67 王都なんだけどね
ぽちっとな。
ピンポン。
「ん?どっかの町かな?」
「そうみたいだね」
見慣れない町を近藤さんと二人でキョロキョロとしていたら、サシャさん達を発見した。
「おーい、サシャさーん」
声をかけるとこちらに気づいてくれたみたいだ。新しい町に着いてはしゃいでいるかと思いきや、そんなことはなかった。サシャさんは戸惑い、落胆といった表情をしていた。ミラさんとダヌさんも似たような表情をしている。
「⋯どうしたの??」
「ユウジさん⋯。ここ、王都なんですって」
「え??そうなの??」
そう言われてスマホを片手に見回してみると、少し離れたところに確かに城壁のようなものが見える。その内側に数多くの建物があり、前に見た村や町に比べれば人も多いし、店の数も多そうだ。今立っている反対側にも城壁があり、そちらは少し立派に見える。ここが王都っていうなら、あの奥に城でもあるのかもしれない。珍しい光景に思わず、スマホのカメラで撮りまくる。シャッター音がうるさいのは勘弁してほしい。
「⋯昔のヨーロッパみたいな」
近藤さんがぼそっと言ったとおりだと思う。確かに王都だからか、街の広さ、人の多さは今までの比ではない。ただ、あっちとは違う。いつも見ている景色と比べてしまうとノスタルジーを感じるような⋯。比べるものではないと分かってはいるんだけど。
「サシャさん、王都なのに静かだね?」
「王都っていっても、なんだかなぁって⋯」
「「⋯⋯わかる」」
サシャさんの言葉に、ミラさんダヌさんが同意する。
「ニホンの方がいいかなぁ」
「やっぱりミラもそう思いますよね?!」
「あーー⋯⋯」
皆、日本に慣れちゃった⋯と⋯。
「このパラデリアで、間違いなく一番大きくて栄えているんだけどな⋯」
そう話すテクノさんが苦笑している。
「慣れとは怖いものだな。⋯⋯ただ、まぁそう思ってしまうのもわかるな」
テクノさんも日本を見ているからわかってしまうんだろう。
いつの間にか、近藤さんが消えていた。位階はあがったらしいが、まだ時間が延びるくらいではない。
「⋯⋯さて、我々は騎士団に報告にいく。おそらく数日以内に王と謁見になるはずだ」
「今日みたいに仕事が休みの日だと助かりますね」
「そうだな。時間に制限があるのは報告しているから大丈夫なはずだ。一応改めて言っておく」
「お願いします」
「それまでの間、他の皆は『ボンビン亭』に滞在していてほしい」
⋯⋯ボンビン?なにその名前。
「そこにお風呂ありますかっ!?」
「なかったはずだな。確か⋯井戸はあったかな。あとは宿のものに湯をもらうとか⋯」
「⋯⋯王都なのに!なんてこった!!⋯⋯⋯いつも通り、ユウジさんとこにいくしかない⋯」
「それがいいね。そうしよう」
「いや、井戸で水浴びも⋯」
何かを察したのか、ダヌさんが途中で言葉を切った。
⋯捕まるっていうか、やられるぞ。
報告に向かったテクノさん達と別れて、宿に向かう道を散策していく。
「やっぱりお店が多いのかな?」
「そうですね。多いでしょうけど⋯」
「けど?」
「コンビニには勝てませんよ。あんなにあるなんて⋯」
「いや、世界が違うんだから比べても⋯。ほ、ほら、あの店はなんなのかなぁ?!⋯⋯あっ」
見慣れないマークが掲げている店が気になったが、時間だったようで一人で戻ってきてしまった。
「あ、佐藤さん」
「もう時間でしたか?!」
すかさずサシャさん達が現れて、あっという間に皆が合流した。あ、ダヌさんは置いてきたみたいだけど。
「さっきのあれ、なんの店なの?」
「え?ええと武器とか装備ですかね」
「そうなの?!そりゃ見ないと!!」
「俺も見たい!」
男二人して興奮してしまう。普段そんな店に行くことなんてないんだから仕方がない。許してほしい。
「いい盾あるかな!?」
「えぇ?ミラまで?!」
「あの店に入るということで!」
時間になるまで、自販機で飲み物を買う。飲み物を受け取ったサシャさんが遠い目をしている。
「どうしたの?」
「この自動販売機でしたか?これもコンビニみたいにたくさんありますよね⋯」
「え?あぁ、そうだね」
「美味しい食べ物があって。家にはお風呂があって。街はとても綺麗に見える。高い建物は嫌ですけど、いっぱいあるし。馬より早い車や電車がある。パラデリアもニホンみたいになりませんかねぇ⋯」
「⋯多分、サシャさんが生きている間は無理じゃないかな」
「えぇ?!そんなにかかります?!」
「かかると思うよ」
こちらでいう中世とかそれくらいの文明っぽいし。いくら魔法や能力があるっていっても魔物もいるし。そもそも機械とか科学が発展するとも思えない。
「⋯確かに王都でさえ、あんなのだしなぁ。となると、今みたいにボタンで来るのが一番現実的ですかね。⋯はぁ。もっと時間が延びればなぁ」
「それはサシャさん次第だね。⋯⋯あとは神様がなんとかしてくれれば?」
「お祈りしてみようかな⋯」
「するだけならタダだし、いいんじゃない。ってか、そろそろじゃない?!」
サシャさんの肩をつかんで数秒後、さっきの店の前に移動した。
「キタキターッ!!」
「よし、入ろう!」
「盾!」
「えぇ⋯?」
珍しくサシャさんが引いているように見えるが、お構いなしに店に入っていく。
「こんにちはー!」
「武器はどこだ!?」
「たーて!たーて!」
「さぁ⋯⋯あっ!?」
入ってすぐ何かにぶつかった。
「あぁっ?!なんだ?!」
髭がモジャモジャで、小さいけど強そうな柄の悪いおじさんがこちらを睨んでいる。
「?!ドワーフ?!」
「⋯⋯⋯ユウジさん。普通のおじさんです」
「え?!」
「普通のおじさんです」
サシャさんが、最近よく見る真顔で繰り返した。
「そ、そっか。あの、すみませんでした⋯」
小さい普通のおじさんは「気をつけろ!!」と怒鳴りながらでていった。
気を取り直して、店内に並べてある武器や装備を眺め、試しに剣を持ってみたりした。
「ん⋯⋯重っ!!」
剣の重さにびっくりし、使うのは大変だと言われた事を思い出した。確かにこんなのを振り回してはいられない。
「なに、この盾⋯。重くて持ち歩けないよ⋯」
ミラさんの残念そうなつぶやきが聞こえてきた。剣も盾も扱うにはそれなりの腕力がいるようだ。持てない以上、鉄パイプとかポリカーボネートで我慢するしかない。
⋯⋯せっかくだし、鍛えてみるか?
ちなみに店員もドワーフなんかじゃなくて、普通のおじさんだった。残念。




