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数分間しか、いれません!  作者: うちの生活。


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70 人は何故、走るのか

 ようやく自転車の件が一段落したので、魔物の洞窟に行く日程を決めた。その場でも一悶着があったけど。



「余も行こうと考えているのだが」


 王様がこんな事を言い出したからだ。もちろん、すぐに騎士団長のボブカットさんから却下されたけど、


「この国の民ではないユウジ達が行くのに、この国の王たる余が行かないなど道理が通らぬであろう?」


 なんて、それっぽいことを言い出した。


「⋯王の仰っていることはわかります」

「であろう?ならば⋯」

「わかりますが!先ほど申し上げた通り、それは承諾できません!」

「⋯むぅ、余の言葉を遮りおって」


 王様が不機嫌そうな声をだすも、ボブカットさんは怯むことなく話し続ける。


「万が一、何かあっては困ります。行きたいと思うなら、ご結婚なさってお世継ぎを⋯」

「宰相みたいな事を言いおって⋯」

「なにか?」

「⋯⋯よい。大人しくしておる。その代わり、成果を期待しておるぞ?」

「はっ!!お任せを!!」



 とりあえず、王様がついてこなくて良かった。⋯⋯いないよね?!


「ユウジ?どうした?」


 周りを確認していたら、テクノさんが不思議そうに声をかけてきた。


「王様、きてませんよね?」

「いないはずだが?」

「ならいいんです」


 そう。それならいいんです。サシャさんあたりと結託してやらかしてないならいいんです。


「それにしても、今回は人数多いですね」

「いくからには、ある程度の成果が欲しいしな」


 いつものメンバーから自分、近藤さん、サシャさん、ミラさん、ダヌさんの五人。騎士団からボブカットさん、テクノさんを含めた十人。総勢十五人で魔物の洞窟にいく。


「まぁ、前回危なかったですしね⋯」

「そうだな」


 前回は都合よく小さいゴリラが現れたけど、それに期待するわけにはいかない。そう考えるともっと人数がいてもいいかもしれない。


「佐藤さん、早く入らないと時間が⋯」

「あ、確かに」


 位階はあがっているものの、まだ五分の近藤さんはちんたらしてると洞窟に入る前にあっちに戻ってしまう。


「時間が惜しいので、先に入ります!」

「あ⋯」


 騎士団長が何か言いたげだったけど気にせずに突入する。自分達が先に入るとか、もしくは入る前に何かしたかったのかもしれない。


「暗っ⋯」


 洞窟の中は、伸ばした手の先が見えないくらい真っ暗で思わず立ち止まった。


「何にも見えない⋯」

「ユウジさん?!どこにいますか?!」


 カチッ。


 とても小さい機械音が聞こえた瞬間、近藤さんの頭の上が光った。


「よし、買っておいて良かったー」


 かぶっていたヘルメットについていたライトをつけたようだ。少し眩しいけどとても助かる。


「おぉ?!少し明るくなりましたねぇ!!」

「お、じゃあ火をつけなくてもいいか?」

「いえ、ダヌさん。火はつけてほしいです。さすがにこれだけでは心もとないです」

「そうか?⋯じゃあ」


『炎』


 ダヌさんは持っていた松明に火をつけた。後ろからきた騎士団も松明に火をつけている。自分達の周辺のみ明るくなった。


「ここからは騎士団が先を進んでいいか?」

「あ、はい。お願いします。入ってしまえば時間関係なくなるんで」

「よし、ではテクノ。先に行け」

「はっ!」


 松明をもったテクノさん達、騎士団が進んでいく。その後ろを自分達がついていく。ライトをつけた近藤さんを騎士団のすぐ後ろにつけ、松明をもったダヌさんを最後尾にする。かろうじて全体が見えるような配置だ。


 そのまましばらく進んでいくが、魔物は一向に出てこない。


「ここ、普通の洞窟ではないんですよね?」


 あまりにも魔物が出てこないから浮かんだ疑問にボブカットさんが答えてくれた。


「あぁ、そのはずなんだがな⋯」


 ボブカットさんの反応からして、ここまで出てこないのはおかしいんだろう。


「⋯そもそも、この洞窟はいつもこれくらい暗いんですか?」

「いや⋯いつもはもう少し明るいし、少し歩けば森のようなところに出るんだが⋯」

「今回は違う、と」

「あぁ⋯」

「じゃあ、何が起きるかわかんないですね⋯」

「そうだな⋯」


 そのまま進むこと、十数分後。先頭を行くテクノさんが何かを見つけたようだ。


「団長!少し先に明かりが見えます!」

「よし、今まで以上に警戒して進め」

「はっ!」


 その明かりのあたりがどうなっているのか気になってたら、サシャさんも同じだったようで。


「ユウジさん、どんなとこだと思います?」

「⋯⋯⋯砂漠とか?」

「え?なんでですか?!」

「いや、まだ砂漠はでてないよなって」

「あー、確かに⋯。でも、歩きづらそうだから嫌です」

「⋯まぁ、そうだね」


 嫌ですって言ったところで、こっちの希望なんか通らないだろうけどね。


「抜けますっ!⋯⋯⋯あれは⋯?」


 先をいくテクノさんが何か見つけたようだけど、声のトーンからして魔物ではなさそうだ。騎士団に続いて出てみると。


 雲一つない青空で、足元には緑いっぱいの平原が広がっていた。少し先に高い壁が見える。城壁だろうか。


「ユウジ、地図を見れるか?」

「え?あ、はい。ちょっと待ってください」


 スマホのマップアプリを起動する。少し時間がかかったけど、このあたりの地図が表示された。上下左右に動かしたり拡大してみる。


「ええと⋯あの壁よりこっち側には何もなさそうです。ただ、あっち側には町みたいに建物がたくさんありそうです」

「そうか。それではひとまず、あちらに向かって進むという事でいいか⋯」

「そうですね。何かはあるみたいです」


 今までには見たことがない、びっくりマークが四つ並んだようなのが壁の向こうの建物に表示されているのを見つけた。普通の地図なら長押ししてみれば店の名前とか表示されるけど、それは表示されないから何なのかわからない。


「じゃあ、引続きテクノ達を先頭に⋯」


 ボブカットさんが言いかけたら、聞いた事のある叫び声が響いた。


「ヒャアッッハァ!ーー!!!あっちですね?!とっとと行きますよーー!!!ヒアウィーゴーッ!!!」

「あ、サシャ?!ちょっと待ってよー!!」


 聖女二人は、止める間もなく勢いよく走っていってしまった。


「え?あ、ちょっと⋯」


 今までに何度もあったけど、回復役の聖女がどうして先陣を切るのか⋯。と、疑問に思ったところで「そういう人達だから」という答えしか出てこない。とりあえず追いかけないと。


「もう!近藤さん!ダヌさん!二人を追いかけるよ!!」


 そう言って走り出すと近藤さんとダヌさん、それに騎士団の皆さんが慌てて走り出した。


 洞窟に入る時といい、今といい、和を乱すようなことして、なんかすみません⋯。


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