これが社交界だっ!
さて、今僕がいる場所はジャックグループのテーブルなのに、何故かユリウスチームのメイファンが話の中心に居座っています。そして僕はその横で愛玩動物役、及び話のネタとして何故かメイファンに弄られています。隙を見て離れようとしても、いつも必ずメイファンの指が僕の襟首を掴んで引き戻します。いや、ちょっとメイファンさん?僕は料理を取りに行くだけだから。別に逃げようだなんて思っていませんよ?えっ、料理は使用人に持ってこさせろ?はぁ、そうなんですか・・。うんっ、さすがは社交界。セルフサービスじゃないんですね。
「アルベール、ここはユリウスのテオトリーなんだからうろちょろしていると襲われちゃうわよ。でも私の横にいればユリウスもあなたに手は出せない。だからそこに居なさい。はい、お座り。」
わんっ!尻尾ぱたぱた・・。くっ、思わず本当に座りそうになったよ。情けない・・。
そんな感じで僕がメイファンのペットを強制的に演じていると、当主であるグラディウス・ハーウェイの挨拶が終わった事により、パーティーに集まった人たちもそれぞれの目的に沿って動き出した。そんな中、ひとりのご老人がジャックたちに近づいてくる。うん、歳はとっていても割腹のいいじいさんだ。多分、いつも上手いもんをたらふく食べているんだろうな。その癖、健康にも気を使っているから不摂生でころりともいかないんだろう。う~んっ、なんとも燃費の悪そうなすごい生き方だね。もしかしてフードロスの親玉なのか?
「やぁ、ジャック君。魔剣総戦の勝利、おめでとう。私は残念ながら観戦出来なかったんだが話は聞いているよ。いや~、あのユリウス君からギブアップを取るとは大したものだ。さすがは大魔法使いアルティナの直系だな。お母上もさぞお喜びだろう。」
「はい、恐れ入ります。まぁなんとか勝てました。とは言っても、過分に運が良かった勝利でしたけどね。」
「ほほうっ、これまた控えめだな。しかしグラディウスも気にしていないようだから良しとしたまえ。でも相手に華を持たせるのは人付き合いの妙だ。まっ、そこら辺は追々お母上から教わりなさい。」
「はい、ご助言ありがとうございます。」
「それでは今夜は楽しみたまえ。もう少ししたらわしら歳よりは奥に下がるから。」
「はい、ありがとうございます。カルバニア卿もおくつろぎ下さい。」
「はははっ、わしはもう歳だからな。昔のように夜通し飲み明かすのはもう無理だ。全く若い君たちが羨ましいな。では、残りの学校生活を楽しみたまえ。君はやがてアルティナ系を背負う人材だ。今の内に楽しんでおかないと卒業したら遊ぶ暇がないぞ。」
「はははっ、それはどうも。でも、私の家にも何人かの逸材はおりますので、私などが表に出る事などはないでしょう。」
「そうか?まぁ、それならそれでアルティナ系は安泰だな。うむっ、お母上によろしく言っておいてくれ。わしもこう見えて忙しくてな。中々出向けん。全く、近頃の若造は役に立たなくてな。わしが出てやらねば何にも決められんときている。」
「それだけ卿がみなから頼られていると言う事でしょう。ですがその方々も卿の背中を見て学んでいるはずです。それまでは大変でしょうが頑張って頂かねば。」
「はははっ、口が上手いなジャック。だが、そんな風に切り返せるのなら大丈夫か。うむっ、君には期待しているからな。」
ジャックにカルバニア卿と言われたご老人はそう言うとテーブルを離れて行った。それに伴い、多分護衛とおもしき物腰の重い人たちもさりげなくその場を離れた。成程、あのじいさんはそうゆう人物なのか。でも、そんな人物にも物怖じせずに話せるなんてジャックも大したものだねぇ。まっ、ジャックはアルティナ系の直系だからな。あれくらいは日常なのか。
しかしなんだね。なんか僕って今、上流社会の一角を垣間見たんじゃないの?これってあれでしょ?腹の探り合いってやつ。直接的な言葉でなく、思いっきり遠回りに相手へ意図を伝えたり、または相手の考えを探る手立て。はははっ、まさか目の前でこんなやり取りを聞くとは思わなかったよ。今度、孤児院の子供たちに話してやろうかな。いや、子供たちにはつまらない話か?メイファンのどエス話の方とどっちを喜ぶだろうか?
