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6項



やがて夢を叶えた青年は騎士になりました。

強くなって、共に戦う仲間もできました。


…やっと、会える。


騎士はお姫様に会うために王都へ向かったのです

__________



「ゼフ、お前の正式な騎士入隊申請が通った。」

「……ん?」

「つまり今日からお前は騎士になったんだ。」


御伽話の騎士のように王に剣を捧げる儀式、なんかがあるわけもなく。

所長からまだ半分も理解できない小難しい単語がたくさんの書面を受け取った。

これで、俺は騎士になった、らしい。


…何も実感が湧かない。


「早速だが、今度の王都で行われる建国祭の警備にウチからも応援を出すように…」

「王都!?」

「うおっ!?なんだよ急に…」

「王都にいけるのか!?」

「あ、あぁ、お前を含む数人派遣する。」



『…もう一回会える?』

『………無理だろう。

もう帰ってこられないかもしれない』

『どうしたら会える?』

『王都に行けばあるいは、でもお前みたいな農民が行くのは…』

『そっか!』

 


あの日の会話を今でも鮮明に思い出せる。

ここまで本当に長かったと思う。

王都は広いらしいから会えるかどうかなんてわからない。

でも、やっと見えたお姫様の背中に、もう少しで手を伸ばせるかもしれない。

そこで初めて俺は騎士になった実感を得た。


「…って聞いてるのか?」

「ハッ…すみません…」

「いい、いい。

やっと実感が湧いたとかそんなとこだろ。

で、話の続きだが、派遣するメンバーは基本ツーマンセルで組む。」

「ツーマンセル…」


けれど喜びは一瞬だった。

所長の言葉に体がズーンと重くなる。

身分制度が色濃いこの国で、農民の子が学校も出ず、騎士になった。

そんな俺への風当たりはかなり強い自覚がある。


俺は、特別強くない。

戦績だって7:3程度。

勇者のように無双できるわけでもない。

ただ必死に、

吐いて、這いつくばって、なんとかしがみついてきただけ。

そんな俺と組んでくれる奴がいる自信はなかった。


「そう落ち込むなよ、友達いないからって。」

「うぐ…」

「冗談はこれくらいにして、実際お前と組む奴は俺の方で選考した。

カイ・アレスター、名前くらいは知ってるか?」


カイ・アレスター…

直接話したことはないが食堂でたまに見かけることがある。

誰とでもフレンドリーでよく話題の中心にいるイメージがあった。


「つーわけでよろしくゼフちゃん」


所長の椅子の陰からひょこっと出てきた影。

…いったい、いつからそこにいたんだ?


「ゼフはまぁ…

悪い奴じゃないんだが、世間知らずのお上りさんだからうまく面倒見てやってくれ。

頼んだぞアレスター。」

「ウィーッス」


軽い返事。

今まで差別的に見られてきたがカイの目にその色はない。

それが不思議だった。

だって正直、カイに俺と組むメリットなんてない。

完全に貧乏くじだというのになぜ彼は少し嬉しそうなのだろうか?


「…婆ちゃんがさ、お前によろしくって」

「婆ちゃん?」

「そ。重い荷物持ってくれたとか本返してくれたとか、色々聞いてる。」

「え…え!?あの人の孫!?」

「確かにお前は農民だけどさ、生まれなんて選びようがないだろ。

俺はお前がいい奴だから組むことにした。

それだけだよ。

改めてよろしくなゼフ」


そう言って笑うカイにはどことなく婆ちゃんの面影があった。


__________


カイは任務で巡回する片手間に様々なことを教えてくれた。

身分制度に始まり、平民や騎士がどんな生活をしているかの基準。

どんなものを食べ、どんなものを身につけ、タブーなことや、マナー。

何も知らない俺に根気よく教えてくれた。


農民なら許される価値観も、平民以上になると醜聞になることが多い、らしい。


「…そんなこと、気にするのか?」

「レストランで落ちたものは食べない。たとえ3秒以内であったとしてもだ。」

「…ちょっとくらい汚れたって別に腹なんて壊さないだろ?

それに…勿体無い…」

「ダメなもんは、ダメだ。

ったく、お前は幼児かよ…。

お上りさんどころの騒ぎじゃねぇぞこれ」

「…ごめん」

「あーわかったから!

そんな捨てられた犬みたいな顔するな!

いいか?

レストランはみんなが食事をするところ。

自分のものが汚れていて平気でも、他人の目には汚れた物を食べるお前が写る。

同じ物を食べる自分の物が汚れているように考える人もいる…」

「?汚れてないだろ?落としてないなら。」

「食欲失せるって言ってんだよ馬鹿野郎!」


そんな感じで細かく言ったらキリがないほど俺は礼儀を知らないらしかった。

カイには感謝してもしきれないほどに助けられたと思う。


「で、次は服だ。お前何着持ってる?」

「?1着あればいいだろ?」

「農民がクセェ言われる所以だ馬鹿野郎!

普通は3日も着たら着替えるんだよ!

お前も…」くどくどくどくど


小さな声が聞こえた


「……みつけた」

「聞いてるのかって…どこ行くんだよ!?」


小さく蹲る影の前にしゃがみ込んだ。


「…坊主、迷子か?」

「っひっく…母さんいなくなっちゃったんだ」

「そうか、よし、一緒に探そう。

この辺詳しくないから案内してくれ。

知ってる場所はあるか?」

「………あそこの菓子屋は美味しい。」

「そうか、今度買ってみよう。

…他には?」


カイには申し訳ないが泣いている子供が見えて反射で体が動いていた。

肩車して振り返ると呆れたように肩をすくめたカイの姿が目に入る。

ヤバい。説教の途中だった。

いや、聞いてなかったわけじゃない。


「はぁ…そういう奴だよなお前は。」

「……ごめん」

「…ほら母ちゃん探すんだろ」

「やったな坊主。

カイが手伝ってくれたら百人力だぞ。」

「兄ちゃんは?」

「俺?俺はあまり役に立たないかもしれない

ただ、デカいから遠くまで見える」

「ハハッなんだそれ」


坊主とカイに街を案内されていると彼の母は割とすぐに見つけることができた。

力強く抱きしめる姿に田舎の母を思い出す。


…元気に、してるだろうか。

病気をしたりしていないだろうか。


俺が文字を書けるようになっても農民の識字率は高くないからお袋はきっと読めないだろう。

訓練が辛かったこと、騎士になったこと、文字を覚えたこと、友人ができたこと。

伝えたいけど、伝える術がない。

それが少しだけ寂しいと思った。


「見つかってよかったな」

「…あぁ。」

「さて…」

「ん?」

「説教の続きだ馬鹿野郎!!」

「うげっ」

「王都に行くまでみっちり行くからな!」

「お手柔らかに…」

「嫌だね!

俺はお前と組んで王都の任務に行きたいんだ!

常識知らずで外されるなんてことになったら俺が困るんだよ!」



  お姫様へ

  いつか渡したいと思って

  初めて手紙を書きます。

  元気に過ごしてますか?

  俺は色々と大変だけど、元気にやってます。

  支えてくれる仲間もできました。

  それを今度君に話したいと思う。

  俺のこれまでの冒険譚と一緒に。

  あとちょっとできっと会いに行きます。


                  ゼフより』








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