街には更に変化が訪れる
新章『アルメリア王国の発展編』スタ-トです!
レール工事が始まって、そろそろ1ヶ月が過ぎようとしていた。既にシルバの街にはトロッコが走り出して、工事の資材の他に商会の商品なども運ばれている。
「いやぁ、早いもんやなぁ。工事が始まったら、あっちゅう間に繋がったがな」
「水道工事である程度の慣れも出来たんじゃないか?」
「職人の勉強意欲を見習わなあかんなぁ。ほんまに」
「田村、それお前が言ったらダメなやつな」
「なんでやねん! 俺かて勉強しとるわ!」
「お前の勉強って、女性服とか化粧品だろ? 公私混同だよ」
田村はオ-プンした『J-Style』の商品を、他の街に販売すべくセ-ルスト-クを磨いていた。営業自体は俺が管理組合を通じて行っているのだが、今の調子なら他の街に出店するのも近いんだ。それ程勢いが出て来たのは、社員一同驚いていた。何でも王女を筆頭に、公爵夫人らと噂を流してくれているらしい。
「それで速水は今日はシルバへ行くんやったか?」
「ああ。シルバに組合の支部が出来たから挨拶にな。午後からのバスに乗るつもりだ」
「そうかぁ。ほんなら1号店でも見に行っとくわな」
「そうなのか? 俺はてっきり『J-Style』だと思ってたんだが」
「あそこは女性の城やから、俺が行ったら浮きまくりなんや。残念やけど」
「まぁ、頑張れよ。じゃあそろそろバス停に行くよ」
「もうそんな時間かいな! あかん安田さんに怒られるわ!」
田村は急いで1号店へ向かって行った。俺も中村さんに会いたいんだが、彼女は今、ジルバに居るんだよ。今日は向こうの商会に、ナタリ-さんと出向いてるんだ。なんでも衣料品の買い付けがあるんだとか。俺も会えたらいいんだけど、そう都合よく行かないよなぁ。歩きながらそんな事を考えていると、バス停に到着した。
「あれ? 速水さんじゃないか!」
「ん? パルマさん! どうしたんですか?」
「今日はジルバの商会へ用事がありまして。先程、管理組合にも顔を出したんですよ」
「そうなんですか。俺も朝は居たんですけど、同僚と話し込んでしまって......」
それからもバスで色々と話をした。管理組合を通して情報を取ったパルマさんは、方々へ駆けまわっている様だ。俺もそろそろ王都にも顔を出さないといけないな。レ-ル自体は後数日で王都まで繋がるようだし、その時にトロッコに乗せてもらえないかな?
「そう言えば速水さん。街に酒場が出来るらしいじゃないですか」
「耳が早いですね。街灯を設置したんで、通りが明るくなったんですよ。そこで夜に開く店を募集したんです」
「ほう、それで何件かの店が出店するんですか?」
「ええ。娯楽の無い街ですからね。男爵の許可も貰ってどうせなら複数の店を出そうと」
「成程! 良い事をお聞きしました。この話はまだオフレコですか?」
「いえ、間もなくですので、流してもらって良いですよ」
「わかりました! しかしグランベルクは綺麗になりましたねぇ」
「道路を舗装したらゴミも少なくなりました。ゴミ箱も街中に設置したんですよ」
「ゴミ箱ですか。それで街が清潔な印象なんですね」
グランブルクの街は本当に綺麗になった。最初はうちの社員がボランティアでゴミ拾いをしていたんだが、それを見た住民が一緒に活動してくれたんだ。街に清潔を保つ意識が生まれたんだよね。
「おっとお話していたら間もなく着きますね」
「本当だ。パルマさんありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそ有益な情報が聞けました」
ジルバに着いたので、パルマさんとはお別れした。俺は草薙さんに挨拶をしに向かったのだが......。
「おーい! 草薙さぁ-ん!」
「ん? なんだ速水じゃないか。何かあったのか?」
「いえ、今日は組合の仕事で。工事は順調なんですか?」
「工事そのものは間もなく完了だ。後はここにも公衆便所が欲しいと言われててな」
「ああ、グランベルクの街を見たんでしょうね」
「そうらしい。スコット準男爵が自ら頼みに来たんだよ。マスクや石鹸なんかも欲しいらしいぞ」
「男爵と友人ですもんね。それなら組合に連絡が入ってるかも知れませんね」
「入ってたら後宜しくな。俺も一度街に帰りたい」
「もう1ヶ月近くですもんね。早く帰れるように祈っておきます」
「おう! じゃぁ頑張れよ!」
草薙さんも饒舌だったな。きっと疲れも溜まってるんだろう。草薙さんと別れ管理組合支部へ向かった。グランベルクが清潔になったので、ちょっと土煙で喉が痛い。
◇◇◇
アルメリア流通管理組合ジルバ支部~
「こんにちは。本部の速水です!」
「お疲れ様です。わざわざすみません」
こう挨拶をくれたのは、マギ-さん。行商人の1人だ。ジルバは元々マギ-さんが拠点にしていたので、そのまま職員になって貰った。
「どうですか? 何かいい話ありました?」
「ええ。スコット準男爵から発注をもらっています。うがい用のコップとマスク。それと歯ブラシ等の生活用品に、化粧品なんかも夫人が欲しいようです」
「これはこれは。ではその分はこちらで手配させて貰いますね」
「化粧品の方は、中村さん? でしたか、女性の方にお願いしましたよ」
「え? 中村さんがここに来たんですか?」
「ええ。ナタリ-さんとジェシカ夫人と共に参られましたよ」
あちゃ~。入れ違いかぁ。残念だが仕方ないな。あっちも仕事だから。
「そ、そうですか。なら生活用品は手配しておきます。後は......」
この街の情報も色々と仕入れたが、下水工事が終わってからだな。マギ-さんと話が終わった後、新しくできた駅を見て時間を潰した。帰りのバスに乗る為にバス停へ向かったら、居ました!
「中村さん! お疲れ様です!」
「あら! 速水君! こっちに来てたのね」
「ええ。たまたま組合の支部に用事がありまして」
帰りのバスで久しぶりにお喋りできた。あ-この時間が止まってくれたら良いのに! なんて願いも空しく、あっという間に街に戻った。残念だがこればかりは仕方ないっす。
少し気落ちして会社に帰ったんだが、何やら騒がしかった......。
グランベルクの影響が隣町に広がって行く。その過程はゆっくりでも変化していくのだろう。
さて会社の騒ぎとは? 次話をお楽しみに!




