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聖地認定と神の御使い

会社の許可を得て男爵邸に戻ったのだが......。

 会社の判断を仰ぐため、一度会社に帰った俺。アナマリア教皇を待たせているので、今度は専務と共に男爵邸へ急ぎ戻った。


「お待たせ致しまして、申し訳ございませんでした」


「いえ、大丈夫ですよ。それでそちらの方は?」


「申し遅れました。私、信頼雑貨株式会社の代表、沢田 智紀と申します。本日はお会いできて光栄です」


「沢田様ですね。私はファリス教のアルジェンテ・アナマリアと申します」


 専務とアナマリア様は挨拶を交わしたんだが、何かそっけないよ? こっちの代表者なんだけど。


「それでお話の方は、お聞きになって頂けたのかしら?」


「はい。社内で今回のお話を協議させて頂きました。アナマリア殿の仰られる事に異議はございません」


「そうですか。安心致しました。ではこれで速水様もご納得ですのね」


「はい。会社の決定ですので」


 ニコニコ顔のアナマリア様。何故だろう? 何か胸騒ぎがするんですが?


「ではグランベルク卿、打ち合わせ通りに広場に人を集めて頂けますか?」


「畏まりましたアナマリア様。直ぐに手配いたします」


 男爵は夫人を伴って出て行ってしまった。続いて枢機卿と大司教も同じく部屋を出て行く。


「それでは速水様、ご一緒に参りましょう」


「は、はい。えっと専務は如何いたしましょう?」


「沢田様はお帰りを。宜しければ、他の方々もご出席願えませんか?」


「かしこまりました。ではその様に致します」


 皆に続き専務も帰ってしまった。ちょっと後で謝っておこう。


「宜しければ、お手をお願いできますか?」


「え? す、すみません。こう言う事に不慣れなもので」


 何だろう? ソファーからアナマリア様に立って貰ったんだけど、そのまま手は握られたままだ。


「うふふ。このまま参りましょう♪」


「それは......宜しいのですか?」


「何の事でしょう? さぁ早く参りましょう♪」


 俺とアナマリア様は、何故か手をつないだまま男爵邸を出た。控えていた枢機卿や大司教、それにファリス教徒の皆さんも驚きと嫉妬の目線なんですよ。何とも言えない空気の中を、アナマリア様は素知らぬ顔だ。そのまま広場まで歩いていくんだが、街の民衆もアナマリア様の姿を見た瞬間に膝まづく。俺はそれを見て再度認識した。ファリス教の影響力とアナマリア様の人気を。



◇◇◇



 ゾロゾロと行列を引き連れて辿り着いた広場。広場には既に多くの民衆と演説用の台が設置されていた。いったい何時の間にこんなの設置したんだ?! そのまま登壇する俺とアナマリア様。そして静かにアナマリア様が語りだす。


「親愛なるファリス様に導かれ、私は今日この街に来ました。集まった皆様も敬虔な方々だと存じます」


 この言葉から始まったアナマリア様のお話。周りの民衆は全員が跪いている。


「私はこの方と出会い、神の意志を確信いたしました! 彼は『神の御使い』です!」


 ちょっと⁈ 彼って俺の事なの? 話が変な方向に行ってませんか?


「我々ファリス教は、彼の現れたこの街を聖地と認定いたします!!!」


「「「「「「『神の御使い』様!!!」」」」」」


 おいおい(滝汗)! 聞いてませんよ? と思いアナマリア様を見たのだが、顔が笑ってるし!


「そして! ここに現れた『神の御使い』をファリス教において聖者と致します!!」


「「「「「「聖者様!!! 聖者様に祈りを!!!」」」」」」


「この宣言は第15代『聖女アナマリア』として行いました。今こそファリス様に感謝の祈りを!」


 あーあ。何なのこのカオス空間。アナマリア様に上手い事使われた感が物凄い! そして一斉に祈りだす民衆に悪いけど引くわ-。


「今、アナマリア様が宣言なさったお言葉は、ファリス教の総意である! 皆も心得よ!」


 枢機卿から改めてこの宣言は民衆に伝えられ、アルメリア王国中に伝達される事になった。




◇◇◇



 一方、この宣言を見に来た信頼雑貨の面々は......。


「ちょ、ちょと何よあれ! なんで手を繋いでるの⁈」


「ほ、ほんと速水君って! あれは無いわ!」


 静香と千鶴は鬼となっていた。もう宣言など耳に入っていない。


「あちゃぁ-。あれはダメな奴ですね」 「ほんと言い訳できないし」


「この後が怖いんですけど?」 「修羅場ですかね」


 愛と美樹は面白がっているし、恵と洋子はこの後に期待していた。


「うむ。聖女の宣言とあらば、我々も認識を改めないとな」


「そうですね。何かこれにも意味があるのでしょう」


 冷静にそう分析するのは沢田と清水。


「実際、『神の御使い』と言われるとどうなんだろうな?」


「ああ、遅れた文明に進化を促すって事か?」


 蓮見と高橋もそう分析する。


「速水の奴、上手い事やってんなぁ-。うらやましいやんけ」


「ア、アナマリア様だぁ!!!!」


「ふん! 聖女であ-る!!」


 田村は嫉妬に燃え、マリアとトミ-は自分たちの立場を完全に忘れている。跪いていないのは信頼雑貨の面々だけだったんだ。


 この宣言の後も暫くアナマリア様と一緒に、ファリス教徒と挨拶を交わす事になった。俺は祭り上げられ体中から冷や汗を流していた。いったいこれからどうなって行くんだろうか?


 聖女恐るべし!!

 

アナマリア様って策士かも知れない。本人の意思は反映されない速水君。


次話は、神の御使いと発展を続けるアルメリア王国。

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