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数分間しか、いれません!  作者: うちの生活。


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68 ヘアサロン・王城

 王都に着いて数日後、王様に謁見する日。打ち合わせていた時間が近づく。


「この服装でいいのかな?スーツにすればよかったかな?」

「あー⋯王様だしね」

「ま、いまさらか」

「⋯確かに」


 いつもの公園で、いつもの格好で、いつものように、ぽちっとな。


 ピンポン。


「お⋯」


 ここ数日見ていた宿の部屋や王都の街でもない、見覚えのない空間が広がっていた。周りから声が聞こえてくる。


 ⋯ざわ⋯ざわ⋯⋯

 ⋯⋯どこ⋯?!⋯

 あれ⋯⋯が⋯⋯


 足元にはレッドカーペット。その先に視線をやると、数人がひざまずいているのが見えた。おそらくサシャさん達だろう。


「ユウジ」

「テクノさん。時間通りでしたよね⋯?」

「あぁ、問題ない。こっちだ」


 サシャさん達のもとへ先導してもらう。自分達もひざまずくべきかと、しゃがもうとしたところで声をかけられた。


「よい。滞在時間に限りがあると聞いておる。ひざまずく必要はない」


「⋯え?え?」


 一瞬、それは正直助かるなと思った。でも、聞こえてきた声に違和感を感じ、その声の主を見て困惑してしまった。近藤さんも似たような反応だ。ひざまずいているサシャさんもビクっと反応した。


「あちらにいらっしゃるのが王だ」


 テクノさんの説明がトドメとなった。


 日本の昔の貴族のような和装で、頭には烏帽子をのせてる、だけど日本人とは違った顔立ちの綺麗な金髪のおじさんがそこにいた。何か雅な音楽が流れてきそうで流れてこない残念さを感じる。


「余がパラデリア国王、ゴシラカワ・パラデリアである」


 ⋯もう、この場所、この状況でなかったら叫んでいたかもしれない。いや、むしろ叫ばせてほしい。見た目、名前ももちろん気になるけど、聞こえてきた声がそれに拍車をかけた。だって、男性の声じゃなくて、女性の声なんだもの。


「え?え?えぇ?!」


 近藤さんも完全に困惑している。それには激しく同意する。同意するのだが、数々の企業を訪問してきた社会人として、やることはやらなければならない。


「⋯失礼しました。私はユウジ・サトウです」

「タ、タクミ・コンドウです」


 よし!なんとか名乗る事はできたぞ!ほんと最低限だけど⋯。


「⋯⋯⋯ほぅ」


 名乗りに対して、王様が目を細めたように見えた。


「そなたたちは異世界人と聞いておる。信じがたい事であったが⋯⋯先ほどのように突然現れるというのは見たことも聞いたこともない。そして、この国の人間とは違ういでたち。おっとタクミが消えてしまったぞ?⋯ますます信憑性も増すってことよのぅ」

「⋯私の能力で移動した人間は、位階に応じて滞在時間が変わります。彼はまだ五分しかいられないのです」


 とっとと消えてった近藤さんを心底羨ましく思った。


「ほう。お主はどれくらい滞在できるのだ?」

「私は二十五分でございます」

「そうかそうか。あまりゆっくりもしておれんな。おい、ボブカット」

「はっ」


 テクノさんと同じような格好をしているが、彼より強そうだ。ここでわざわざ彼を呼ぶということは⋯。


「紹介しておこう。騎士団長のボブカットだ」


 でしょうね。どれくらい強いんだろ。⋯⋯ん?ボブカット??なんかひっかかるような⋯。


「ボブカット・シャギーだ。⋯⋯⋯王よ」

「⋯⋯なんだ?」

「⋯そろそろ、それをやめませんか?」


 それ??なんのことだ??⋯⋯え、シャギー?


