来訪者はお嬢様?!
新展開には新たな人物?
中村さんと一緒に会社に帰ると、1Fの受付が何やら騒がしい。気になって見に行ってみると、女の子1名と男の子が2名居た。
「ですから、今確認をさせて頂いております」
「ちゃんとここに紹介状もあるんですの!」
「はい。そちらは読ませて頂きました。ですが此方としましても、確認は行わないと」
受付では経理部の笹田さんという女性が、対応に当たっていた。
「どうしたんですか?」
「ああ、速水君。こちらの方がうちで働きたいと言っててね」
「あ! あなたは見た事が御座いますわ! 私はロンダ-ク・アリストの次女のフランソワですの!」
「え? アリスト伯爵の娘さんですか?」
「そうでございますわ! 貴方からもこちらの方に、言って差し上げて下さいな!」
落ち着いて話を聞いてみると、女の子はアリスト伯爵の娘で、1人はレオナルド男爵の3男、もう1人はゼットバ-グ子爵の次男だった。
「君達の事はわかった。落ち着いて話が聞きたいから、中に入ってくれないか?」
俺はとりあえず会議室に案内する事にし、その間に専務と部長に言伝を頼んだんだ。女の子もいるので、中村さんも同席してもらう。とにかく話を聞かないとね。
◇◇◇
会議室~
「もうすぐ代表者が来るから、座って待っていて欲しい」
「わかりましたわ。お話が出来る人がいて助かりましたの」
「よかったぁ。今からじゃ帰れないし」
「本当だな。家には帰れないしな」
何となく理由は分かっていたが、専務と部長が居ないとね。勝手に物事は決められないし。5分程して、沢田専務と清水部長が入って来た。
「お待たせしましたかな。私は信頼雑貨株式会社の代表、沢田 智紀です」
「同じく、代表代行の清水 明久です」
「それでは私も。中村 静香と申します」「速水 慎一です」
「私は、フランソワ・アリストですの」
「僕は、ロイド・レオナルドです」
「俺は、レビン・ゼットバ-グです」
とりあえず挨拶を交わし、紹介状を見ながら話を進めた。
「この内容からすると、うちで働きたいとありますが」
「そうですの。私達は家を継ぐ事はありませんので、ここの噂を聞いて父にお願いしたんですのよ」
「「同じくです」」
「成程、そう言う事ですか。ではお伺いしますが、何か得意分野など御座いますか?」
代表して沢田専務が3人に質問した。まだ学生と言っても良い年齢に見えるしね。
「私たち3人は、王都の学院の同級生ですのよ。学院も卒業しましたし、人並み以上の学力もありますわ」
という事は、就職活動で間違いないな。まぁ薄々分かってたけど。
「そうですか。私共も懇意にしております皆様のご両親からの推薦なら、雇う事は問題ありません」
その言葉に安堵した表情の3人。さっき1Fで見た時は、かなり必死だったしね。
「1つ聞きたいのですが、宿泊などは何処に?」
「私達、何も持たずに王都から来たんですの。ですので宿もとって無いんですのよ」
「......そ、そうですか。それ程急いで来られたのですね。しかし......」
ああ、これは押しかけパタ-ンだな。しかし泊まると言っても貴族の家みたいな部屋も無いぞ?
「ちょっと良いでしょうか? 荷物なんかはどうされるのでしょう?」
「それは後からここに届きますの。私達は家の馬車で先に参りましたのよ」
中村さんは呆れた顔で聞いたんだが、その答えに頭を抱えた。
「悪い。改まった会話は得意じゃないから、はっきり言うよ。泊まる場所は何とか用意できる。でもこの場所は会社、君達の知識で言うと商会なんだ。だから君達の荷物を置く場所は用意できないよ」
「速水さん。それは本当ですの! 困りますわ! 全て必要な物ですのに」
「うん。それは分かる。でも事前に連絡を貰えれば、こちらも色々手立てはあったんだ。これから働くと言うのなら、こちらの事も考えて欲しい」
俺は、はっきりと言わないと分からないと思ったんだ。貴族の子だからと、特別扱いはしてはいけない。
「とりあえず、送って来るものは仕方ない。量にもよるけど保管しよう。でも一度、御父上にも相談させてもらうよ」
「わ、わかりましたわ。私も何も考えなかったものね」
シュンとなる3人に、中村さんが優しく声を掛ける。
「速水君も貴方たちを困らせようと言ったんじゃないの。働く上で報告と連絡、そして相談は大事な事なのよ」
「「「はい」」」
いきなりの訪問だったが、彼ら3人を雇う事になった。貴族として育てられた3人には、まず常識を教え無いといけない。それとこの調子なら、今後も増える可能性も出て来た。
「とにかく3人は寝る場所を確保しよう。速水君、悪いけど蓮見君を呼んでくれないか?」
「わかりました。ロイド君とレビン君を案内した後、呼んできます」
フランソワは中村さんに任せ、ロイドとレビンは男子エリアに案内した。田村に2人の相手を任せて、工場へ向かう。
「すみません! 蓮見課長居られますか?」
「ん? 速水か。何か用か?」
ここで現状を報告し、会議室へ戻る。話を聞きながら蓮見さんも苦い顔をしていたよ。
「悪いな蓮見君。ちょっと相談があってな」
「大まかな事は、速水から聞きました。それで相談とは?」
「今回の事で話を聞いた貴族達の子息が、大勢来ると思うんだよ」
「確かにそうなってもおかしくないですねぇ」
「そこで何だが、いっそ宿舎を作ってはどうか? と思ってな」
「そうですか。職人も増えて来たんで、俺としても賛成です。工場の周りにまだスぺ-スはかなり有りますからね」
専務の話に蓮見さん含め、俺と清水部長も頷いた。予算の問題もあるから、大塚係長にも相談が必要だ。
結果的に大塚係長からも許可が出て、宿舎の建設は決まった。完成までに貴族としての考え方を改めて貰わないときっと揉めるだろう。ああ、頭が痛い問題だ。
やって来ました貴族の子息。彼らはどの様な社員になりますやら......。
次話はやっぱりこうなる。




