06.人探し
明くる日は休暇だったが、朝から真門と戦闘訓練を行った。昨夜、お互い腹の内を見せたからだろうか。思いの外良い手合わせとなった。真門は「それで良い」と満足げな顔を浮かべた。幸は初めて術が身体に馴染んでいくような感覚があり、心身が軽かった。
心術一体とはまさにこのことだろうか。
心地よささえも感じた。
「おー、やってるやってる」
と冷やかしにきたのは旅神であった。
その後ろには南雲も居た。
「掲示をみたか?正式にお達しがあった。俺たち同じ班だぜ。よろしくな」旅神はひらりと手を振った。南雲は腕を組み、こちらを伺っている様子だった。いや、正確には、真門を見ていた。その視線に気づいたのか、真門が肩を竦めた。「君、私が怖いのか?」いつもの高圧的な調子で真門が声をかけた。南雲は少し驚いた様子だったが、暫くして、言い方が気に障ったのか、舌打ちして黙ってしまった。「いやだなー。剛ってば、仲良くしようぜ。背中を預け合う仲間なんだからさ。真門、俺は旅神党等、こいつは南雲剛よろしく」「知っている。君たちの組み手見事だったよ。性格も剛柔で相性が良さそうだ。そちらの地の術師は私のことが嫌いみたいだけどな」「真門も真門だぞ。班員なんだからその上官のような態度はよせ」幸は真門を制止した。「軍は実力主義の世界だ。いずれ私が上官になるやもしれん」「あのなぁ…」幸は頭が痛くなってきた。こんな調子じゃ、班対抗戦が思いやられる。
研究所の後期試験は班対抗で行われる。
所属する班の活躍で今後の軍人人生を左右することもあるのだ。研究生としての研究所の在籍年数は3年。修了すると、研究生は国家術師となり、軍の最前線、研究所の研究員、各国への隠密など散り散りになっていく。3年で術を極め、自分の適正を見定めなければならない。国家術師が修めるべく術のレベルは高く、脱落するものも少なくない。合格した暁には、日の帝国最高の栄誉である、国家術師としての資格と職務が与えられることになる。
幸が国家術師を目指した理由は2つある。
1つはこの忌々しい力をコントロールするため。2つ目は、最大の理由、人探しである。探しているのは、父と若葉姉である。幸の父は国家術師だった。幸が幼いころに先の大戦で行方不明となり、遺体はまだ見つかっていない。どこかに居るかもしれない、という思いがまだどこかにあった。若葉姉だが、実は1年ほど前に、里から出たきり帰ってこないのだ。しかし、姉の字で帝都消印の差し出し人不明の便りが何度かあることから、近くにいることは間違いなかった。手紙の結びにはいつも、元気だから探さなくて良いという旨といつか帰ると著されている。帝都には親戚筋の人間もおらず、どこにいるのか皆目見当がつかない。軍部であれば、角界に情報網があるだろうし、見つかるのではないかと思ったのだ。姉は一体何のために帝都にいるのか。幸はなるべく早く、国家術師として実力をつけ、家族を見つけたかった。こんなところで足踏みはしていられない。
幸の今後の目標は対人訓練の強化と、班員の確執を取り除くことに決めた。




