66 ここは佐藤の湯
王都に行って、王様に会う事になった。
とはいえ、実際に王都までの長距離移動をするのはサシャさん達なわけで、自分が移動してる感覚はほぼない。ぽちっとボタンを押した先が町じゃなくなったから、頑張って移動してるんだなぁってくらい。ただ、そのせいなのか⋯。
「ユウジさん。シャワー使いますよ?」
「え?あぁ、はいどうぞ⋯」
サシャさん達が毎日のようにやってくるのは変わりないけど、毎日ほぼ同じ時間にきてシャワーを浴びていく。日中にこっちに来てウロウロはしていないようだ。時間は十五分しかないから慌ただしく風呂場へ向かっていく。移動中、どこかの宿に泊まれない限りは野営する事になる。そうすると、体が洗えないのは困るとか。拭くだけでは我慢できないとか。
あっちではそれが普通なはずなんだけど、慣れちゃったという事だねぇ⋯。
ザーザー⋯。
『それとって⋯』
自宅で女性がシャワーを浴びている。
前にもあったけど、そんなことは本来ありえないこと。⋯⋯いや、ありえなくはないんだけど⋯相手がいないってだけで⋯⋯。で、最初はそんな状況に多少落ち着かなかったけど、もう慣れてしまったという事で。
サシャさん達は計算しているのか、ちょうどよい時間に着替えて帰っていく。
⋯⋯うちはいつから銭湯になったんだろうか。いや、ネットカフェのシャワールームみたいだな。十五分だし。
そんな事を考えていたら、ボディソープやシャンプーの減りが早いのが気になった。
⋯⋯女性用のシャンプーとか買っておくか⋯?⋯⋯⋯⋯⋯いやいやいや買わない⋯⋯ぞ?
⋯⋯ドラッグストアで買っている姿が想像できてしまう、今日この頃。
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「え?佐藤さん、王様に会うの?!」
移動先がいつもの町じゃなくなっていたから、近藤さんに事情を説明した。
「うん。なんかそうみたい」
「なにそれ!?」
近藤さんはなんだか楽しそうにしている。それはわからなくもない。
「そんな展開はさ、ゲームとかラノベだと⋯勇者とか?!」
「あー、そう思っちゃうよね。でも⋯」
「んなこたぁない」
「⋯え?」
「んなこたぁない」
いつぞやと同じように、サシャさんが真顔で繰り返した。
「だってさ。そんなのいないみたいだよ」
「そ、そっか⋯」
近藤さんのテンションが一気に下がっていく。
「⋯なんていうか、なんでか恥ずかしくなるよね」
「うん⋯」
「⋯でもまぁ、例えば洞窟を攻略しまくったあとならそう呼ばれるかもね」
「それはそうなんじゃない?」
「んなこたぁ⋯⋯あるのかな?わかりませんね」
サシャさんは真顔で首をかしげた。
「テクノさんがそんな事を言ってくれたしね。⋯ただのフォローかもしんないけど」
「⋯フォロー⋯」
「とりあえず、変な勘違いはしないでおく!!」
「そ、それがいいね⋯。うん、一般人だからね」
この話題は終わらせたかったけど、何故かサシャさんが話を続けてきた。
「え?私たちがパラデリア初の勇者パーティってやつじゃないんですか?」
「⋯⋯サシャさんは『んなこたぁない』って言ってたのに、なんでそんな事言い出すのさ?!」
「え?なんででしょう?それはそれで、なれたらいいんじゃないのかなって。というか、ユウジさんはなりたいんですよね?」
「べ、別になりたかぁないよ⋯」
「⋯⋯本当ですかぁ?」
「本当です⋯」
「へぇ⋯⋯」
おっと、サシャさんが目を細めながら、ニヤニヤしはじめたぞ。なんなんだよ⋯。
「そ、そういえばダヌさんも来るんだって?」
ここは強制的に話題の変更を!
「え?あぁ、そうですね。どこで合流するかわかりませんけどね」
「ダヌさん??」
「そういや近藤さんは会ったことなかったね。最初の村で会った人。炎の魔法が使える人だよ」
「炎かぁ。見てみたいって思うとこだけど、佐藤さんのを見たしなぁ」
「でも、ベテランだし違うかもよ?」
「ベテランかぁ⋯」
「そう!勇者パーティに必要な火力ですね!」
「だから⋯それはもういいって⋯」
サシャさんはニヤニヤしている。意地悪だ⋯。
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「シャワー使いますよぉ?」
「お、ユウジ、久しぶりだな」
いつものようにサシャさん、ミラさんがシャワーを浴びにきた。そして久々にダヌさんが現れた。
「ダヌさん?!久しぶりですね。時間的にシャワー浴びれないですよね⋯?」
「い、いや、久しぶりだし、話でもって思ってな」
「そうですか」
ザーザー⋯。
『泡が目に⋯』
話でもと言ってたくせに、ダヌさんは何も喋らずに聞き耳を立てている。いつぞやのように落ちつきもない。
「やっぱり、ユウジ⋯のぞ⋯」
「なにがやっぱりなの?!ダメですよ!ダヌさん!テクノさん達に捕まりますよ!」
「そ、そうだな⋯」
ザーザー⋯。
ダヌさんが無言で風呂場に向かって動き始めた。
「ちょっと?!だからダメだって!」
「わ、わかってるって⋯」
この人、久々に会ったけどダメになってるぞ⋯。いや、これはもともとなのか?同じ王都に行くのでも、捕まって王都に連行されるような形にならなきゃいいけど⋯。
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道中の魔物退治に付き合ったりしたりとか、ダヌさんの監視をテクノさんに頼んだりとか、いろいろあって数日後、どうやら王都に着いたみたいだ。