そんな事を考えながらも、僕は一応あのじいさんの事をジャックに聞く事にした。万が一、後々にまた会うかもしれないからね。いや、そんな事はないか?でも一応名前くらいは知っておいても損はないだろう。
「ジャックさん、あの人って誰だったんです?なんとも上からの物言いでしたけど・・。」
「えっ?ああ、そうだな。まぁ、あのじいさんの立場ならあんなもんだろう。あのじいさんはグラディウス・ハーウェイの従兄弟で、現ハーウェイ一族の総元締め。今は引退しているが元太政大臣のモルガン・カルバニアだよ。」
あーっ、やっぱり。まぁ、ここはユリウスの家のゲストハウスだからね。そっちの血縁者か。でも、元太政大臣か・・。あはっ、全然知りません。大体僕らくらいの年齢で大臣の名前を覚えているやつなんかいないって。
その後も、大層な肩書きを持っている人たちがジャックに挨拶に来た。その内の何人かはやんわりと僕の事をジャックに聞いている。ジャックはそんな人たちに差当たりのない情報を渡して彼らが直接僕へアクセスするチャンスを潰してくれた。うんっ、ありがとうジャック。今の僕には海千山千な彼らと渡り合う技量はないからね。ジャックは僕の前に立ち塞がって守ってくれているんだなぁ。くーっ、さすがはリーダーだ。頼もしい限りです。
「ふぅっ、大体挨拶は済んだか?いやはや、大人気だったな、アルベール。」
僕の事を探りに来た人々への対応がひと段落したのか、ジャックがグラスの中身を飲み干しながら僕をからかって来た。
「はぁ、そうですか?」
「ああ、でも今回はみなそれ程突っ込んでこなかったよ。いつもならちょっと無礼と思えるほどがつがつと情報を求めてくるんだけどな。やっぱり、メイファンが後ろに居ると彼らもビビるんだろう。」
「へっ?メイファン?」
僕はジャックの言葉に後ろを振り向く。そこにはロベルトたちと剣術話をしているメイファンがいた。でも、別に僕の事を気に掛けている様子はないんだけど?
「なんだ、気付かなかったのか?ちょっと踏み込んで君の事を探りにきたやつに対してはメイファンの『気』がぶち当たっていたんだぜ?いやはや、本当にメイファンは誰に対しても容赦がないな。」
えっ、そうなの?メイファンったらここにいる人たちにまであの『殺気』をぶちかましたの?あらら、それは可哀想だろう。絶対みんなちびったはずだよ。
でもまぁ、それもメイファンなりの僕への庇護なんだろう。力ずくではあるけどなんとも優しい加護である。そうかぁ、これがチカラを持っている者の守り方なんだな。僕もいずれはそんな事が出来るようになるだろうか?いや、ならなきゃ駄目だよね。だってそれが大人になるって事だろうから。
さて、そうなると僕は一応メイファンにお礼を言うべきだろう。でも、そこは慎重にしなければならない。メイファンは僕に判らないように僕を守ってくれたんだ。だから、下手にお礼なんか言ったらやぶ蛇になりかねない。良かれと思って言ったはいいが、相手がそれを望んでいない場合気まずくなるかも知れないからね。まぁ、メイファンは照れたりしないだろうけど、逆に僕への玩具対応が増す危険がある。そう、いつ如何なるときでもメイファンは猛獣なのだ。気を抜いたら一巻の終わりなのである。
その時、壁際で控えていた楽団が静かに音楽を奏で始めた。はははっ、さすがはブルジョア主催のパーティーだ。当然のように楽団がいるよ。しかもフルオーケストラときたもんだ。
そんな音楽に合わせて会場のそこかしこでみんなが踊り出す。ほぉーっ、これが社交ダンスってやつですか。ウエストキャナルで秋の収穫祭なんかで催される踊りとはまた一味違うねぇ。
だけどそんなダンスを見とれていた僕に、なんとメイファンの方から話しかけてきたよ。
「あら、ダンスが始まったのね。それではアルベール・ドレステン、誘っていただけます?」
