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45-3・モーソーワールドの秘密

「うわぁぁっっっっっっっ!!!!」


 怒りと悲しさと悔しさが混ざって、自分でも感情の置き所が解らないまま号泣をする。


「・・・尊人くん」


 真田さんが、黙ったまま抱き締めてくれた。何分くらい経過したか解らない。この結果に1㎜も納得はできていないけど、「この温もりを実感できるだけでも、戦い抜いた価値はある」と感じて、少し気持ちが落ち着いた。



〈キミの行動、シッカリと見守らせてもらったよ〉


 聞き覚えのある声がする。振り返ったら、僕等をあの世界に転移させた“喋る光”が浮かんでいた。

 涙を拭って、喋る光を睨み付ける。


智人トモを返してください」

〈それはできない。カレは自分の意思で『残る』を選んだんだからね〉

「僕はトモだけが特別なんて聞いていません」

〈これは、発起人に選ばれた者とボクの間で決められたルール。

 キミ達には関係が無い〉

「トモが・・・発起人?」


 喋る光の説明が続く。

 富醒(特殊能力)の突出、意思の尊重、世界観が甘やかす等々、発起人は他の追随者と比較して、あらゆる点で優遇をされる。それでは差がありすぎるので、追随者の代表者には「願いが叶う」という非現実的、且つ、破格の褒美が用意をされている。


〈選ばれた者は、突出した富醒に慢心をするか・・・

 目の前に自身が力を発揮した結果があるのに自覚できないほど無能か・・・

 そのどちらかに分かれるが、短絡的に力を行使をすることに変わりは無い。

 現実世界での環境に不満を持ち、発起人となった者は、

 力を渇望するが力を持つことの怖さを考慮できない。

 キミ達の世界では、小物、愚か者、理解力が乏しいと表現するのだろう?〉

「トモは違います。トモを悪く言わないでください」


 確かに、智人トモは色々と間違えて酷いことをした。でも、きっと、トモはトモなりに、あの世界の争いに心を痛めて、自分が手を汚すことで争いを無くそうとしたんだ。そう思いたい。


〈キミがどう思うかはキミ次第。ボクの考えを強要する気は無い。

 だが、結果は結果。それは不満でもあり面白くもある」


 喋る光の説明を聞きながら、ブラークさんや上府さんのことを思い出す。


「トモや僕達だけじゃなくて・・・

 今まで何人もの人を、あの世界に巻き込んだんですか?」


 多数決を成立させて現実世界に帰還をした幾つかのグループが存在する。それは何となく理解している。


〈数年単位で、新なシステムを導入するたびに・・・な〉


 あの世界に取り残された現実世界の人はたくさんいる。発起人の大半が、力を持った途端に人格が変わり、暴走の果てに討たれた。


〈人格が変わったのではなく、現実の中で抑えられていた本来の危険な人格が

 解放されたのかもしれんがな〉


 ブラークさんは転移直後に北都市ノス公に救済されて恩を感じ、暴走した発起人を討った為に、不本意ながら「北の勇者」の称号を得た。上府さんは僕達みたいな後輩が路頭に迷わないように支援をしている。転移者で知名度を得ているのは、この2人だけ。

 追随者達の大半は、特別な力を持ってしまったことを恐れ、正体を隠して、あの世界の住人として静かに生きている。数割程度の「力を試したい者」は、「底辺の頂点」ではなく「可能性」を求めて未踏の外地に旅立った。


「何の為に?貴方にとっては、ただのゲームですか?」

〈キミ達をモルモットにしたことは謝罪しよう。

 人類を次の次元に上げる実験・・・とだけ言っておく。

 まだまだ、実装には程遠いがね〉

「教室の隕石は貴方が?」

〈数十人を纏めて仮死にするには、何らかの事故が必要だからね。

 地球に衝突するはずの無い隕石の軌道をボクが変えた〉


 へぇ~、なんか良く解らないけど、超科学を持つ高次元生命が、僕等の未来のために実験をしていたんだ。なら仕方無いね。

 ・・・なんて、何一つ納得できるわけがない。治まっていた怒りが、再び滾ってきた。


〈さぁ、ミナモトミコト。君が代表者だ。

 願いを提示したまえ。

 リアルワールドの常識の範囲内の願いならば、何でも叶えよう。

 知能、運動神経、金、容姿、権力、君は何を欲する?〉

智人トモを返せ。それが僕の願いです」

〈トクガワトモヒトは既にモーソーワールドの住人だ。

 異世界の者を現実世界に呼ぶことは、リアルワールドの常識を逸脱する〉


 智人トモの喪失をリセットすることはできない。納得していないけど、諦めるしかないらしい。


「だったら・・・貴方を撲殺させてください」

〈・・・なに?〉


 僕はもの凄く怒っている。でも、自分でも驚くほど冷静だった。


「貴方を殴り殺すことが僕の願いって言ってるんです」


 やるせなさの全てを、僕達を巻き込んだ「アレ」にぶつけたい。非力な僕が何発殴れば、「何なのかよく解らない生物」を殺せるのか解らない。何百発、何千発も殴ることになりそうだ。


「貴方が死ぬだけです。

 貴方が神様の類いだったとしても、不可能な願いではありませんよね?

 仲間達がドンドンと死んでいく世界に送り込んだクセして、

 『自分だけは死にたくない』なんて卑怯なことは言いませんよね?

 僕が殴れる形で・・・ちゃんと死ぬ生命として、僕の前に出てきてください」


〈・・・し、承知・・・した〉


 何者なのか解らないけど、僕達よりもスゴい生命体ってことくらいは解る。そんな凄いヤツのクセして、撲殺はイヤみたいで、マゴマゴと戸惑い、ようやく“光る人型”に変化をした。


「偽物の体で、死んだふりして誤魔化すとか、あとで生き返るのはダメですよ。

 貴方が叶えられる範囲で、どんな願いでも叶えてくれるんだから、

 貴方が死ぬ願いを、ちゃんと叶えてください」

〈・・・・・・・・・・・・・・・〉


 光る人型の腕を掴み、拳を振り上げて力を込める。


「うわぁっっっっ!これは智人トモの分っっ!!」


 コイツさえいなければ、平穏な日常は何も変わらずに済んだ。先ずは、コイツのせいで日常を放棄した智人トモを思い浮かべながら、怒りをぶつける。光る人型が弾き飛ばされて尻餅を付いた。もちろん、一発で終わらせるつもりは無い。


「次っ!藤原くんの分!!」


 腕を掴んで無理矢理に立たせて、藤原くんを思い浮かべながら2発目を叩き込む。


「次っ!真田さんの分っ!」


 先ずは巻き込まれた50人分の怒りをぶつける。50発じゃ死なないだろうから、その時は、また智人トモから2巡目をする。途中でワケが解らなくなって、名前が被っちゃうかもしれないけど、どうでも良い。


 

 尊人は、智人の考え方を何一つ変えることが出来なかった。大人でもできないんだから、たかが1人の少年が、他人の価値観や人生を左右するなんて不可能。主人公の存在感に影響されて簡単に考え方を変えるなんて、現実を知らなすぎる、もしくは、人間と比べて知能が大幅に低い生物が住む世界。小学生でも、もっとマシな自我がある。

 最後の最後で「現実は甘くない」と尊人に教えて一歩大人にするのが智人になる。


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