65 面倒な予約はいりました
「王に会ってほしい」
「はい??なんて言いました??」
最後にテクノさん達と会ったのが、いつだったかなと思ってたら再会した。そして、ちょっと何を言ってるか分からない事を言い出した。
「王に会ってほしい」
テクノさんは一語一句違わずに繰り返した。
「え、なんで?」
いつも敬語で話していたけど、言葉遣いを気にしている場合じゃない。そんな事より⋯え?王って言った?王って王様だよね?なんでそんな人と俺が会うの?
「え、なんで?」
おもわず、こちらも一語一句違わずに繰り返してしまった。それがなにかしらの圧になってしまったのか、テクノさんの勢いがなくなり静かに話し始めた。
「⋯いや、その、なんだ⋯」
「はい?」
けっして、圧をかけているつもりはない。けっして。
「⋯ほら、ユウジから聞いたこととか、実際に体験したことを騎士団の団長に報告したんだ」
「はい。それは必要でしょうね」
「そしたら、こうなった」
「はいぃ?」
何言ってんだ?だから、そうなった理由が知りたいんだよ、こっちは。そんなんで、はいそうですかなんていけないんだよ!
「⋯知っているかもしれないが、ずっと昔から魔物の洞窟は少しずつ増え続けているんだ。このまま増えていくと、人が住める領域が徐々に狭くなっていく」
「魔物がでてくるからですか?」
「そうだ。⋯かつては人が住んでいた場所が、今は住めなくなっているという場所があちらこちらにある」
「でも、それは騎士団が対処してるんですよね?」
他の国と戦争してるわけじゃないんなら、その為にあるんだろうし。
「それはもちろん対処しているが、その場をしのぐのがやっとという状況だ。規模によっては現場に任せている。手がまわらない」
「現場って⋯」
最初の村やこの町で騎士の人を見かけないのはそういう理由だろう。確かになんとかなるならいいけど、聞いた感じだと、ギリギリでの現状維持ってとこだろう。なにかあってバランスが崩れたら終わりそうだ。
「だから、洞窟を完全になくすことは出来ないにしても、少しは減らすことができるような人間がいると聞いたからには会っておきたいそうだ」
「はぁ⋯」
「もちろん、私としては洞窟を減らす事に協力してほしいが、ユウジはこの国どころか、この世界の人間でもないしな」
「そうですね。⋯まぁ、会ったら会ったで、なんだかんだで手伝う事になりそうだなぁ」
「⋯⋯それは否定できないな」
⋯うーん。
「おっとそろそろじゃないですか?」
今まで全く話に参加してなかったサシャさんが、テクノさんと自分の肩を掴んだ。
「ユウジさん。私、王都に行ってみたいんですよね」
「え?あぁ、そっか。王様に会うとなるとそうなるのか」
ボタンでの世界間の移動はサシャさん近辺というルール?がある。だから、サシャさんも行かないと王様に会えない。王様が町に来るわけないだろうし。
「とりあえず、会うだけ会ってみたらどうですか?⋯⋯っとと、あ、チョコかな?いただきます」
部屋に戻ってきたら、サシャさんはテーブルに置いてあったチョコを自然に食べ始めた。
「王都に行きたいだけでしょ?」
「それだけでは⋯んー、甘い!」
「⋯とりあえず観光だと思って来てみたらどうだ?」
「まぁ、それを言われると⋯王都がどんなところか気になりますけども」
「それなら行きましょうよ!」
まだ村と町しか知らないし、いい機会か?
「⋯⋯んー、行くか」
「よしきたっ!さすユウっ!ヒューッ!」
「助かる」
他の人に比べればチートみたいな能力があるし、王様に会って依頼されて、本格的に洞窟を減らすような事になったら⋯。
「⋯⋯え、勇者とか英雄とか言われちゃう⋯??」
「んなこたぁない」
あ、やば。声にでてた⋯?
「んなこたぁない」
サシャさんが真面目な顔で一語一句違わずに繰り返してきた。徐々に顔が熱くなってきた。赤くなってるかもしれない。
「い、いやいや、本当にそう言われるかもしれないぞ!?」
「テ、テクノさん。そんなフォローやめてください⋯⋯やっちまったー⋯⋯」
「んなこたぁない⋯もぐ⋯」
「サ、サシャさん!お菓子あげないよ!?」
「ちょ、ちょっとそれはひどいですよ?!」
「ひどいのはサシャさんでしょ?!」
「んなこたぁない!」
ダメだ!この話題から変えないと!
「⋯えーと、サシャさんが王都に行くとなったら、あの町の聖女は足りるんですか?ミラさんもついてきそうな気がしますし」
「それは大丈夫です!!代わりが来たんで!!⋯もぐもぐ⋯」
「代わり?」
え?タイミング良くない?⋯⋯⋯あ、サシャさんからの切り崩しを狙ってたんだな?俺が王様と会う会わないはおいといて、サシャさんは王都に行きたがるだろうから、とりあえず移動してしまえと。王都までは時間がかかるだろうしね。
チラッとテクノさんを見たら、思いっきり顔をそらしやがった。最初から狙ってやがったな、この野郎。
「⋯⋯王様に金銭を要求してやろうかな」
「そうしましょう!!褒美!!」
「⋯で、代わりの人って??」
「なんか強そうな人です」
「強そう??聖魔法で攻撃するの?」
「いえ、素手で魔物退治するらしいですよ?」
「⋯は?聖女なんでしょ?」
どういうこと?素手?
「確かに聖魔法を使える聖女なんですけど、服装もですけど、見た目も少し変わってて⋯」
「どんなふうに?」
「とりあえず半袖なんですけど、両方とも袖が破られたようになってて⋯あと、筋肉がすごいんです。体も大きくてテクノさんよりも強そうです」
「へ、へー⋯」
「確かにあの人は俺より強い。それに聖女としても優秀だ。ユウジ達全員が王都に行ってもいいように手配した」
「そうなんだ⋯」
騎士であるテクノさんより強い聖女か。さっきは見かけなかったな。どんな感じなのか見てみたいような、見たくないような⋯。格ゲーにでてきそうな人ってことかな。⋯⋯それで聖女?うん、見るのはやめとこう。
「サシャさん?その人連れてこないでよ?」
「え?会わなくていいんですか?」
「ほら、異世界の事をあまり広めるのもあれだし、お菓子とか食べられちゃうんじゃない?」
「⋯確かに!!あの人はよく食べそう!そしたら私の分が!」
「いや、うちのなんだけどね⋯」
「ユウジさん家のは、もう私のものといっても過言ではないんですよ?」
「⋯⋯そっか。過言だと思うけどね」
時間になったようで二人して消えてったと思ったら、今度はサシャさんだけ現れて、ひたすらうちのものを食べてまた消えてった。
「⋯本当に金銭かなにかを要求した方がいいな」
食べ散らかされた現場を見てそう思った。




