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雑文ラノベ「王立魔法学校高等部の優等生」  作者: ぽっち先生/監修俺
出会い編
9/52

転移魔法は不思議がいっぱい

さて、ダンジョンの外には出たんだけど、そこはダンジョン内と同じくらい暗かった。そう、つまり夜だったんだね。まぁ、そうだよな。僕がウエストキャナルのダンジョンに潜ったのも午後の遅い時間だったし。あれから10時間は経っているはずだ。なら外が夜でもおかしくない。


「さて、どうするかな。このまま家に戻っても着くのは夜明けになってしまう。それなら今日は野宿して明日の朝、明るくなってから行動した方がいいかも知れない。」

「賛成ーっ!もう6時間も歩きっぱなしなのよ。ロベルトを見張りにして私たちはとっとと寝たいでーす。」

ジャックの提案に忽ちローザが喰い付く。


「そうね、ダンジョン内に比べたら危険は低いけど夜道を歩きたくはないわ。ロベルトよろしくねぇ。」

「おっ、おう・・、任せろ?」

う~んっ、頼られているねロベルト。まぁ、僕は優しいから決してうまく使われているなんて思わないよ。


「はははっ、では2時間交代としよう。初めは俺とロベルトがやるよ。次はレオンと・・、レイチェルいけるか?」

「はい、大丈夫です。」

ふ~ん、まぁこのパーティって男は3人しかいないから交代で不寝番をするとなると女の子も当然担当する事になるのか。でも、ここは一応立候補するべきだろう。


「あの・・、僕も見張ります。」

「えーっ、あなたさっきまでぼーっとしていたじゃん。慣れないダンジョンで疲れたんでしょう?無理は駄目よ。そもそも、意地だけで見張りなんかして、居眠りなんかされたら迷惑だわ。」

「きっ、きついすね、ローザさん。でも最初ならまだ気を張れますから大丈夫ですよ。」

僕の言葉にみんなはジャックの方を見る。まぁ、確かにちょっと前に会ったばかりのやつに見張りは任せたくないよな。


「そうか、ならお願いするか。ロベルト、君は休め。そしてレオンの次を担当してくれ。相方はローザでいいな?」

「えっ、しょ、しょうがないわねぇ!いいわ、私が面倒をみてあげるわっ!」

ローザはロベルトとの突然の密着イベント発生に照れ隠しなのか上からの物言いだ。うんっ、気になって眠れなくならなきゃいいけど。


「アルベールも俺と喋っていれば眠気も飛ぶだろう。ダンジョン内では色々あって聞きそびれたからな。見張りのついでに話して貰おう。」

「あっ、はい。そうですね。」

う~んっ、さすがはリーダーだ。ちゃんと考えているんだな。僕も色々聞きたい事があるし、この組み合わせは丁度良かったよ。


「ふぁーっ、そうと決まれば俺たちは先に休ませて貰う。なんだかんだ言って、結構きつかったからな。おやすみ、リーダー。頼むぜ、アルベール。」

「はい、おやすみなさい、レオンさん。」

レオンは大きく伸びをしながら僕の肩をぽんと叩いた。


「じゃあね、アルベール。居眠りしちゃ駄目よ。」

「はい、レイチェルさん。がんばります。」


「ろ、ロベルトは私とペアを組むんだから、と、隣で寝なさいっ!」

「あっ?まぁ、どこでもいいけど。」


「ねぇ、あっちの砂地で休みましょうよ。ここいら辺はちょっと岩があって嫌だわ。」

「ロゼッタはそうゆうとこ、神経質だよな。まっ、どこでもいいからさっさと寝よう。」


「あんたと違ってロゼッタは繊細なのよ。何たってストローン家のお嬢さまなんだから。」

「お転婆という言葉が抜けているぜ、ローザ。」


「レオン、明日の朝ごはん、あなたは無しです。」

「えーっ、冗談だってば、うんっ、ロゼッタは可憐な深窓の令嬢だよ。ドレスは泥んこだけど。」


「一言多いわ。」

「あははははっ。」

ロゼッタの返しにみんなが笑い出す。そして僕とジャックを残して、楽しげにお喋りをしながらちょっと離れた砂地へと離れていった。そんな姿を見ながら僕は隣に立つジャックに話しかけた。