えーっ、何で僕を指名するんだよ、メイファンっ!はっ、まさか僕に恥をかかせるつもりだな?くっ、やっぱりメイファンは敵だったか!と言うかメイファンって踊れるの?あなた剣士だろう?剣士って剣一筋な脳筋馬鹿なんじゃないの?むーっ、困ったな。僕は馬鹿じゃないけどこんなこ洒落た踊りなんか踊れないよ。まさかここで盆踊りのステップは披露できないしなぁ。
だけど、僕がメイファンからダンスに誘われどうしようかと躊躇していると、何処で見ていたのかユリウス・ハーウェイがメイファンに注意をしてくれた。あれ、なんだ?ユリウスって結構いいやつなの?
「メイファン、あんまり彼をからかうんじゃない。ほら、ダンスなら僕が相手をしてやるからこっちに来い。」
「あら、ユリウス坊ちゃん。もしかして焼きもちですか?私が他の男と踊るのが嫌なの?しょうがないわねぇ、いつまでもお子ちゃまなんだから。でも、そんなあなたも可愛いから好きよ。」
「なっ、馬鹿な事を言ってないでこっちに来いっ!」
メイファンの言葉にユリウスは真っ赤になって言葉を荒げる。はははっ、大変だねユリウスも。でも、僕はもっと大変でした。だからとっとと連れて行って下さい。
「はいはい、それじゃアルベール。またね。」
「はぁ。」
またねって・・、次があるんですか・・。なんだかなぁ。
「ふふふっ、アルベールったらメイファンに気に入られちゃったのね。これはこの先、色々大変だなぁ。」
僕とメイファンのやり取りをちょっと離れた場所で見物していたレイチェルが、メイファンが離れるタイミングに合わせて寄って来て僕をからかった。
「レイチェルさん、怖い事言わないで下さい。」
そんなレイチェルの言葉に僕がげんなりしていると、ローザまでも僕を肴にからかい始めたよ。
「いーえ、レイチェル。ユリウスってなんやかんや言いながらもメイファンを手元から離さないらしいわ。多分あれは惚れているわね。つまりアルベールはユリウスにとっては恋敵。あはっ、ローレンツだけでなくユリウスからも邪魔にされちゃうとなると、アルベールの今後は暗雲立ち込めるものになっちゃうなぁ。あはははっ。」
「ローザさん。人事だと思って楽しんでいるでしょう?」
「でも、これでユリウスの目がジャックからアルベールに移ればグループ間のいざこざも少しは解消するんじゃないかしら?そう考えるとアルベールは責任重大ね。なんたってメイファン絡みとなれば誰も表立って動けないもの。すごいわ、アルベール。あなたは学校内の2大派閥の潤滑剤になったのよ。私たちが何度も試みて成し得なかった融和をあなたはやり遂げちゃったのね。」
「ロゼッタさんまで話を大げさに盛らないで下さい。」
「はははっ、まぁ、あれだよ。こうゆうのはなんて言うんだっけ?あーっ、雨降って地面びしゃびしゃ?」
「ロベルトさん、その例えは駄目なんじゃないですか?」
「いいのよ、アルベール。ロベルトはそれくらいでないとらしくないもん。」
「なっ、ローザ、てめぇ~。なんかトゲがあったぞ、今の言葉はっ!」
「馬鹿の癖してそうゆうのだけは敏感なのねっ!でも褒めてあげたのよっ!感謝しなさいっ!」
「どこが褒めているんだっ!」
「全部よっ!」
「はぁ~、また始まっちゃった。やっぱりこのふたりは駄目ねぇ。気持ちと言葉がかみ合っていないんだもの。」
レイチェルがロベルトとローザの言い合いにため息をついてます。ロゼッタに至っては、慣れたもので話相手をジャックとレオンに代えて、遠目からジャックたちの様子を伺っている参加者たちの事をあれこれ話し始めたよ。う~んっ、相手に聞こえないとは言え、ロゼッタの言葉は辛らつです。まっ、ロゼッタは旧シベリウス王家に繋がるやんごとなきお姫様だからね。何かにつけて近づいてくるああいった手合いにはうんざりしているのかも知れない。
でもまぁ、ロベルトとローザが夫婦漫才を始めてくれた事により、みんなの関心が僕から外れた。よって、僕は漸くじっくりと廻りを観察する余裕が出来たよ。あっ、あの女の子は初めてメイファンと会った時に鞄の修理代を渡してくれた子だ。んーっ、挨拶した方がいいんだろうか?でもジャックチームである僕と話なんかしたら向こうでの立場が気まずくなるかな?
