表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/111

45-5・ALIVE

「いやだっ!あたしも忘れたくないっ!

 尊人くんばっかり覚えてるなんてズルいっ!」


〈願いを叶えよう。さぁ、リアルワールドに帰るが良い。

 次に眼を開けた時、モーソーワールドの記憶はキミだけの物になっている〉


 喋る光が断言をした直後から、僕等全員の体が白い靄に包まれて、キラキラと輝く。脱落をした仲間達と同じ、異世界での仮の肉体が維持をできなくなったのだ。


「これでまた疎遠になっちゃうのは寂しいけど・・・仕方無いよね」


 ツカさん、楠木くん、北条くん、長野さん、上杉さん、平家さん、菅原さん、前田さん、我田さん、若林さん、和田さん、龍造寺先生、次々と半透明化をして消えていく。由井さんは元気良く手を振りながら、武藤さんは格好良く敬礼みたいなポーズをしながら、吉見くんは笑顔でサムズアップをしながら消えた。


「いやだっ!いやだっ!いやだっ!」


 肉体が消えた瞬間に記憶も消える。目の前で真田さんが消えることを拒んでいるんだけど、徐々に半透明になっていく。


「自分に自信が付いたらコクるからさ。

 もう一回、真田さんに好きになってもらえるように頑張るからさ。

 それで許してもらいたいな」


「尊人くんのバカァァッッ!!」


 真田さんが勢い良く飛び込んできた。真田さんの顔が僕の顔に近付く。そこで、真田さんの姿も消えた。


「・・・・・・・・・え?」


 もう真田さんの姿は無いんだけど、唇に真田さんの柔らかい感触があった様な気がする。


 僕の全身が光りに包まれ・・・

 眩い光の洪水が押し寄せて眼を開けてられなくなり・・・


〈キミの願いは叶えた

 ・・・が、ボクはキミに殴られたことを帳消しにするつもりは無い〉


 最後の最後で、喋る光の意味深な言葉が聞こえたような気がした。



 次に眼を開けた時には、僕は、外窓に巨大隕石が突っ込んだ教室の、廊下側の壁に凭れ掛かっていた。教室内に充満している青い靄は、もう無い。

 これで、モーソーワールドで起こったことは、僕の脳内だけに存在をする妄想になった。


「全部・・・終わったんだね」


 相変わらず、真田さんが僕の上に覆い被さっている。真田さんの温もりを感じる。あの世界では、真田さんと密着して体温を感じることが何度もあった。でも、あれは僕の妄想にしてしまった。

 ホントはしばらく抱き締めていたい。真田さんの唇に触れて、僅かに僕の唇に残った感触の正体を確かめたかった。

 でも、それではただの変態になってしまうので、捲れ上がってるスカートを元に戻してから真田さんの名を呼ぶ。


「真田さん・・・起きて」

「・・・んんっ」


 意識を取り戻した真田さんと目が合う。


「わぁぁっっっ!!尊人くんっっ!!!」


 真田さんが飛び起きて僕から離れる。三度ほどリターンを使って真田さんと一緒に現実世界に戻ったけど、真田さんからその記憶は消えて「今が初めて」になってるんだから、当然こうなるよね。


「なんで尊人くんと抱き合ってるの?」

「隕石が突っ込んできて、僕と真田さんは一緒に吹っ飛ばされたからね」

「隕石?そう言えばそうだったっ!

 わっ!わっ!なにこれっっ!!?」


 周りの状況に気付いた真田さんが言葉を失う。

 倒れているクラスメイト、半壊した教室、壁にメリ込んだ隕石。僕だけには見覚えのある光景だ。

 少し心配だったけど、真田さんには「この光景が初見」と伝わり、「記憶消去」が成立したことを確信して安堵をする。


「さて、どうしよう?」

「この状況でよく生きてたよな」

「こりゃひどいね。補習、どうなっちゃうんだろ?」

「補習どころじゃねーだろ」


 吉見くん、武藤さん、由井さん、ツカさん・・・生き残ったメンバーが意識を取り戻して立ち上がり、教室の惨状を眺める。

 隣のクラスでも声と音が聞こえた。多分、我田さん達が意識を取り戻したのだろう。


 瓦礫の隙間を通って、龍造寺先生が様子を見に来た。奇跡的に無傷で動ける生徒は、僕を含めて16人。龍造寺先生が中心になって、倒れているクラスメイト達の安否確認をしていたら、他の先生達が集まってきた。「崩壊した教室に生徒を残すのは危険」と判断され、僕等16人と、校内にいた「あの世界」とは無関係の生徒達は、グラウンドに追い出される。


 やがて、何台もの救急車が来て、「先生2人」と、櫻花おーちゃんや藤原くんを含めた「意識を喪失させたままの生徒32人」が病院に搬送された。


 僕だけは知っている。瀕死状態になっている2人の先生と31人の生徒は無事。何日後になるかは解らないけど、目を覚ます。決して目を覚まさないのは1人。穏やかな仮死状態の徳川智人だけが、眠ったまま起きない。


「ありゃ?源くん泣いてるの?

 奇跡的に、だーれも死んでないんだから、泣かなくてもイイぢゃん!」


 事情を知らない由井さんが寄って来て、泣いてる僕の顔を覗き込む。あの世界にいた時なら、ウジウジしている僕に声をかけるのは、真田さんか吉見くんだった。でも、疎遠になってしまった現状では、2人が寄って来ることは無い。



 言うまでも無く、春休み中の補習は全て中止になった。


 意識を喪失させた先生2人&生徒32人は幾つかの病院に分けられて入院をする。

 生還者の僕等17人も医者に連れて行かれて、念の為に検査を受けたけど、心身共に異常無し。その日のうちに帰宅をした。


 そして、この出来事は「48人の生徒と3人の先生が巻き込まれた事件」ではなく、「予測できなかった隕石が千幸せんこう高校の校舎に衝突して生徒1人が意識不明になった痛ましい事故」として処理をされる。

 尊人の願いは、一見すると無欲で皆のためなんだけど、モーソーワールドでの経験は自分だけの物、初恋への恩と罪悪感はチャラ、新しく好きな子ができたので猛進します・・・なので、実はそこそこのエゴを通している。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