「みなさん、仲がいいんですね。」

「ああ、仲間だからな。もっともパーティを組む以上、それくらいの仲でないとやっていけないし。」

ジャックは周りに結界を張りながら答えてくれた。無詠唱か・・、こいつどんだけすごいんだ?もしかして2級の上位なんだろうか。


「パーティですか・・、確かに色々話は耳にしますね。その場限りの事情で組むと、結構いざこざが起こるとか。見込み違いで役に立たない人は、あっさりパーティを追放されたりするらしいですね。」

「俺たち学生はそうでもないけど、大人たちのパーティではままある事らしい。まぁ、それだけ危険な事をやっているんだろう。パーティ内の不仲は命に関わる事だからな。」

結界を張り終えたジャックは今度は火を焚き始める。これもまた魔法で行なった。枯れ枝などは使わずに魔力だけで火を発生させている。まぁ、これくらいなら僕にも出来るけどね。魔法で発生させた火は、残り火の始末をしなくていいから安全なんだ。魔力は消費するけど、ここはダンジョンの入り口である。幾らでも補充できるしな。


「話は変わりますけど、その制服って魔法学校の制服ですか?」

「んっ、ああ、王立イーストリバー魔法学校の実習服だよ。」

うはっ、でたよ。王立イーストリバー魔法学校だって!名門中の名門じゃんっ!


「えーと、高等部?」

「ああ、俺たちは魔法学科の2年生だ。あっ、ロベルトとレオンは剣術学科だけどな。」

おっと、先輩でしたか。丁寧語で喋っておいて良かったぜ。


「今回は実習だったんですか?指導教員も付かずに?」

「いや、今回のダンジョン探索は週末を利用した仲間内の腕試しだったんだ。ローザがちょっと別のグループといざこざを起こしてね。なんやかんやとなってこのダンジョンで優劣を競うことになったんだ。」

ふ~ん腕試しねぇ、名門とは言っても学生たちのやっている事は大して変わらないんだな。あれ?でも今、週末って言ったか?僕がウエストキャナルのダンジョンに入ったのって月曜日だぞ?今は日付が変わっただろうけど火曜日だよな?


「あのぉ、今日って何日ですか?」

「えっ?7月7日だけど。」

7月7日?あれ?日曜日?なんで?日にちが合わないじゃんっ!


「どうしたんだ?何か用事でもあったのか?」

日付が合わずに混乱している僕をみて、ジャックが心配してくる。いや、用事は確かにあったけどそれ以前に5日ほど日付が合わないよ。何?実は僕って転移魔法で跳んだ後、5日も寝てたの?


「あの・・、僕がウエストキャナルのダンジョンに入ったのって7月2日の火曜日だったはずなんですけど・・。」

「1週間前?それはまた随分潜っていたな。ちゃんと魔力防御はしていたのか?」

「はい、それはちゃんと・・。でも問題はそこじゃなくて、僕が転移魔法陣を踏んだのって、ダンジョンに潜った当日なんです。」

「火曜日?それはまた心細かっただろう。Aクラスダンジョンに1週間近くひとりぼっちとは・・、うん、がんばったな。」

ジャックは僕が混乱している内容とは別の事で慰めてくれた。うん、そうだね。ちゃんと説明していない僕が悪いよな。


「いえ、僕の記憶ではここに跳んですぐにあなたたちの戦闘を見たはずなんです。つまり僕の感覚では今日は7月3日の水曜日のはずなんですけど・・。」

僕の説明にジャックは首を傾げる。漸く、お互いの話が噛み合っていない事に気付いたようだ。


「跳んだ際の衝撃で気を失っていて、記憶が混乱しているんじゃないのか?」

「いえ、そんな感じはありませんでした。記憶は繋がっています。」

「そうか、となると・・。」

ジャックは上の星空を見ながら考え始めた。そして結論に達したのか、僕に説明してくれる。


「これは推測だが、転移魔法は瞬間移動ではない。この事は実験で検証されている。ただ10キロ、100キロ程度の距離でもその時差は数秒だったはずだ。でも君は千キロ近くを跳んだからな。もしかしたらその距離が原因なのかも知れない。」

「距離ですか・・。でも100キロでも数秒なんですよね?いくら千キロでも5日は有り得ないんじゃないですか?」

「どうかなぁ、千キロと言えば検証した事例すらないはずだからなぁ。」

うん、そうだね。もしも今回の転移が魔法学会辺りで認められたなら、僕は転移距離のタイトルホルダーになれるかも知れない。


「つまり、僕の時間感覚では繋がっていても、外部的には転移に5日掛かっていたと?」

「そう考えると辻褄が合うんじゃないか?」

「はぁ・・、確かに。」

「転移に関しては方法は確立しているけど、動作原理は解明されていないからな。今回の事はあまり喋らない方が良いかも知れない。教授たちに知れたらモルモットにされかねんぞ。」

げげげっ、確かに跳んだのは僕だけど、跳ばしたのは魔法陣だよ。調べる方向が違うだろう!