おっ、ライアンとルーカスもいるな。ふぅ~ん、側にいるのはもしかして彼女か?くっ、彼女同伴とはいいご身分じゃないか。僕なんか一緒に来たのはメイファンだぞっ!なんなんだ、この差は・・。あっ、ラインハルトはぽっちだ。はははっ、なんか彼とは馬が合いそう。
あれ?あそこにいるのってローリーじゃないの?あっ、こっちを見た。ほら、手を振っているよ。ああっ、多分魔剣総戦の監理委員として招かれたんだな。だとすると周りにいるのが生徒自治会のメンバーか。どうしよう、挨拶に行ってもいいのかな。でも、ローリーはどちらのチームからも距離を保ちたいと言っていたからなぁ。だけど僕らはクラスメイトだし、挨拶くらいは普通だよねぇ。むむむっ、難しい問題かも知れない。
その後も、みんなは色々な事を話題にしては盛り上がっていた。でも何故か最後は僕とメイファンの話でオチを付けてくる。僕ってそんなに弄りやすいキャラなのかね?まぁ、僕はメンバーの中では新参者だしね。弄る話題には事欠かないのか。しかも話に絡めるのがあのメイファンだし・・。はははっ、本当に人の不幸は蜜の味なんだね。
そんな話題で盛り上がっている時、聞き覚えのある声が僕に話し掛けてきた。
「はははっ、ウエストキャナルから遠くはなれてひとりでいじけているかと思ったら、結構楽しくやっているようじゃないか、アルベール君。」
「えっ?あっ、ミハイルさんっ!来ていたんですか!」
そう、僕に話しかけてきたのは、国家安全対策省のミハイルさんだった。
「うむっ、ジャック君に呼ばれたよ。まぁ、君にも用事があったので丁度いいと思ってね。」
「僕に用事ですか?それって千キロジャンプの件で?」
「いや、シスター・ティアニアから言付けを頼まれていたんだ。君がどうしているかを見てきて欲しいとね。」
「院長先生からっ!」
ミハイルさんの口から院長先生の名が出て僕はちょっと嬉しくなる。あっ、そう言えば忙しくて手紙を出していなかったよ!失敗、しっぱい。心配させちゃったかなぁ。そうかぁ、院長先生は僕の事を気に掛けていてくれたのかぁ。はい、院長先生。僕はがんばっています。勉強なんかはまだ追いついていないけど、大丈夫っ!石に噛り付いても絶対追いついて見せますからっ!
