03.班員
幸は食堂で旅神と八雲に居合わせた。
「お前、今日の訓練見てたぞ。相変わらずの実力差だったな」旅神が明け透けに話しかけてくる。
「そんなのわかってるさ」幸はため息をついた。
「しかし、泰山。入所試験は結果を残したそうじゃないか?」
八雲が不思議そうに箸を向けてきた。全くどこから情報が漏れたのか。非対人試験の結果だけずば抜けた泰山という氷の術師がいるという噂が広まっていた。「対人になるとダメなんだよ」
「そりゃ、軍志望には致命的だ。国家術師を目指してるんじゃないのか?対人がダメってなにかあったのかよ?」旅神はズケズケと聞いてくる。悪い奴じゃなさそうだが、会ったばかりのやつに、理由は言いたくなかった。「まぁいろいろだよ」
「えーなんだよ!色々ってー!」
賑やかしかしていると、食器を片付けようとする真門が通った。
「おい、泰山。食事の後、また手合わせだ。このままだと私達は中間試験に通る気がしない」
真門は更に背を向けながら、穏やかに夏季休暇を迎えさせてくれよと吐き捨てた。
「お前真門の足引っ張るなよなー。あいつは新研究生のルーキーなんだからな。国家術師になりゃ、将来的にはあいつが上官になるかもしれねぇ。せいぜい嫌われないようにしなきゃな。それに知ってるか?あいつの噂?」
幸も知らない訳ではなかった。
「母親殺しの真門」と囁かれていることを。
一緒に暮らし始めて2ヶ月と少し。彼には風流な所があるし、激情に身を任せるタイプには見えない。禍々しい噂とはかけ離れた人物であると思っている。
「旅神、少々口が過ぎるぞ。女学校じゃあるまいし。そんなに人の噂が好物か?さっきから不愉快だ」
中性的で比較的柔和な雰囲気の幸だが、精一杯睨みをきかせた。「なになにー?ムキになっちゃってさー?もしかして君たち、薔薇の仲なのかしら?」
幸は旅神の女学生なみの妄想力に、驚きと恥辱を隠し得なかった。
「っお前!」「まぁまぁ、泰山。こいつ、術のごとくひと所にはいられねぇ、落ち着きのない、失礼なやつなんだ。ここはひとつ、組手の俺から謝らせてくれ。すまん」八雲がその場を諫めたので、幸は堪えた。「八雲、その風来坊の手綱を持っておけよ。今日教授に言われたんだ。もしかするとお前達と同じ班になるかもしれないって」