「む?これか?気に入っておるのだが⋯」

「今、それをやる必要はないと思いますが⋯」


 王様を見るボブカットさんの目が険しい。


「わかったわかった。やめるからそのような目で余を見るでない」


『ボイスチェンジャー』


「どうだ?元に戻ったであろう?」

「⋯お戯れもほどほどになさって下さい」


「え?え?」


 先ほどまで聞こえていた女性の声が、男性の声に変わった。それを聞いたからか、サシャさんがぷるぷるしている。


 会話の中身からして、声の主は変わっていないようだし、ボイスチェンジャーって言ってたのは能力か?!本当は見た目通りのおじさんの声って事だよな?!


「察しておるやもしれんが、能力で声を変えておった」


 なんでかドヤ顔をしているように見える。既視感を感じるのは気のせいだろうか。


「え、あぁ。そうでしたか⋯」

「なんだ?驚かせてしまったか?まぁ、そのつもりだったがのぅ」

「⋯ええと、ついでに聞いておきたいのですが、よろしいですか?」

「よいぞ。なんだ?」

「その⋯他の皆と格好が違うように見えるのは⋯⋯王様だから、という事でしょうか?」

「ん?これか?そうだぞ」


 そっか、そうなんだー。さっきと違ってドヤってないから本当にそうなんだろうなぁ。⋯どうなってんだろう。


「王として、唯一無二ということだ」

「⋯そっすか⋯」


 見た目、名前、能力。


 ちょっと意味がわかんない。神様のせいってことでいいかな。追求すんのもめんどいし。


「余からも聞きたいが、よいかな?」

「はい」

「⋯魔物の洞窟を攻略したというのは間違いないか?」

「その事であれば、テクノさんに話した通りです。その上でなくなったのであれば、そうだと思います」


 ⋯なんと?!⋯⋯

 ⋯⋯まこと⋯!⋯

 そんな⋯⋯が⋯⋯


「⋯⋯ふむ。であるか。なれば、試しにこの王都近くの洞窟を攻略してもらえないだろうか?」

「⋯⋯えーと、最近は逃げ帰ってきたような事もありますので、騎士団の方にも協力いただけるのであれば」


 事前にテクノさんと話し合いをしていたから、このやりとりは正直、形だけだ。自分達の好きなペースでやりたかったから、本当は断ろうと思ってた。でも、思ってたより深刻そうな雰囲気をだしてくるし、やれる範囲でならいいかなと思い直し、タダ働きではないならという事で受ける事にしたのだ。


「うむ。そのあたりはボブカットと相談してほしい」

「わかりました。では、そのように」


 そろそろ話は終わりかなと思っていたら、サシャさん達が近づいてきた。何故か、王様と騎士団長も近づいてきた。


「ん?」


 なんだなんだ?⋯あ、そろそろ時間かな?サシャさん達は一緒にいくとして⋯⋯え、あの二人は??


「⋯確か、くっついておればいいと言っておったな」

「はい。そのように報告をうけております」


 この発言を聞いたからか、急にサシャさんがいつもの調子で話しだした。


「そうですよ!ニホンに行くなら早くした方がいいですよ!そろそろですよ!」

「ちょ?!サシャさん?!」

「おぉ、そうかそうか。よし、ボブカット」

「はっ」

「え、本当に二人もいくの?!」


 サシャさん達が右肩に、ボブカットさん達が左肩に手をおいて数十秒後、近藤さんが待っていた公園に戻ってきた。


 そうしたら⋯⋯。


 日本かぶれのコスプレ外国人みたいな人が、


「よいっ!!!!よいぞっ!!!ボブカットッ!!!」


 筋肉モリモリの鎧姿のいかついおじさんが、


「いぃーーーーです!ねぇーーーーーっっ!!!!」


 いつもの欲深い聖女が、


「そうでしょう?!ヒィーーーハァーーーッッ!!!」


 三者三様に騒ぎ出した。その様子にミラさん達でさえ、ちょっとひいているように見える。それらを見ていた近藤さんがぼそっと話しかけてきた。


「⋯⋯佐藤さん、これはなんだろうね」

「うん、なんだろうね⋯⋯カオスかな⋯?」


 初めての移動だし、仕方ないのかな?王様だって人間だものね。


 公園に人がいなくて本当に良かった。


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