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術師の掟  作者: 桐 箪笥
術師の掟
2/12

02.噂

戦闘訓練は同室の組手と2人1組で行われる。

「なぜ手加減をする?」

いつもの如く真門が苛立ちの表情を浮かべる。

「知っているぞ私は。入所試験の時に、湖一面に分厚い氷を張ったそうじゃないか。だから私の組手に配置されたんだろう」

真門は研究生一の実力の持ち主であった。組手はおよそ同等の実力で反する術を持ったものが選ばれる。幸は入所してからというもの、なぜ自分が真門の組手になったのか不思議だった。というのも、幸は、対人場面となると途端に術の発出レベルが落ちるからである。


「人相手だとできないんだ」

「ならば、私を傀儡だと思え」


そう言い放った真門から青白い火の粉が飛んでくる。幸の防術ケープをかすっただけでチリチリと音をたてた。高温の青白い火の粉は威力もスピードも兼ね備えており、まともに当たれば、防術ケープを貫いてしまいそうだった。幸は氷の粒で対抗するが、火の粉の勢いは落ちない。「そんな霰のようなもの痛くも痒くもない。是式の術で私の組手が務まると思うな」真門が挑発しても、幸の劣勢は変わらない。


「なんであんなへなちょこが真門の組手なんだろう。俺の方が強いと思うけど」

風の術師の旅神(たがみ)党等(とうと)は不服そうな顔を浮かべる。

「旅神の術は真門を焚きつけるだろうが、組手にはなれないだろうな」

旅神の組手である地の術師の南雲剛(ごう)が嗜める。

「えー戦闘力が増すんだったらその方がいいんじゃないの?」

「術に喰われた時どうするんだ?」

「真門ほどの術師がそんなことあるの?」

「ああいうタイプが1番やばいんだよ。風雅なお坊ちゃん面してるけど、腹の中はなに考えてるかわかんねぇ。知ってるだろう?あの噂」

南雲が眉を潜めながら言った。

「噂ってガキの頃、家を焼き尽くしちまったっていう?」

「そうだ。どうやらその時アイツの母親も一緒に…」「えー。おっかねぇ。南雲、俺たちあいつらと班になる可能性もあるから気をつけねぇとな」


班は組手同士の、四人一組である。班はそれぞれ属性の異なる術師で構成される。そのため、旅神と南雲は真門たちと同じ班になる可能性があるのだ。

新研究生たちの間ではこんな噂が流れていた。

「母親殺しの真門士郎」そのため、真門は他の研究生から牽制されていた。

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