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生憎の雨なんだが......

雨に秘策あり?

 スコ-ルの街を出て、クランケの街に向かって暫く走っていた。すると何か雲行きが怪しい。そこで蓮見課長が、ライアン男爵に声を掛けたんだ。


「ライアン男爵! このままだと雨が降りますので、ちょっと馬車を止めて下さい!」


「蓮見君。止めてどうするんだ? 特に雨など珍しくも無いだろう?」


「いえ、この辺りの街道は土質的に()()()()になりやすいので」


「そう言えば、何度か馬車の車輪が嵌った事はあるが......」


 蓮見課長は馬車後部の荷物入れから、棘の様な物が付いた物を取り出した。成程、あれか。

 そう。皆ご存じのタイヤチェ-ン。男爵の馬車はタイヤじゃ無いけどね。手早くジャッキで車輪を上げて、チェ-ンを装着する蓮見課長。初めから想定していた様で、その動作に迷いは無い。


「なんと! こう言う事も想定の上か! ますます素晴らしいな! 君達は」


「車体の足回りを鉄にしているのは、この為でも有るんです。木のままですと、重みで折れる事もございますので」


 雨が降る前に、足回りを整えた。それと同時に、護衛の方に合羽(かっぱ)も配った。雨で体力を奪われると、緊急時に支障があっても困る。そして再度出発してすぐ、雨は降りだした。雨の勢いは強くないが、継続して降っている。そして予想通り、街道にぬかるみが出来ていた。ある程度は避けながら進んでいたが、どうしても通らねばならない場所もあった。


「先に私達の馬車を通過させよう」


 蓮見課長はそう言って、御者に声を掛けた。万が一を考えたようだった。心配はしたが、男爵の馬車も嵌まる事無く通過で来たよ。それからクランケの街まで気を抜かない様に走った。長く降り続いた雨だったが、クランケの街が見えた頃に止んだ。


「まるで狙ったかのように止むんやなぁ」


「雨ってそんなもんだろ? それにしても田村ってさぁ、乗り物弱いんじゃ無かった?」


「よくぞ聞いてくれた! これを見よ!」


「......ただの酔い止めかよ! 何かあるのかと思って損した」


「まぁ。これでも無かったらヤバいんや。真面目にやで?」


「はいはい。そろそろ街に着くから、降りる準備しておこうか」


 クランケの街では、男爵は子爵邸に。俺達は宿泊施設に泊まるんだ。国からの保護を約束されてから、宿屋には止まらない様に言われている。街の中では衛兵による警備も付けてくれるんだよ。到着した街は、王都に比べても遜色ない程大きな街だった。


「クランケ卿、お久しぶりです」


「グランベルク卿も久しいな。今日はゆっくり話を聞かせてくれたまえ」


「はい。私の話で宜しければ」


 我々も挨拶を済ませた後、宿泊施設に向かった。夕食までに少し時間があったので、男爵に許可を頂いて街の散策に出た。街を歩いて感じたんだが、確かに人は多く行き交っている。でも何故だろうか? 住民達の顔は、俺達が初めて見たグランベルクの住民に似ていた。これは後で聞いたのだが、クランケ子爵の評判は悪かった。度重なる重税がこの街に住む人々を、疲れさせていたんだ。この国の税金の金額は、治めている貴族が決める。勿論、その中から国にも治めているのだが、農作物の収穫が少なくても常に同じ税。商売人も売り上げが少なくても、支払う税額は同じなんだと。住民は本当に搾取されるだけで、楽しいはずが無いんだ。




◇◇◇



 翌朝、クランケの街を出発し初めての休憩時、男爵から教えてもらった。


「あまり私も言いたくないのだがね、クランケの街は今のままではダメだ」


「男爵である貴方が、口に出す程ですものね。ですが外野の言う事なんか、聞いてもらえないでしょうね」


「私も気になって、クラ-ク伯爵に何とかならないか? 聞いたことがあるんだよ」


「そこで伯爵様はどう言われたのですか?」


「今の国の税の治め方では、どうしようもないんだ。だから君達に期待していると」


「え? 私達にですか? 何か出来る事があるんでしょうか?」


「私はね、君達という存在を信じているんだ。既に私は、私の愛する街は、救われているしな」


「ありがとうございます。そのお言葉は嬉しいです。何かを変える事は難しいですが......」


「君達は何も考えず、いつも通りにしてくれ。それでもこの国は変わって行くよ」


 男爵の言葉の意味は、この時あまり分かっていなかった。たかが一商会で何が出来るかわからないが、変化を生む事は出来るはず。今はこれまで通り進むだけだ。


 次の街までの道中は平和そのもので、天候が乱れる事も無かった。そして夕刻前には街が見えて来た。


「クランケからは順調だったわね」


「そうね。静香なんかグッスリ寝ていたんじゃない?」


「千鶴だって額に跡が残ってるわよ?」


「え?! 嘘? どこどこ?」 「なんて冗談だよ-だ!」


「ちょっと速水君! 静香が私に意地悪するよ-」 「なんで速水君に言うのよ!」


「......何て答えたら良いのか分かりません」 「お前も苦労しそうやな」


 そんな会話もあったが、次の街ゼットバ-グへ到着した。その名の通りゼットバ-グ子爵の治める街だ。そんな俺達はここで思わぬ再会をする事になる......。

流石に税に対しての対策は、俺達には無理だ。出来る事ってなんだろう?


次話はしばらくぶりのあの方が......。

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― 新着の感想 ―
[一言] 駆動輪以外にチェーンは巻いても効果はあまりないですよ。 この場合は、どちらかと言うとマイナスです。
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