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雑文ラノベ「王立魔法学校高等部の優等生」  作者: ぽっち先生/監修俺
王立魔法学校 魔剣総戦編
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ユリウスの屋敷にて

「アルベール・・、大丈夫ですか?」

馬車がユリウスの屋敷に到着すると、シスター・デイトナは御者席でひっくり返っているアルベールを見て静かに声を掛けた。普通の人なら、そんな状況の近親者を見たら驚いて慌てるのだろうが、シスター・デイトナにとっては別段慌てる必要もない出来事なのだろう。これは状況に無頓着なのではなく、状況を正確に見切って慌てる必要がないと判断した上での対応なのかも知れない。


「う~んっ、なんか凄い衝撃を受けた気がするんですけど・・。」

頭を振りながらアルベールは御者が施してくれた転落防止用のベルトを外した。そんなアルベールにシスター・デイトナが声を掛ける。


「あなた、まだ馬が怖いのですか?全く昔、後先考えずに思い付きで行動した報いです。さぁ、着いたそうですよ。降りなさい。」

「あっ、はい。でも、あの衝撃は馬とは違う原因の気がするんですけど・・。」

アルベールはシスター・デイトナの言葉に少し反論しつつも素直に馬車を降りた。そしてユリウスの屋敷を見て口をぽかんと開けた。


「えっ?ここがユリウスの屋敷?なんだよ、普通の一軒家じゃないか。もうっ、屋敷なんて言うからまたどでかいやつを想像しちゃったよ。」

アルベールはそう言うが、それでも目の前にある家は普通の家の倍は部屋数がありそうな立派な家であった。しかも、広くはないが植栽に囲まれた庭もある。そして玄関には執事らきし男とふたりのメイドが出迎えの為立っていた。


「はははっ、普通ですまんな。期待に応えられなかったか?まっ、それでも俺一人が住むには広すぎるのだがな。さぁ、入ってくれ。ゲハルトっ!今日は客人が泊まる。部屋を用意してくれ!」

「かしこまりました。3名様二部屋でよろしいですか?」

ユリウスにゲハルトと呼ばれた執事らしき男はアルベールたちの人数とその関係を推測し用意する部屋数を聞いてくる。その問い掛けを受け、ユリウスはシスター・デイトナに聞き直した。


「シスターたちは相部屋でよろしいですか?それともお一人づつの方が?まぁ、どちらでも部屋は用意できますが。」

「あっ、ありがとうございます。相部屋で結構ですわ。」

ユリウスの問い掛けにシスター・デイトナが答える。だが、その返事をメイファンが打ち消した。


「ユリウスっ!お姉さまは私の部屋に泊まっていただきますっ!ゲハルトっ!大至急私の部屋のベッドをダブルベッドに変えなさいっ!」

そんなメイファンの命令に、ゲハルトはどうしますか?と目線でユリウスに問い掛ける。


「メイファン、急な話で今日は男手がいないんだ。あまり無茶を言わないでくれ。どうしてもと言うなら、お前が大部屋に移れ。そっちの方が全然楽だからな。」

ユリウスはメイファンの無茶振りに妥協案を提示する。多分大部屋にはダブルベッドが備わっているのだろう。なのでシスター・デイトナとメイファンがそちらに泊まれば、ダブルベッドの移動などと言う大仕事をしなくても済む事になる。だが。メイファンは強気だった。


「男手など本宅から呼び寄せなさいっ!この家の主であるあなたが使用人に忖度してどうするのですかっ!」

メイファンの言葉にユリウスはやれやれといった感じで提案を取り消し、ダブルベッドを移動するようゲハルトに命令し直そうとした。だが、その言葉をシスター・デイトナが打ち消す。


「メイファン、駄々を言っては駄目です。ベッドがあるのなら私たちがそちらに移れば良いではないですか。」

「はいっ!お姉さま!判りました!ゲハルト!ではシーツは一番いいやつに取替えなさい!あっ、お風呂には香油を準備してっ!」

シスター・デイトナの一言であっさり手の平を返したメイファンを見て、そこに居たユリウス家の人たちはふたりの関係を瞬く間に把握した。つまりメイファンが何か無茶を言ってきたとしても、シスター・デイトナに相談すれば忽ち問題は解決すると理解したのである。


