いざメルボンヌの街へ!!
出発で-す!
馬車が完成し男爵に報告を入れた所、こちらの予定に合わせて出発日を決めると言われた。1号店の方も開店セ-ルも終わり、人の入りも落ち着いてきた。今回メルボンヌの街へ行くメンバ-は、沢田専務、蓮見課長、速水、中村、田村、花崎。そして行商人のパルマさんとそのお仲間。うちのメンバ-の選出は、各部署の管理者が決めた。俺や中村さんが行くのは、『他国との商売が出来るなら営業して来い』と高橋課長からお言葉があった為だ。販売部は1号店の開店で人手を取られているので、田村が代表で。総務部は衣類チ-ムと絵本を描くのに忙しいようで欠席。経理部からは花崎さん。パルマさん達には、向こうの商会との橋渡しをお願いしたんだ。顔がきく人が居たら心強いからさ。
「それにしても、代わり映えせえへん人選やなぁ」
「慣れたメンバ-の方が楽だろ?」
「速水はええやん。中村さんも花崎さんもおるし」
「倉木さん、忙しそうだからなぁ。今回は仕方ないだろ?」
「あんまりイチャイチャすんなよ?」
「しないって! 俺はパルマさんと打ち合わせとかあるんだよ!」
「速水君、田村君。おはよう!」
「速水君、おはよう」
「中村さん、花崎さん。おはようございます」 「おはようさんです」
「二人とも朝から楽しそうね。何かあったの?」
「いえ、今回のメルボンヌ行の話をちょっと」
「出発は明後日だよね。それまでに準備しとかないと」
「あら静香、何の準備かしらねぇ」 「ちょっと千鶴! 何か棘があるわね?」
「うふふ。何でもありませ-ん♪」 「何なのよ、もう!」
出発までに仕事の引継ぎなど、色々しておかないといけない。それ以外は着替えぐらいだから、男連中は楽なんだけどね。朝、皆とそんな話をした後、俺はパルマさんが泊っている宿へ向かった。出発前の打ち合わせの為だ。
◇◇◇
「パルマさん、忙しいところすみません」
「速水さん、大丈夫ですよ。私も同行者と打ち合わせは大事ですから」
「それでメルボンヌの街に、お知り合いがおられるとか?」
「そうなんですよ。古い知り合いがあちらで商売しているんでね」
「そうですか。うちが持っていく商品は、この一覧何ですが......」
見本として持っていく商品の一覧を見せながら、あっちで受け入れられやすいアイテムを選別していった。土地に合った物も必要になるので、知っている人に聞きたかったんだ。
そうして出発日までは、慌ただしく過ぎて行った。
◇◇◇
とうとう迎えた出発の朝、皆に見送りを受けながら馬車に向かったんんだが......。
「なぁ、速水。なんでこうなったんやろ?」
「うーん。仕方ないいじゃないか? こだわり?」
俺達の目の前の馬車に、何とタイヤが付いていたんだ。蓮見課長と来栖さんが、笑顔で握手している。沢田専務まで嬉しそうにしているので、2人は知っていたんだろう。来栖さん曰く、道悪でも関係なく走れるように餞別らしい。どんどん趣味に走ってる気がするが、乗る身としては安全だしね。そして人数に合わせて馬車のシ-トも新たに3列シ-トが入っていた。もう完全に車だよ......。
「では出発しようか。皆、後の事頼んだ」
「「「行ってらっしゃい! 気を付けて!」」」
街の外門で男爵と合流し、メルボンヌの街へ出発した。俺達の馬車を見たライアン男爵は、驚きを通り越して呆れていたよ。その気持ちわかります。約7日の日程だが、今回も野営の予定は無い。通常よりは進む速さも段違いだが、馬の負担も考えて無理のない日程を組んであるんだ。初めて乗った馬車は、街道を苦にする事も無く進む。そしてその日の夕刻に、スコ-ルの街へ到着した。ここはサルネッティ男爵の治める街。ライアン男爵と学友だった人だそうだ。サルネッティ男爵には大歓迎を受け、宿泊場所も用意して貰った。
◇◇◇
「やあライアン。久しぶりだね」
「ああ。エリオットも元気そうだな」
「それで? そちらの方々が噂の『幸運の君』かい?」
「そうだ。紹介するよ」
そこでライアン男爵から紹介を受けた。王都の学院時代から仲良くしていただけあって、2人は似ている印象を受けた。サルネッティ男爵は、派閥的にはエルモンド侯爵派だ。それでもそんな事は関係なく、友人関係は続いて行ったらしい。そんな話を聞きながら、1日目の夜は楽しく過ぎて行った。田村が酔っぱらって寝てしまうといった小さなトラブルはあったが、皆楽しく過ごしたようだ。田村に朝起きたら絶対文句言ってやる! 寝処まで運んだのは、俺なんだからな......。
◇◇◇
翌朝、サルネッティ男爵に見送られながら出発。帰りも是非寄って欲しいと言われていたよ。俺達の事も気に入ったようだ。
「田村! 昨日は気持ち良さそうだったなぁ?」
「速水、いい加減機嫌直してや。悪かったて」
「その気持ちがあるなら、飲みすぎるなよ?」
「わかったで。今日は気ぃつけるさかい!」
「田村君は、飲むの禁止ね!」
「本当だよ。酒癖悪いと女性に嫌われるよ?」
「中村さんも花崎さんも勘弁してえな。何も覚えてませんのや」
「田村、それ余計に質が悪いぞ」
「くっ......そない言われても」
「あはは。でも専務や蓮見課長の目もあるんだから」
「そうそう。顔に泥を塗ってしまうわよ」
「わ、わっかりましたぁ-」
田村は俺達に言われて、しょんぼりしていたよ。いい薬になれば良いんだけど。お酒で失敗って誰でもあるけどさ。ハメを外すタイミングは見極めないとね。特にお客様の前では。きっとサルネッティ男爵も、これからお付き合いがあるはずだからさ。帰りに立ち寄った時に、街の商業ギルドを紹介して貰えるようにお願いしてあるんだよ。そんな話をしながらも馬車は進んで行く。前回と違って皆穏やかだ。襲撃を受ける可能性が低いからね。 今日向かっているのは、クランケと言う街。クランケ子爵の治める街なのだが、その大きさはグランベルクの2倍ほどあるらしい。時間があれば、どんな物が売っているか見てみたいもんだな。
1日目はあっという間だった。馬車の乗り心地も最高だった。次はどんな街なんだろうね?




