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国家事業開始とファリス教の動向

速水は帰路を急ぐ。

 朝早く宿を出た速水は、朝一番のトロッコに乗った。昨日決まった学校建設の連絡は、既に国中に連絡が走っているそうだ。


「もうワシらでも知ってますよ。何でもアナマリア様がお決めになったとか」


「昨日の今日でそんな話が出てるんですか?」


「街の噂話はあっという間ですよ」


 昨日ファリス教と国が決めた学校建設の話は、まずファリス教が教会を通じ信者に話した。その後に号外に似たものが街に掲示されたらしい。(王都でもまだ紙は羊皮紙なんだ) 


「昨日のうちにという事は、国もファリス教も本気なんですね」


「こんな事珍しいでさ。まぁワシら字は読めないんだけども。あはは」


「これからは学校で学べますよ。きっと」


 トロッコは順調に進み、来た時と同じくフィリップスで一泊する。少し時間があったので、フィリップスの管理組合支部に寄ったのだが......。



「お疲れ様です。本部の速水です」


「おお! 速水さん! お久しぶりですね。聞きましたよ? 学校ですか?」


「ここにも話が届いてましたか。国中の街に教育機関が出来ますよ」


「そうですか! それは良い! 我々の後継者もこれで育つ事が出来ますね」


 商人にとって字を覚える事は必須。今までは限られていた後継者も、これからの学び次第で多くの者にチャンスが訪れるだろう。


「そうですね。もっと多くの人が、チャンスを得られる国になって欲しいですよ」


 しばらく話をした後、宿で一泊し次の日の朝一番のトロッコに乗った。今日中にグランベルクに着くだろう。この道中でも朝と同じ会話が行われたんだが、割愛する。グランベルクの街に到着したのは、日が傾いてきた頃。しかし俺の知るグランベルクの様子とは少し違ったんだ。


「あれ? やけに人が多いな。普段はこの時間、人通りもまばらなのに」


「速水さんは知りませんでしたか? 夜に店がやってるんですよ」


「あっ! そうかそうか。課長の計画かぁ」


 職人の話を聞いて納得した。課長の計画は知っていたが、すでに始まっているとはね。この様子なら計画は大成功だったんだろう。賑やかな街を通り抜け、会社に着く。やっぱり家に帰ってきた気がするなぁ。


「ただいま帰りました!」


「あら? 遅かったのね。お帰りなさい」


「花崎さん、ただいま。ちょと色々とありましてね。今って専務か部長居られますかね?」


「まだ居るはずよ。でも夜になったら出かけるはずだから、急いだほうが良いわよ」


「出かける? わ、分かりました。直ぐに上がります」


 出かけるって何処に? とりあえず報告だけ済ませよう。俺は階段を駆け上がり、専務の居る2Fへ向かった。



◇◇◇



 2F総務部~


「失礼します。営業部の速水ですが、専務とお会いしたいのですが」


「速水君、おかえりなさい。専務は部屋に居りますから、そのままどうぞ」


 俺はお礼を言って専務の部屋を訪ねた。話し声が聞こえたので、来客かも知れないな。


 コンコン―――


「どうぞ。入って大丈夫だ」


「失礼します。営業部の速水、帰社致しました」


「おお、速水君。お疲れ様」


 部屋に居たのは専務と蓮見課長だった。何かの打ち合わせだったんだろうか?


「立ってないで座り給え。丁度いい報告を聞こう」


 俺は言われた通り蓮見課長の隣に着席し、今回の王都での出来事を報告した。話を聞いていた専務と蓮見課長は、驚く様子も見せず聞いていた。あれ? なんか知ってそうな感じだな。


「わかった。流石は速水君だな。対応は間違って無かったと思うぞ」


「そうだな。言うべきことを言って、相手を納得させたなら成功だ」


「い、いえ。出しゃばってしまったとは思います」


「何、ここは日本ではない。常識も違えば考え方も違う。だが我々がやるべき事は、まさにそれなんだよ」


「それにな、既に学校の建設は準備が始まってるんだ。ライアン男爵から昨日話が来てな」


 昨日って俺より早いのか? 確かに話は一昨日だったけど、どんな手段を使ったんだろう。今度、男爵に教えてもらおう。


「今、蓮見君と学校建築の話を打ち合わせてたんだ。何でも学校の建物に、国の紋章とファリス教の紋章を並べるらしい」


「初めての事だそうだ。今日、教会のクリスタさんがここに来てな。上から伝える様にと」


 ファリス教の動きも早い。夜もぶっ通しで馬を走らせたんだろうか? クリスタさんもびっくりしただろうな。毎日来てるマリアさんとトミ-神父は知らないのかな? 


「どうした? 考え事か?」


「い、いえ。ファリス教は先ほど話した通り、我々を神の遣いと考えてる様でして」


「ああ。それでこの対応になってるんだな。あながち間違っていないのかも知れないが」


 そんな話をしながら、工事に関わる段取りの話もした。学校建設に我々は、窓ガラスや机などを入れるようだ。紋章もここに居る職人が作るらしい。建物の補強も蓮見さんに案があるんだってさ。



◇◇◇



 その頃、ファリス教総本部では......。


「い、いけません! 何故、アナマリア様が行かれるのですか?!」


「私が出向かないで、誰が行くのですか?」


「そこは枢機卿か大司教様で良いではありませんか!」


「お黙りなさい! もう決めたのです!」


 アナマリアはこれから何処へ向かうのだろうか? 自らファリス教トップが出向くとなれば、王国全土が驚くことになるだろう。


 果たして......。

伝達が異常に早いが、これは夜も無理をして走ったんだろうね。


気になるのは聖女アナマリア。彼女の向かう先は......。

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