「かしこまりました。それでは夕食の時間まで居間にておくつろぎ下さい。お荷物はお部屋の方へお持ちいたします。」

メイファンが折れた事により、ゲハルトは通常の客への対応へと移行した。そして数分後には居間にてお茶を飲むシスター・デイトナたちの姿があった。


「さて、宜しければメイファンとシスター・デイトナの関係を教えて頂きたいのだが。」

居間のソファに腰掛け、みなでお茶を飲みながらシスターたちが王都に来た理由などを聞いていたユリウスだが、頃合を見計らって一番の関心事であるふたりの関係を聞いてきた。だが、それをシスター・デイトナに寄りかかって甘えていたメイファンが遮る。


「ユリウス!それはあなたに関係のない事です。」

そんなメイファンの言葉にユリウスは顔をしかめるが、シスター・デイトナが直ぐに嗜める。


「メイファン、そんな事を言うものではありません。」

「はい!お姉さまっ!」

シスター・デイトナの言葉に忽ち手の平を返すメイファン。そんな彼女の態度にユリウスたちはまたもや面喰らう。

「ごめんなさいね、ミスターハーウェイ。この子は昔からちょっと我侭なところがあるのです。でもちゃんと言い聞かせますからあまり叱らないで下さいね。」

メイファンの態度に困惑しているシリウスの表情を読み取りシスター・デイトナが謝った。だが、当の本人はシスター・デイトナに甘えるのに忙しいのか聞こえていないようである。


「いえ、まぁ慣れていますから気にしないで下さい。後、出来れば私の事もユリウスとお呼び下さい。」

「そうですか?でも・・。」

ユリウスからの提案にシスター・デイトナは少し躊躇する。なんと言ってもユリウスはこの国で内務大臣を務めているグラディウス・ハーウェイの孫であるとシスター・デイトナは聞いたのだ。なので身分的にも社会的にも、ここは一般常識として敬称を付けて呼ぶのが当然の事であった。

ましてやシスター・デイトナとユリウスはつい先ほど初めて会ったばかりである。それにユリウスはメイファンの雇い主だ。そんな関係を考えると、常識人であるシスター・デイトナにとってはユリウスを敬称なしで呼ぶのに抵抗があるのは当然だろう。だがそんなシスター・デイトナの躊躇いをメイファンが打ち消す。


「お姉さま、どうかユリウスのお願いを聞いてあげて下さい。彼はまだ若年ではありますが自分の立ち位置を理解しています。と言うか彼の年頃特有の独立心が家柄という色眼鏡を拒否しているのです。なので可哀想と思ってユリウスのちっぽけな自尊心を満足させて下さい。」

「メイファンっ、てめぇーっ!」

メイファンのなんともな説明に思わずユリウスは言葉を荒げる。だが、そこに怒りの感情は無い。まぁ、これもまたふたりにとってはいつものやり取りなのだろう。だが、そんなふたりの気をおかない関係を知らないシスター・デイトナは、自分の躊躇いがふたりの間を険悪なものにしているのではないかと勘違いし、ユリウスの申し出を受ける事で事態を収めようとした。


「メイファン、言葉がすぎますよ。ですがそのような理由があるのでしたら私たちもユリウスさんと呼ばせて頂きます。」

「あっ、はい。そうして頂けると気が楽になります。それで先ほどの質問なんですが・・。」

「ああ、私とメイファンの関係ですね。ん~っ、そうですね、私とメイファンが初めて会ったのはいつ頃だったかしら・・。」

「お姉さまっ!8年前ですっ!私とお姉さまが始めて出会ったのはサウスバレーでの反乱鎮圧戦です!」

「ああっ、そうでしたね。ふふふっ、懐かしいですね、あれからもう8年も経ったのですか・・。」

そう言うとシスター・デイトナは寄りかかるメイファンの頭を優しく抱きしめながら、昔を思い出すように宙を見つめメイファンとの出会いを話し始めた。

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