだったね。」

「彼の研究、私の研究と結構被っちゃってるんだけどさ、どうにも色んな条件やら前提やらが間違ってる状態で進めてて行き詰まってるみたいなんだよ。」

「どんな研究なの?」

「行きついた結果のひとつがあれ。」


と、とうさんは例の扉を指さした。


「あの扉のプロトタイプが駅とトイレに設置した転移ゲートなんだけど、そもそもは私と凪ちゃんがそれぞれに世界線をまたいだのがきっかけで研究を始めたんだ。」


 な ん で す と ?!


「私が生まれたのは、凪ちゃんが生まれた所とはまた違う世界線でね。そちらではかなり文明というか、科学が発達していてそれが重んじられていたんだよ。」

「頭でっかちというか、知識が尊ばれる世界だったんだって。私の所とはえらく違うよね〜。」

「私がこちらに来た話はまた後日として、凪ちゃんも私も実体験としてこの宇宙、世界というのが多層構造なんだと知ってたわけだ。だから、その別の世界の存在とか、干渉する方法について調べようってなるのは自然なことだろう?」


 ぎぎぎ、と軋む音がなりそうな動きで隼瀬おじさんの方を振り向くと、一晩煮出した緑茶を飲んだようなしっぶーーーい顔で頷いている。


「俺だってはっきりと明言されたわけではなかったけどね、雪雄とは大学時代からの付き合いだから納得したよ。知識の内容がしっちゃかめっちゃかで偏り方がエグかったもんだ…。当時からこっちの常識を叩き込んできたはずなのに未だにこんなだからなぁ…俺の力不足を痛感するよ。」

「今よりもひどかったんだ…!」

「そりゃーもう。科学的な知識が偏差値100超えてるとしたら、一般常識は一桁だったもんな。義理の親父さんも苦労しただろうね…。」

「私の黒歴史の話は置いといて!蒲野くんも多世界解釈における世界線同士の干渉の可能性について研究してるんだよ。ただ、その理論構築の段階で躓いてるというか明後日の方向に暴走してるというか…。」

「雪雄さんがそれなりに成功しちゃってるもんだから、さらに躍起になってるのよね。」

「可能性の分岐から無限に増えていく世界ではあるんだけど、それなりに歴史蓋然性が近くないと別の世界線の存在の証明というか、観測は難しいというのを理論で証明したのが私の論文のひとつでね。おそらくその資料や研究結果が欲しかったんじゃないかな?」

「あの人の理論だと、逆に蓋然性の低さが観測を容易にするはずって言ってるんだよね?」

「そう。だから私の資料を使ったところで自説が間違っている証明にしかならないはずなんだよね…。何で私の資料が欲しかったんだろ?」


 とうさんが首を傾げているのを見て、かあさんがニヤリと「ワルいカオ」になった。


「ね、雪雄さん。学者さんなら理論で殴り合うのが一番わかり合えるんじゃない?」

「ね、唯。理論って殴り合えるもんなの?」

「僕もちょっと意味わかんない。」

「蒲野さんが欲しがってた資料、秘匿しなきゃいけないものなんて一部しかないんだし、見せられるものを持っていって解説してあげたら?」

「あー、そうだね!それにしても蒲野くん、私たちが旅行に出る前に言ってくれればちゃんと説明付きで見せてあげられたのに。」

「タイミング悪かったんでしょ。」


 かあさん、それわかってて言ってるよね。だってワル〜いカオでニヤニヤしてるもん。とうさん、色んな意味で世間知らずで学者バカだから気付いてないけど。


「雪雄さん、蒲野さんが大学にいるの確認したらアポ取って資料届けてあげよう?そしたら雪雄さんも気の済むまで議論に付き合ってあげられるじゃない。」

「それ良いね!前から彼の論拠とか気にしてるポイントが気になってたんだよねぇ…!よし、明日早速大学に連絡しよう!」


 とうさん、ワクワクが止まらない顔してるよ…そしてかあさんのワルい笑顔もね…。

 あーあ。蒲野氏、論戦でフルボッコ確定だわ〜………。

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