そんな院長先生の名を聞いて僕がニコニコしているとミハイルが話を続けてくる。
「ああっ、そうだ。なんでも別件でシスターがこちらに出向く用事があるらしい。なのでそのついでに君の様子を見に来るそうだよ。あっ、すまんが来るのはシスター・ティアニアではない。シスター・デイトナとシスター・スカーレットだ。」
院長先生がこちらに来られるかもと聞いて喜んだ僕を、後でがっかりさせないようにミハイルは直ぐに打ち消してきた。いや、別にがっかりなんかしていませんよ?ただ、ちょっと・・、うんっ、しょんぼりしただけです。
「そ・・、そうですか。いや、別にがっかりなんかしていませんから・・。」
「そうか、まぁ長めの休暇が取れた時は相談してくれ。君の場合は千キロジャンプの当事者として国安の跳躍ポイントを使う許可が取り易い。まぁ、官品の私用使用は禁じられているが、君の場合は立場が特殊だからどうにでも説明できる。あっ、でも君は転移酔いするんだったなぁ。」
う~んっ、転移酔いか・・。あれさえなければ国安の跳躍ポイントの使用規定である3時間のインターバルで跳べば、馬車なら20日は掛かる距離をたった30時間でウエストキャナルまで帰る事ができる。しかもウエストキャナルにおける跳躍ポイントって孤児院の裏にある偽装された牧場だもんな。もう、僕の為に用意されたような跳躍ポイントだよ。まぁ、官品だから本来僕には利用できない施設なんだろうけどね。
しかし、行きと帰りで60時間。馬車に比べれば比較にならないほど速いけど、それでも移動だけで4日かかるのか。はははっ、故郷は遠くにありて思うものとはよく言ったものだ。千キロって気が遠くなるほど遠いよな。
そんな望郷の念に僕が浸っていると、会場の奥で何やら動きがあった。どうやらここのご当主さまが御退席するらしい。
「さて、それではわしら歳よりは別室に下がるとしよう。後は若いやつらで騒ぐがいい。あーっ、ユリウスたちとあまり親しくない者たちも一緒に来てくれ。この場は彼らに任せてわしらは向こうで寛ごう。今日はとても気分がいい。とっておきの酒を振舞わせてくれ。」
グラディウス・ハーウェイはそう言うと楽団に向けてパチンと指を鳴らした。その合図に楽団は今までの曲とはうって変わって賑やかなアップテンポの曲を奏で始める。
「おっ、漸くご老人たちが退室してくれたか。よしっ、みんな踊ろうぜっ!」
御当主の縁によりここに来た人々がぞろぞろと別室に向かう中、広くなった会場の中心でジャックがロゼッタを相手に踊り出す。それを見てメイファンも対抗してユリウスを引っ張り出して踊り始めた。それを合図にみんながそれぞれ曲に合わせて踊りだす。しかもユリウスは使用人たちにまで声を掛けたよ。
「ロバートっ!裏で待機している者たちも呼んで来いっ!うるさいじいさんたちが気を利かせてくれたんだ。今日は無礼講だ。朝まで騒ごうっ!」
ユリウスに声を掛けられた使用人頭のロバートは待ってましたとばかりに、控えていた使用人たちに合図を送る。すると合図を受けた者たちはそれぞれ奥に消え、その後裏方で働いていたと思われる使用人たちを連れて戻って来た。そしてそれぞれが曲に合わせて踊ったり、自分たちが作ったであろう料理を皿にとり食べ始めた。
へぇ~、ユリウスの家はこうゆう事をするのかぁ。ちょっとびっくりだね。まぁ、そう年中ある事ではないのだろうけど、屋敷に奉公している者たち全員と楽しみを共有するなんてやるじゃないか、ユリウス。あんた、ただのぼんぼんキャラじゃなかったんだな。
そんな中、ぽつんとひとりで立っていた僕に声を掛けてくれた女の子がいたよ。はい、クラスメイトのローリーです。
「はぁ~い、アルベール。本日はお招きくださりありがとうございます。それで、なんでしたら私と踊って頂けますか?」
