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神の御使いという存在

アナマリア様の宣言は終わったんだけど......

 アナマリア様の宣言にあった『神の御使い』と言う言葉。この言葉はファリス教において、重要な意味を持つ。ファリス教ではこの世界で、『幸運の君(ラッキーロ-ド)』と言われる存在がこれにあたる。予言に存在するのは前述の方なので、ファリス教としてこの言葉は非常に重いのだ。


「この後、少しお時間頂けませんか?」


「この後ですか? え、ええ。大丈夫ですが」


 アナマリ様の誘いを断れるはずもなく、男爵邸に用意された部屋に向かった。これに枢機卿や大司教、本部より来ている教徒も続く。またも大行列を引き連れ歩くのは、『神の御使い』との親密さをアピ-ルするには十分だった。



◇◇◇



 グランベルク男爵邸~


「本日はありがとうございました。おかげで民衆への大々的な宣言になりましたわ」


「あはは、やはりそれが狙いでしたか」


「まさかアルメリア王国が私達より早く、保護対象にするとは思っていなかったのですよ」


「それが理由ですか? ちょっと意外でした」


「私達が『神の御使い』として、大々的に宣言を行うつもりでしたの」


「それにより影響力の拡大をする目的だったのですね?」


「ええ。速水様には正直にお答えしますわ。仰る通りです」


「でも何故俺だったのですか? それなら俺である必要が感じられない」


「一目見て決めましたの。貴方でないといけないと」


 そう言って見つめられるんだけど? ナニコレ? ラブコメ?


「私など普通の人間ですよ? 正直影響力があるとは思えません」


「この国で私に対して、真っすぐに意見を言われる人間は初めてでした」


「それは私の性格でもあり、営業職なので当たり前の事なんですよ」


「国王でさえ気を使った発言しか致しませんのよ? 同じファリス教徒でもそれは同じ」


 うーん。これは勘違いだろうね。確かにアナマリア様の存在は、大きすぎるんだろう。美化され過ぎているのか? ファリス教が影響力を持ちすぎているのか?


「その認識を変えて行った方が良いと思いますよ。私も他の人間にアナマリア様とお話した話をしたら、ビックリされましたから」


「私が『聖女アナマリア』としてファリス教に認定されてから、今日まで一度もまともにお喋りした事がありません」


 そこからアナマリア様のお話を聞いた。元々孤児として教会で育ったアナマリア様は、10歳の時に夢に女神が出て来たらしい。その夢は当時水の出なかった土地に、新たな水源をもたらす物だった。その話を聞きつけたファルス教が、アナマリア様を保護。そのまま第15代『聖女アナマリア』として育てられたんだと。ファリス教としても数年かけて次の『アナマリア』を探していたらしい。


「そのお話だと歴代のアナマリア様は、必ず夢に女神が現れているんでしょうか?」


「そうなりますね。初代アナマリアから現在まで皆、同じですわ」


 そうなるとファリスと言う女神は実在するのか? にわかには信じがたいが、嘘を言っているようには見えないしな。これも日本へ帰る為の手がかりになるかも知れないな。


「アナマリア様が、女神さまにお声を掛ける事は出来ないんですか?」


「そうですねぇ。いつもあちらから出て来られるのですよ。何度か問いかけてみた事はありますが」


「出来れば次に現れた時に、聞いてもらえないでしょうか? 我々の帰還について」


「やはり帰りたいですか? 速水様はこの世界がお嫌いなのでしょうか?」


「嫌いでは無いですよ。ですが生まれ育った世界ですし、帰りたくないとは思いません」


「そうですか。せっかくお知り合いに慣れましたから、寂しいですね」


 聞き方によっては、勘違いしますよ? きっとアナマリア様は寂しかったんだろうね。祭り上げられたは良いが、まるで神その者のような扱いを受けて。


「私で良かったら、何時でも話し相手になりますよ?」


「本当ですか? 良かった♪」


 まるで少女のような笑顔で、そう言ったアナマリア様に見とれてしまった。いかん、俺には中村さんがいるんだ。しっかりしろ! 俺。


「そろそろ一度戻りますね。会社の方でも報告を待っていますので」


「そ、そうですか。仕方ありませんね。2日程滞在しますので、又お会いできますか?」


「ええ。それなら明日、こちらに寄せて頂きます」


 何だろう。ちょっと後ろめたい気分になりながら、俺は会社に帰った。そこに鬼が待っているとは知らずに......。




◇◇◇



「ただいま戻りました!」


「やっと帰って来たのね。ちょっと時間良いかしら?」


 俺を待っていたのは花崎さん。連れられて向かったのは会議室だったのだが、すっごい怖い。


「帰って来たわよ。全く何をしていたんだか」


「速水君! こっちに来て座って!」


 中村さんが怒っているね。俺は小さくなりながら椅子に座った。


「で? こんな時間までどこで何をしていたのかしら? 私達に説明してくれる?」


「うわぁ。静香さん怖いね」 「うん。キレてるね」 「あららぁ」 「しゅ、修羅場ね」


 周りの女性社員は完全に面白がっている。現在俺の前には中村さんが座り、その横に仁王立ちの花咲さん。少し離れて倉木さんと安田さん。それに後輩の森田さんと栗田さんだ。


「え、えっと。な、何か大きな勘違いをされていらっしゃるようで......」


「え? 勘違い?」 「はぁ? 何言ってんの?」


「えっとですねぇ。まずアナマリア様とは王都で......」


 それから必死に王都での出来事から始まり、今日の宣言までの話をした。脇が甘いとか、何で手を繋ぐんだとか色々怒られたんだけど、なんとか誤解? は解くことが出来た。最後はため息をついて、「まぁ、速水君鈍いからね」なんて言われて終わった。結局この話は男どもにも突っ込まれ、散々いじられまくった。


 だ・か・ら! どうしてこうなったぁああああ!!!


 

『神の御使い』予言で伝わるその言葉。女神から是非とも帰る方法を聞きたいものだ。


ちょっと話が長くなってしまったので、次話で国の発展状況を。

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