娯楽も必要ですよねぇ
さてグランベルクにはもう1つ計画が動いていました。
速水が王都に居る間に、グランベルクの街では例のお店が開店を迎えていた。
「いやぁ、ようやく開店できます」
「思いの他、制約も無くて良かったですよ」
この二人はリズとメイダン。お互いにこれからライバルとなる関係だ。そんな二人の前に現れたのは、信頼雑貨の高橋。男爵に提案をした張本人だ。
「リズさんとメイダンさん。開店準備が整った様で良かった」
「あら? 高橋さんこそお忙しいんじゃありませんの?」
「高橋さん! ありがとな!」
「私は営業と企画が専門ですので、必ず成功させたいんですよ」
お分かりの方も居られるだろうが、高橋の発案したのは夜のお店。勿論、許可は必要だが、大人が息抜きできる場所も必要なんだ。街灯が設置された事で、夜の街も出歩くことが出来るようになったからこその案だった。
「きっと大丈夫! 私も頑張るから!」
「そうだな。うちは軽食も出すから心配してない」
「ええ、その意気です! 私も宣伝頑張りますよ!」
当初の予定では合計で5店舗の開店をしていたが、準備に時間が掛かっている。そこで準備の出来た2店舗を先行でオ-プンさせて、話題性をアピ-ルする狙いなんだ。
◇◇◇
そして迎えるオ-プン初日。両方の店には開店前から多くの人が訪れていた。
「おお、高橋君! 凄いじゃないか!」
「これはこれはライアン男爵。まさか来て頂けるとは思いませんでしたよ」
「なに、これも街の為だ。私も街が発展して行くなら協力は惜しまないよ」
そんな会話をしている時に沢田と蓮見もやって来た。
「「ライアン男爵、本日はおめでとうございます!」」
「沢田君と蓮見君も来てくれたのかね。その言葉はリズとメイダンの2人に掛けてやってくれ」
「勿論そのつもりですが、街の領主であるライアン殿にも祝福を」
「そうですよ。この街が発展できますように」
沢田と蓮見も機嫌が良いのには訳があった。この二人は酒好きなのだ。
「おっ? そろそろ開店時間ですよ」
「では高橋君、一緒に行こうか」
ライアン男爵と高橋は、開店セレモニーで挨拶する事になっていた。これを行う事で、正規の手続きを踏んでいると民衆に認識させる為なのだ。
◇◇◇
開店セレモニーが始まった。先ずはライアン男爵の挨拶だ。
「沢山の人々が、この新たな試みを歓迎しているようで安心した。私もこの街の更なる発展に期待している! 今日は盛大に楽しもうではないか!」
「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉ」」」」」」
男爵のスピ-チに集まった民衆が雄たけびを上げる。続いて発案者の高橋だ。
「う、うほん。男爵有難うございます! さて諸君! 夜の娯楽は必要か?」
「「「「「おう!」」」」」
「そんな声では聞こえないぞ! 夜の娯楽は必要なのか?」
「「「「おおおおおおおおおお」」」」」
聞いている沢田と蓮見は笑いが堪えられない。何処の番組なんだこれ?
「よしっ! わかった! 今日の最初の1杯は、ライアン男爵の驕りだ!!!」
「「「「よっしゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」
「リズとメイダンの店に、乾杯だぁ!!!」
「「「「かんぱぁぁぁぁいっ!!!!!!」」」」
ここに集まった大半は、新たに始まった工事関係者と信頼雑貨に雇われている人達。そこに街の他の店の関係者や一般の住民も加わり、とんでもない人数になっていた。
「いやはや高橋君も中々やり手だな。皆も楽しそうだ」
「あはは、ちょっと調子に乗ってしまいました。でもこれだけの人が歓迎しているんですよ」
「そうだな。今日は大いに飲もう。そして明日の活力にするのだ」
男爵も民衆に交じって酒を掲げる。この様な光景は他の街では見ることが出来ないであろう。
「おっと我々も参加しないと飲めなくなりそうだ」
「専務、急ぎましょう!」
この日、開店した2つの店はこの街で愛されて行く事になる。そしてこの事がきっかけになり、他の街にも街灯の普及がされて行くのである。この国で最初の歓楽街が出来た瞬間だった。
◇◇◇
一方、信頼雑貨の建屋では、女性社員が集まって女子会が開かれていた。
「ほんとに男ってお酒好きだよねぇ」
「あら? 静香が言うの珍しいじゃない」
「千鶴さん、あれですよ。あの人が居ないから」
「そうそう。それですそれです」
「ちょっと! 千鶴も愛も美樹もコソコソ何言ってるの! 聞こえてるわよ!」
「あちゃ~。先輩方荒れてるのかしら」
「恵! 声が大きいよ!」
「そっちも! 恵と洋子もこっちに来なさい!」
この女子会でも実はお酒を飲んでいた。静香は滅法お酒に弱いのだが。
「あぁ、まさか静香がこんなに弱いなんて。愛と美樹! 絡みだしたら逃げるわよ!」
「ええー、面白いじゃないですかぁ。携帯で写真撮りたかったです~」
「充電するのに電気使えないからねぇ。今の所」
「良いんじゃない? 愛もこの生活慣れて来たでしょ?」
「美樹は順応性高すぎなのよ。私はまだ携帯とか持ったままよ」
「ああ! 岩さんからお菓子の差し入れ貰ったんですよ! 忘れてました!」
岩本も夜の街に出かけている。開店した店ではなく、臨時で開けた『ごはん屋』だが。念の為、女性社員の外出は控える事になっていたんだ。
女子会はこの後も続いたのだが、静香はそうそうに眠ってしまった。しかし寝言で言った言葉でずっといじられる事になる。
「う、う-ん。速水君いい加減気づいてよね....むにゃむにゃ」
「夢にまで出て来てるのね。もういっそ告白しなさいよ」
「千鶴さんに賛成です。もうバレバレなのにね-」「ほんとに。でも速水君って鈍感ですから」
「きゃあ! 聞いちゃった!」「嘘⁈ 静香さんってそうだったんですね!」
がぜん盛り上がる女子会。この話題だけで夜更けまで続いたのであった......。
夜の娯楽。今の所食事処とお酒を出す店が開店。この事で静かだった夜も騒がしくなっていく。
治安の心配は男爵が手を打ってくれるだろう。
次話は速水の帰還と動くファルス教徒。