しかし5日か・・。はははっ、こりゃ確実に工房はクビだね。まぁ、クビは構わないんだけど学校や孤児院に迷惑がかかるなぁ。あの親方の事だ、ある事ない事難癖付けて絶対金を要求してくるはずだ。これは早く帰って対決するしかないな。


「はぁ・・っ。」

僕はウエストキャナルに戻った後の親方との悶着を考えると気が重くなった。そんな僕をジャックが気遣ってくれる。

「何だ?悩み事か?あっ、向こうのご両親の事か?う~んっ、君の言う事が本当なら確かに5日間もダンジョン内で行方不明だからな。これは相当心配しているなぁ。」

うんっ、ジャック。普通はそっちを先に心配するよね。でも僕には両親がいないんだ。孤児院のシスターたちは心配してくれるかもしれないけど、どちらかと言うと親方の理不尽な請求の方が問題になっているはずだよ。


「いえ、心配は無用です。僕は孤児ですから。ただ僕の工房の親方はちょっと駄目な人でして、人使いが荒いというか、金に汚いと言うか、僕がいなくなった事で学校と孤児院に文句を言っているはずなんです。それを考えると対応するのが嫌だなぁと思って・・。」

僕の言葉にジャックは少し顔をしかめる。でも孤児=不幸って訳でもないから。両親がいても虐待を受けているやつだっているしな。


確かに近頃は大きな戦争も飢饉もないから孤児の絶対数は少ない。でも都会なんかは地方から職を求めてやって来た者が、病や事故にあって行き倒れる事なんか結構ある。そんな理由で親を亡くした子供たちは大抵道連れだ。そうゆう意味では孤児院に拾われた僕は幸せ者かも知れない。それに師弟関係のいざこざなんてどこにでも転がっているからね。僕の親方だけが特別酷いと言うものでもない。・・いや、それでもあそこまで人を使い潰そうとするやつはそんなにいないか?


「ああっ、それは失礼した。でもその親方に関しては、ウエストキャナルの魔法ギルドが対応しないのかい?中卒に限らず事業主の無茶な要求はギルドの指導、制裁対象だろう?」

僕の心配事が肉親ではなく、親方の事だと察して、ジャックは一般的な対処方法を言ってくる。でもね、ジャック。一般的って言うのは大多数と言う事だけど、それには常にイレギュラーというものが含まれるんだよ。そして、僕の工房はそのイレギュラーなんだ。


「僕の勤めている工房って僕と親方しかいないんで魔法ギルドには加入していないんですよね。」

「ああっ、ひとり親方か。んーっ、それは困ったな。」

僕の説明にジャックは納得したようだ。でもジャック。君が悩む事はないんだよ。これは僕の事情なんだから。


「ひとり親方の管轄は行政だ。もっとも彼らへの指導や対応は魔法ギルドが行政から下請けして行なっているけどね。うん、まぁその件に関しては明日対応しよう。大丈夫さ、これでも俺は結構そっち方面に太いパイプを持っているんだ。だから安心してくれ。上手く調停してあげるよ。」

「調停?リーダーが?何で?」

突然のジャックの言葉に僕は疑問符ばかりが口をつく。だってジャックって高校2年生なんだろう?何でそんなやつが、そんな大口を叩けるんだ?


「それは明日になってからのお楽しみとしておこう。それより君が踏んだという魔法陣の話をしてくれ。結構特殊なやつだったのかい?」

「あっ、えーと。そうですね、特殊と言えば特殊かなぁ。」

何やら話をはぐらかされた感はあったが、僕はウエストキャナルのダンジョンでの出来事をジャックに話した。


「う~んっ、そんな狭い場所で魔法陣が展開出来るものなのかなぁ。」

「魔法陣自体は何重にも折り重なって描かれていました。もっともチラっと見ただけですので僕の勘違いかも知れませんけど。」

「折り重なりか・・、もしかしてサークリスト理論を応用した魔力の集中作用を使っているのかも知れない。でもあれって球形形状でしか、発動しないはずなんだけどな。」

うんっ、さすがは王立魔法学校高等部だね。推測とは言え理詰めで考えるんだな。でもサークリスト理論ってなんだ?

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