ファリス教の成り立ちとアナマリアの決定
呼び出された速水に突きつけられる話。
男爵邸に呼び出された速水。待っていたのは、ファリス教のトップであるアナマリア教皇だった。果たして彼女の目的とは......。
現在応接室のソファーに座るのは、男爵夫妻と速水、そしてアナマリア教皇だ。アナマリアの後ろに男性2人が立っている。改めて話が始まったのだが、その言葉にこの部屋にいる人間は驚く事になる。
「私がこちらに来たのは、ファリス教の教えに従うためですのよ」
「ファリス教の教えですか? 申し訳ありません、私はファリス教という宗教について何も知りません」
「速水さんはそうでしょうね。一部を除いてここに居る皆は、ファリス教徒ですが」
「その肝心の教えとは何なのでしょうか?」
「はい。ファリス教が出来たのは、今から500年ほど前になります。宗教としてはこの世界でも最古なんですよ」
「歴史のある宗教なのですね。どう言った成り立ちなのでしょうか?」
「元々は小さい街で始まったのですが、その街いた1人の少女に天啓が下りたのです」
「天啓? ですか。その天啓とはどう言ったものなのでしょう?」
「はい。その少女がいた時代は、雨が少なく作物が育たない過酷な時代だったそうです。そんな時、少女の夢にファリスと言う女神が出て来たのです。そして『私を祈るのです。そうすれば幸せが訪れる』と」
まるでおとぎ話だな。時代的には飢饉があった時代なんだろう。女神に祈る事で、雨が降ったりしたんだろうか? なんか日本の伝承にも同じような話を聞いたことあるけど。
「その少女は、皆にその夢の事を伝えました。多くの者は信じませんでしたが、少女が言われた通りファリス様へ祈ると、天から恵の雨が降りました」
「成程、それでファリス様のお力が本当の物だったというお話になるのですね」
「ええ。それにこの話は続きます。その後も女神は少女の夢に頻繁に現れ、奇跡を見せて行くのです」
この後、その少女が起こした奇跡の話を聞かされた。雨だけでなく水が湧いた話とか、作物が育たなかった土地に作物が育った等。話だけを聞いていると鵜呑みにして良いのか分からない話もあったが、実際に目の前で見たら信じる他無かったのだろう。更に話は続く。
「そしてファリス様のお話には続きがあります。ファリス様は言われました。『この世界に苦難が訪れた時、異邦の者が奇跡を起こすだろう』と。実際にその者達は訪れました」
「その異邦の者が『幸運の君』と言うお話なんですね」
「その通りです。そして今、目の前に貴方がいます」
そう言って俺を見つめるアナマリア様。とっても美人さんだけど、目が怖いです。それに俺だけじゃないし。会社ごとですからね!
「そ、そうですか。ですがそれなら私達全員がそうですよね」
「その件で私も思う事もあるのですが、ファリス教としてはその通りです」
「それでアナマリア様は、どう言ったお考えでこちらに来られたのでしょうか?」
「はい。今日私達はこの街、グランベルクを聖地として認定します。そしてあなた方を『神の御使い』としてファリス教徒に宣言を致します!」
え? 聖地? そんな大げさな。それに『神の御使い』って言われても、普通の人間なんですが......。
「それは素晴らしい事ですね! これ程光栄なことは無い!」
「ええ! 何と言う事でしょう!」
その話を聞いた男爵夫妻は、ソファ-から降りてアナマリア様に祈りだした。それに続くように、立っていた二人の男性も同じく祈る。ナニコレ? 怖いんですけど? どうしてこうなった!
「その宣言には、私と後ろのジョアン枢機卿、ロベルト大司教そして速水様もご一緒にお願いします」
「ちょ、ちょっと待ってください! 私は代表ではありませんよ! それなら代表者に......」
「いえ。私が貴方を認めました。聖女である私の目に間違いはございません!」
いやいや! たまたま会っただけです! にっこり笑って言われても困ります-!
「申し訳ありません。一度会社に戻って上と話をさせて頂けませんか?」
「それは構いません。ですが私共の決定は変わりませんよ?」
「う......で、ですが、話は通しておかないといけませんので」
渋々ながら認めてもらったので、俺はその場を退席し会社へ走った。あまりに突然の申し出にパニックだよ。なんで俺なんだよ? 営業しただけなのに......。
◇◇◇
会社へ戻った俺は、直ぐに専務に報告すべく時間を取って貰った。専務は清水部長を含むすべての管理職を招集。会議室で対策会議を行う事になった。
「それでファリス教の話は分かった。皆はどう思う?」
「専務、そのアナマリア教皇がそうおっしゃられるのであれば、良いんじゃないですか?」
「清水君、だが速水君の立場的におかしくないだろうか?」
「それなら速水に役職を与えてはどうでしょう? それなら社内の反発も無いかと」
「私もその意見に賛成です。何かないと流石に」
専務の問いかけに清水部長と高橋課長が意見を言う。確かに何の役職も無い俺が、表立つと先輩社員の目が怖い。俺はそれも分かって帰って来たんだしね。
「いきなり既存部門の役職と言っても無理があるでしょう。それなら新たな部門を新設すれば」
「大塚君の意見には俺も賛成だな。新しく部門を立ち上げて、その責任者とすれば良い」
大塚係長の案に蓮見課長も賛成する。この案には、専務も部長も高橋さんも賛成した。そしてここに新たな部門が誕生する。信頼雑貨株式会社『広報部門』として。俺は新設される広報部門の長として社内に告知される事になった。肩書的には広報部門の部門長と言う曖昧なものだが。この決定は直ぐに社内掲示板に告示され、社内はざわつくのだが......。
巻き込まれる男、速水君。結果的に昇進?
次話はアナマリの宣言に沸くグランベルク。その宣言は国中を駆け巡る!




