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新たな風とセラフィア様

新入社員はやって来たが、ん?

 速水が王都へ向かった翌日、信頼雑貨には新たに5人の新入社員と1名の少女が。5人は貴族のご子息と令嬢。そしてもう1人がとても重要なんだが......。


「おはようございます! よろしくお願い致しますわ」


「い、いえ。まさかセラフィア様がお越しになられるとは......」


 対応する大塚もまさかの出来事に大変困惑している。彼女はこの国の王女。新たに入って来た5名と先に入社した3名とは、ご学友だったそうだ。


「友人が沢山こちらで働くと言う話を聞いて、私も来てしまいましたの」


 満面の笑顔でそう言う王女様。慌てて男爵の元に社員が向かって行った。連絡も何も無かったので、どう対応して良いか分からないのだ。とりあえず全員を応接室へ案内し、自己紹介から始めた。




◇◇◇


 応接室には専務、部長、そして女性の対応として、花崎が(おもむ)いた。


「お待たせして申し訳ない。私はこの商会の代表で、沢田 智紀と言います」


「同じく、代表代行の清水 明久です」


「同じく、花崎 千鶴です」


「セシル・サダラ-クです。父からここの噂は聞いております。宜しくお願い致します」


「クオン・ハ-モニックです。同じく父上からお話は聞いてます」


「メルエンダ・エルモンドですわ。セシルさんと一緒に働きたくて来ましたのよ」


「ソラ-リ・ルコモンドです。よろしくお願いします」


「サダム・クランケです。よろしくお願いします」


「セラフィア・アルメリアです。ふふふ。何だか楽しいですね」


 公爵のご子息と令嬢、侯爵の令嬢、辺境伯の令嬢、そして子爵のご子息。極めつけに王女様だ。この国の貴族の大半が来ている中、まさかの王女様まで......。対応に困っていると、慌てた様子でライアン男爵がやって来たんだ。


「セラフィア様! これはどう言う事なのでしょうか?」


「あら! グランベルク卿。私も皆さんと一緒が良いのです♪」


「お戯れを。国王様もご存じでは無いのでしょう? 何かあれば私も......」


 王女はとても楽しそうだが、何かあれば男爵の首が飛ぶ事になる。信頼雑貨の面々もどう反応して良いか困っていた。そこに執事の様な格好の男性と侍女と思われる女性が入って来た。


「王女様。こちらに居られましたか。勝手に動かれては困ります」


「そうですよ! どれだけ探したか。クリステラ様が大変お怒りです!」


「だってお城は飽きたの。それにみんな居るのに」


 話を聞けばクリステラ王妃もグランベルクに来ているらしい。後程、男爵夫人と来訪されるようだ。


「おほん。とりあえず王女様の話は後で行うとして、自己紹介も終わったので社内を見学してもらいましょうか」


 沢田専務が空気を変える為にそう言った。一同も興味があるのか? 反対する者は居なかった。先ず向かったのは食堂。少し早い時間だったので、人もまばらだった。


 グぅ――― 


 何とも可愛らしい音を響かせたのは王女様だった。


「は、恥ずかしい。いい匂いがしたので......」


 微笑ましい姿に皆が暖かい視線で王女を見守る中、空気を読まない岩さんが言った。


「何だ? 腹減ってるなら皆で食べて行きなよ。今なら直ぐに出せる」


「こら岩本君。こちらは王女様だぞ」 「全くこの男は」


 専務と部長が頭を抱えていた。とてもレアな光景に、花崎も驚いていた。


「良いんですの? やった-!」


 あまりに可愛らしい叫びに、執事や侍女でさえ笑っていた。仕方なく全員が席に着くと、岩さんと食堂の従業員が本日のランチを運んでくる。今日のメニューは、『特製オムライス』だった。上にかかった甘い餡が絶妙にマッチした、この食堂の人気メニューだ。漂う匂いに待ちきれない王女様だが、流石にいきなり食べさせる訳にはいかない。必死に侍女と執事が止めに入ったのだが、またしても空気の読めない男が居た。


「何だ? 温かいうちに食べないと、旨さが半減だぜ! さぁ食いな!」


「はい! きゃあ! おいひぃ♪」


「あっ! セラフィア様! いけません!」 「何と言う事だ!」


 まぁ毒など入っていないのだが、王族としてこれはダメなんだ。侍女と執事の顔が悲惨な事になっていた。美味しそうに食べる王女を見て、待ちきれなくなった他の面子も口に運ぶ。


「何これ! 美味しい!」 「どれ? 何だこれは!」 「とても美味しいですわ」


「ま、まぁうちの食堂は安心です。執事殿と侍女殿のお気持ちも分かるが、とりあえず頂きましょう」


 沢田は苦笑いをしながらそう言い、皆も食べ始めた。勿論、執事と侍女の分もある。同じ席で食べる事を戸惑っていたが、この場は仕方なく食べていた。食事も終わり順番に案内していたのだが、受付から伝言が入った。どうやら王妃と男爵夫人が到着したようだ。ライアン男爵、執事、侍女の顔がホッとした物に変わる。しかしこの後、意外な方向に話が進む事になるとは、一同思いもしなかったんだ。

お騒がせな王女様。まだ15歳だけあって可愛らしいが......


果たしてどうなるのやら。

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