表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/200

女心はわかりません!

まだ帰路は続く

 フィリップスの街を出てシルバの街へ向かう。前はこの間で襲撃にあった事もあり、皆の緊張も高鳴っていた。護衛の方達も周囲に目を配り何かあればすぐに動ける体制を取っていた。


「なぁ、速水。どうしてこう馬の背ってお尻痛いんやろうか?」


「ああ、それな。俺もまだ慣れないよ。正直痛い」


 それを聞いていた俺を乗せてくれている護衛の女性、セリカさんが笑いながら言った。


「それなら、何かお尻の下に入れましょうか? 少しはましになりますよ?」


「え、ええ。すみません。馬に乗る機会なんて無かったものですから......」


 少し恥ずかしい気持ちになったが、痔にでもなったら嫌なのでお言葉に甘えた。田村も早速、入れていたが。バランスが悪くなったので、護衛の方の腰に手を回す力が強くなったが、これは仕方ないんだよ?



◇◇◇


 それを見た千鶴は、静香に告げ口する。腹が立ったようだ。


「ちょっと、あれ見なさいよ。速水君、ちょと密着しすぎじゃない?」


「あれ? 本当だ。ちょっとショックだわ」


「あれは、きっと怖いんじゃないですか?」


「うーん。速水君がねぇ......」


 そんな事を言われているとは知らない俺は、バランスを崩さない様に必死だった。行きは歩きだったので、悪路を進む馬の背がこんなに揺れるとは思ってなかったんだ。酔う事は無かったが、気を抜いたら落ちそうなんだよ。田村は青い顔をしている。元々、乗り物に弱いようでお尻の痛さで何とか保っているが、気を抜いたら間違いなく酔うだろう。そんな俺を見かねたセリカさんが、馬の乗り方の練習を提案してきた。


「一度、前に乗ってみませんか? 私が後ろから補助しますから。慣れるのも早いかもしれませんよ?」


「そうですね。では、休憩する時に一度代わってもらいます」


 道中、何度か短い休憩をするので、そのタイミングで前に乗る事にした。初めての乗馬は、楽しかった。乗せてもらっている時は解らなかったが、呼吸を合わす必要があるんだな。無理には言う事を聞いてくれない。とは言っても操縦してるつもりなんだが、実は後ろのセリカさんが操ってるんだけども。




◇◇◇



 それを見た女性陣は、完全に怒っていた。外から見ていたらイチャイチャしている様にしか見えない。


「何よあれ! だらしない顔しちゃってさぁ」


「ほんとだよ! あんなにくっついて!」


「まぁまぁ、二人とも落ち着いてください。あれは馬の乗り方を教わってるんですよ」


「でも、まんざらでも無いんじゃない? 顔がにやけてるよ」


 怒る千鶴、静香。冷静な愛。そして煽る美樹。若干1名楽しんでいる様だ。


「シルバに着いたらとっちめてやらないと!」


「そうだわ。ちょっとあれはダメ!」


「ええ......。速水君、ご愁傷様」


「そうだ! そうだ! 1人だけずるいぞぉ-!」


 そんな事になっているとは、思ってもいない速水。それどころでは無い田村。何処に火種があるかわからない。



◇◇◇



 緊張した道程も前回の失敗で、様子を見ているのか? 何事も無くジルバの街へ入った。この街はスコット準男爵が治めているので、街に入った段階で護衛がついてくれた。宿泊場所も用意して頂いたので、今日はゆっくり休めるはずだ。


「おい、田村。大丈夫なのか? 気分悪そうだが」


「う、うぇ。だ、大丈夫や。けど今日は、早めに休むわな。気持ち悪いねん」


「そうか。酔い止めとか持ってくるべきだったな。また何処かへ行く時は、常備しないと」


 そんな会話の後、食事に向かったんだが......。


「ちょっと良いかしら?」「速水君! ちょっとこっちに」


「あ-あ。し-らない」 「な-む-」


 両腕をを中村さんと花崎さんに組まれて、連行される様に引っ張って行かれる俺。倉木さんは頭を抱え、安田さんは楽しそうに着いて来る。何だ? 俺何かしたんだろうか? そのまま席に着いたんだが。


「で? 何か言う事無いの?」


「そうよ。何なのかしら? 昼間のあれは」


「速水君。正直に言った方が良いですよ」


「素直にゲロった方が、良いよ♪」


「え、ええ......。 ちょっと何を言われてるのか分からないんですが......」


「しらばっくれてもダメよ!」


「そうだよ! どういう関係なの?」


「いや、速水君、分かってないですよ?」


「くくく。もっとやれ-」


 この後、尋問の様な時間が過ぎていった。色々聞いていくうちに昼間の件は、馬の乗り方の練習であって護衛の方との関係も何も無い事を必死に説明したんだ。誤解だという事を延々と説明して、渋々理解してもらったようなんだけど。どうしてこうなった! なんで怒られてるのか分からないままお説教を受けました。中村さんの怒ってる顔も綺麗だなと思いながら乗り切りました。それにしても、花崎さんの怒ってる姿も初めて見たよ。怒らせてはいけないと、心のメモ帳に書き込んでおいた。一応食事も済ませたが、食べた気がしなかったよ。グランベルクまで後1日。もうすぐ帰れます。


女性は怒らせてはいけないんだ! ようやくグランベルクまで到着間際。

短いようで長い旅路でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