「えっ、僕と?でも僕ってあんまり踊りは得意じゃないんだよなぁ。いや、盆踊りのステップなら割と上手だと思うんだけど。」
僕はそう言って夏祭りで踊るステップを披露する。それを見てローリーが大笑いだ。
「あははっ、上手よアルベール。どうせみんなも勝手に踊っているんだらか型なんか関係ないわ。えーと、なんて言ったかしら?踊る阿呆と見る阿呆?どちらも同じなら踊らなくちゃね!」
「よーしっ!ならば僕の必殺技、くるくるダンスをお見舞いするぞっ!」
僕はそう言うとローリーを高々と掲げて廻り出した。
「きぁーっ、アルベールっ!目が廻っちゃうわ!」
「はははっ、そりゃそうさ。これぞ酒を飲まなくても酔った気分になれる貧乏人の必殺技だ!ほりゃっ!」
掛け声一発、僕はローリーを天に向けて放り投げる。
「きゃーっ!」
突然放り投げられたローリーは悲鳴を挙げるが大丈夫っ!ちゃんと加減しているから。ほら、天女様のご帰還だ。
僕は降って来るローリーをキャッチして優しく床に戻す。まぁ、ぐるぐる廻った後なので二人とも千鳥足だけどね。
「あーっ、びっくりした。乱暴な踊りね、アルベール。」
「はははっ、ごめんごめん。」
でも何故かこの僕の踊りはみんなにウケてしまった。そこら中で、女の子が舞い上がり出します。おいおい、これは難しいんだぞ。見よう見真似でやると女の子を落としちゃうから気をつけろよ。
さて、派手なアクションで一躍場の主役となった僕だが、所詮は一発屋だった。曲が変わるとまた別の主役が中央に進み出てその華麗な踊りを披露する。おっ、ユリウスも中々やるじゃないか。ふゅ~、メイファン相手に動きで遅れをとっていないよ。しかも、すげー楽しそうに踊るんだね。いいなぁ、こうゆうのって。楽しく踊られるとこっちまでウキウキしてくるよ。
そして、使用人の人たちの中にも踊りの上手な人がいて、そんな人がユリウスたちに負けじと中央で踊りを披露する。それにつられて、少し僕たちに遠慮していた人たちもそれぞれ曲に合わせてステップを踏んだ。今や会場内は一大ダンス会場だ。楽団の人たちもグラス片手にノリノリで曲を演奏している。ちょと、ちょっとぉ、速過ぎるって!足が曲に付いていかないよっ!
「なんだ、アルベールだらしないぞ!ほらっ、こうゆうのは焼けた鉄板の上にいるのをイメージするんだ!」
ロベルトが曲に追いつけずにまごついている僕にアドバイスを送ってくる。でもロベルト、あなたその例えはどうなの?いや、的確なのかも知れないけど、それじゃまるで修行だよ。
こうしてジャックチームとユリウスチームの合同打ち上げパーティーは朝まで続いた。う~んっ、みんな体力があるなぁ。でも、日付が変わった今日って月曜日だよ?みんな学校はどうするんだろう。えっ、このまま着替えて直行?ぐわっ、すごいバイタリティだな。僕は絶対授業中に居眠りしちゃうよ。あーっ、苦いから普段は飲まないけど、今日はコーヒーのブラックをしこたま飲んでおこう・・。
-王立魔法学校 魔剣総戦編 完-
作者より えーと、冬の間に書き溜めていた分はここまでです。いえ、実際は44話までで、それ以降は連載が途切れないように超特急で書き上げました。はははっ、締め切りに追われる作家気分を味わってしまいましたよ・・。で、続きは9月の後半かなぁ。プロットは出来ているけど書く時間があるか怪しいです。夏場は色々大変なのよ。だから確実を期せは続きは来年かも知れません。でも果たして来年もこの投稿サイトにいるかは確信がもてないんだよねぇ。ですが続きを投稿できたとしたら次はホウキを使ったクラス対抗戦編となります。はい、あの有名な魔法少年のエピソードをパクリます。まぁ、内容は全然違うんですけどね。あの映画でのルールって全くわかんねぇよ!




