王都へ向かう速水と国からのお願い 前編
速水君王都へ
レールが繋がった事で、王都へ向かう事にした。蓮見さんには以前から相談していたので、日程の調整は直ぐに着いたんだ。
「何かうらやましいなぁ。トロッコで行くんやろ?」
「ああ。この世界で列車に乗る気分だ」
「速水は乗り物酔いせえへんから、恨めしいわ」
「恨めしいってなんだよ(笑)。座席も用意してくれるらしい」
「将来的には人も運ぶんやなぁ。がんばれよ? 実験君」
「実験君とか言うな! 俺もそんな気してるんだからさ」
そう。この試みは実験も兼ねているんだ。資材は運べても人間となるとまた違うからさ。
「じゃあ、工場へ行って来るよ」
「ん、がんばってなぁ-」
田村と別れた後、工場へ向かった。蓮見さんから注意事項を聞く為だ。
◇◇◇
工場にて~
「お疲れ様です! 出発準備出来ました」
「来たか。なら付いて来い」
そう言って案内された先に、トロッコがあった。運転する部分の後ろに箱型の入れ物が付いていた。
「見てわかると思うが、お前が乗るのはここだ。念の為、シ-トベルトも付けてある」
「4人乗りですか。なんかジェットコースターみたいですね」
「その通り、あれを参考にした。屋根は空気抵抗のテストがまだだから、今回は雨具も持っていけ」
「天気どうなんですかね? 合羽は持って来てます」
「多分、大丈夫だろ。雲の動きも雨は降りそうにない」
その後、運転手となる職人を紹介され、出発準備は整った。さて行きますか!
最初はやっぱり慣れて無くて怖かったんだが、直線の旅は風も気持ちよかった。風景は農地を進んで行くので、2時間程経ったら飽きて来たけど。思ったほど揺れは感じなかったが、レ-ルの接合部では少し揺れた。シ-トにクッションがあるから、お尻も大丈夫だったのが嬉しい。
「速水さん! そろそろフィリップスに着きますよ!」
「乗っているとわかりませんね! 分かりました!」
今日宿泊する街、フィリップスに到着だ。前回、2日かけてきた街もトロッコなら1日だ。しかも楽だった。乗ってる間の暇つぶしを考えないといけないな。そんな事を考えながら駅を降りた。時刻は夕刻。
「身体がバッキバキですよ。動かないと固まりますね」
「ははは。我々は漕いでるんでいい運動です。では明日の朝に」
「はい。よろしくお願いします!」
この日は街の宿屋に宿泊。流通が増えた事で、街にも活気が出て来てるようだ。今日は時間がないから、帰りにここの組合支部は寄るつもりだ。
翌朝、駅で職人に声を掛け出発。フィリップスから王都までも豊かな農地を通過する。昨日暇だったので本を持って来たんだが、風で読めたものでは無かった(汗)。仕方なく風景を楽しみながらの旅は、この日もあっという間に過ぎた。王都の駅が見えてきたが、他の駅に比べて大きい。
「速水さん! お疲れさまでした! 間もなく到着です!」
「わかりました! 降りる準備します!」
風の影響で大声で会話しているんだ。距離は近いが普通に喋ってたら聞こえないんだよ。駅を降りると高い外壁に囲まれた道が出来ていた。この道を進めば王都に入れるようだ。駅から資材を運ぶ列と一緒にしばらく進むと門があり、衛兵が待っていた。
「お疲れ様です。これが身分証です」
「商会の......。失礼しました! すぐにお通しします!」
ん? なんか衛兵さんの対応が変わったぞ? 不思議に思っていたら、役人さんが来た。
「信頼雑貨の方ですね。どうぞこちらへお願いします!」
「は、はい。えっと......」
「宰相様からお見えになったら案内するようにと」
「え? 宰相様ですか?」
俺は訳も分からず着いて行った。そこで馬車に乗せられたんだが、見えて来たのは王城だ。何だろう? 嫌な予感がするんだけど? 俺の予感は的中した。馬車はそのまま城の門を潜る。
「到着成されました!」 「わかった! すぐに連絡する!」
馬車を降りるとすぐに案内の方が来た。その人に連れられ城内の一室へ。そこで待っていると宰相様がやって来たんだ。
「すまんな。突然で驚かれたであろう」
「はい。お顔は存じ上げておりましたが、速水 慎一と申します」
「ブラウン・スチュワ-トだ。知っていると思うが、この国で宰相をしておる」
この後、ここに呼ばれた訳を聞くんだが、その内容に少し驚いた。
「早速だが、ここに呼んだ理由を説明しよう。君達の力でこの国は今、変革を迎えている。今後も発展して行く事は疑いようない。そこで何だが、君達にお願いしたい事がある。それは......」
宰相からのお願いは、この国に学校を開いてくれないか? と言う話だった。国の歴史などは主に貴族の子息、令嬢が国立の学校に通っている。しかしその反面、一般市民の教養は全く進んでいない。そこで多様な知識を持つ、我が信頼雑貨に白羽の矢が立った。
「そうですか。しかし学校となると直ぐには出来ませんね。こちらも人に教えるという事に慣れておりません」
「うむ。その辺りについては、今後話をして行こう。予算についてもこちらで出す」
「細かい話は後々お話させて頂くとして、国が教育機関に求める物は何なのでしょう?」
「先ずは読み書き。字を書けない民衆も多い。いざ教えるとなっても、貴族の反感があるのだ」
未だ貴族の選民意識が高く、一般市民に投資する事に反感があるらしい。それなら商会に依頼する事で、貴族の反感を逸らそうと言う考えのようだ。
「私、個人的には宰相様の意見に賛成です。これはご提案なのですが、それならファリス教のお力を貸して頂いては如何でしょうか?」
「ファリス教か......それは考えたのだがな。今のこの国では......」
この国ではファリス教の影響力が大きい。国の重鎮でさえ気を使う相手なんだ。この後も宰相との話は続く―――
王都での話が長くなったので前後編になりました。新たな登場人物はこの話の後になります。
次話予告不発ですみません(汗) 思ったより中身のある話になりそうです。




