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術師の掟  作者: 桐 箪笥
術師の掟
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04.火種

防術ケープに青白い火の粉が纏わり付く。

夕食の後、真門と戦闘訓練を行うことになった。術を喰らうとケープにカウントが刻まれる仕様になっているのだが、真門のケープは一向にカウントされない。一方で幸のケープのカウンターは目まぐるしい。


「辞めだ」間合いをとると、真門はため息をついて、ケープを脱いだ。「君、私が怖いのか?」「そんなこと…」「じゃあ、なぜ逃げ回っているんだ。君も噂をきいてるんだろう?なんてやつと組手になっちまったんだろうな。怖くて訓練もまともにできない」「違う!」幸の声が円形格闘場一杯に響いた。「僕が対人訓練ができないのは、僕自身の問題だ。君のことは関係ない。…それに、僕はあんな噂信じちゃいないさ」「なにを根拠に?」「それは、同室の勘だよ。…人殺しは季節を重んじたり、調度品にこだわったりしないと思う。それにいつだか言ってただろう。術に喰われたら心の臓を凍て尽くせと。そんなこと言うやつが、人を殺めるとは思えない」真門が破顔し、声をかけてあげて笑った。「なっ、何が可笑しいんだ」真門の意外な反応に幸は動揺した。「私が調度品に拘るのは文化芸術は術の安定に有効だとされているからだ。初代研究所長、燈台保も論文に著しているし、実際に彼も骨董道楽をやるそうだよ」真門は空を見つめた。


「私の母は術に喰われたんだ。優秀な火の術師で女子初の国家術師世代の1人だった。私が9つの時だったかな。父が他所の女のところに通うようになった。それから母は変わっていった。身体は痩せ細り、目は落ち窪んで、術が安定しなくなった。そして、彼女は国家術師の資格を剥奪された。ある晩、彼女の部屋を覗くと、彼女は内側からちろちろと燃えていた。次第に火の気は回り始めて、彼女に襲い掛かっていった。のたうちまわる母をみて、私は気が動転した。母を助けようと思った。だけど、母は目の前で己が火で焼き尽くされていった。母の断末魔を聴きながら私はどうすることもできず、立ち尽くしていた。次第に私の中で膨張した気が術と結びついてしまった。あたりは火の海になり、飲み込んでいった。幸い私は御抱えの水の術師に助けられ、なんとか生き延びたが、母は助からなかった」真門は肩を竦めた。「これが噂の真相さ。まぁ、私が殺したといっても過言ではないな」


真門は淡々と語ったが、幸は内心震える思いだった。1人の女を飲み込んでいった火。

火種は自責か嫉妬か愛ゆえの憎悪なのか。

想像だにしない女の気持ちに心を寄せた。

幸は当時9つの少年が立ち尽くしていた時のような気持ちでここに立っているような気がした。


「私は腹を割って話したぞ。これから付き合いが長いんだ。こんどはお前の番だ」

真門は幸を見据えた。

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