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雑文ラノベ「王立魔法学校高等部の優等生」  作者: ぽっち先生/監修俺
王立魔法学校 魔剣総戦編
41/52

ロベルトVSラインハルト

試合開始の音花火がぽんぽんぽんと上空で破裂し会場のみんなに魔剣総戦の開始を告げると、ロベルトは真っ直ぐに自分が対応する手筈になっていたユリウスチームの剣術学科3年ラインハルト目掛けて突進を開始した。他の選手たちもそれぞれの思惑に従い、それぞれ迅速に位置を変えていたが、そんな中でもロベルトの突撃は群を抜いて速かった。だがその動きはラインハルトに読まれていたのだろう。ラインハルトは驚く事もなくロベルトの第一撃を受け流した。


「相変わらずだな、ロベルト。そんなんだから猪武者と言われるんだぜ!ちったぁ、頭を使えやっ!」

「じゃっかしいっ!先手必勝!飼い葉官軍、天下無敵の無効傷だっ!」

「あーっ、立会い中悪いが指摘させて貰う。『飼い葉官軍』じゃなくて『勝てば官軍』だと思うぞ?後、『無効』の正確なスペルは『向こう』だ。」

「えっ、そうなの?おかしいなぁ、今まで誰もそんな事を言ってこなかったけど・・。」

「呆れてものが言えなかったんだろう。もしくは指摘される前にお前が倒してしまったんじゃないか?」

「あっ、そうゆう事かっ!はははっ、俺って実は凄かったのかっ!」

「自惚れるなよ、ロベルトっ!それは俺に勝ってからほざけやっ!」


ふたりの会話だけを並べると、まるで立ち話でもしているように思えてしまうが、実際にはふたりは十数回の斬撃をお互いに繰り出しあっていた。だが、そんな激しい斬り合いの中での会話とは思えない内容がふたりの間で交わされていた。しかし、そんな暢気な会話も激しくぶつかり合う剣の音に消されてふたり以外には届かない。傍から見た限りでは息もつかせぬ剣士同士の戦いが繰り広げられているようにしか見えなかったのである。


「おらおらおらっ!受けきって見せろや、ロベルトっ!」

「このっ!手数だけで俺に勝てると思うなよっ、ラインハルトっ!」

「そう言いながら防戦一方かっ!凌ぐだけじゃ俺には勝てないぜっ!」

「ぬかせっ!この程度、丁度いいウォーミングアップだっ!ほらほら、あんたこそ、剣速が落ちてきたんじゃないのかっ!」

「ふんっ、猪武者にはこの絶妙な剣の緩急によるタイミングのずれに付いて来れまい!これが本当の剣捌きっていうやつなのさっ!」

「けっ、そんなのは勝ってからほざきやがれっ!」

「最終的には俺が勝つから今言ってるんだよっ!」

「結果が出る前にそんな事を言うと、後で赤っ恥だぞっ!それとも、俺に勝つ見込みがないから今の内に言っておくのかっ!」

「言ってくれるじゃねぇか、ロベルトっ!その言葉、そっくり熨斗のしをつけて貴様に返すぜっ!」

「相手から貰ったモノを返すんじゃねぇ!あんたは礼儀ってもんを知らないのか!」

「碌でもないものを送り付けておいてほざくなっ!とっとと、ギブアップしやがれ!」

「誰がするかっ!」


ふたりの会話だけを並べると、まるで立ち話でもしている・・、いやこれはさっき説明したか。では仕切り直そう。

ふたりの対決は見た目には激しい立会いなのだが、何故かそこで交わされている会話はまるで遊んでいるように聞こえる。それはよく言えばヘビー級ボクサーが足元を固めてお互い一歩も引かずにパンチを繰り出しあっている凄まじい戦いのようにも見えるが、穿った見方をするなら、まる子供が手振りだけで相手目掛けて玩具の剣を振り回しているだけのチャンバラごっこのようでもあった。

だが、そんな激しく打ち合っていてもお互いの剣刃は一太刀も相手の防具にすら届いていない。ふたりとも相手の激烈な剣撃を全て完璧にいなしきっていた。相手が左から斬撃を送ればこれを剣で受け、その返す刀で渾身の突きを試みれば、相手は体位を変えて受け流し次の斬撃を送ってくる。そしてまたその斬撃を受けきり次の攻撃に移るを繰り返す。そんな一進一退の攻防が双方の間で続いている。そんな息もつかせぬ斬り合いに観客もまた固唾を呑んで見とれていた。


『おーっと、ロベルト選手とラインハルト選手。どちらも一歩も引かずに剣を交えています。はい、はっきり言って剣速が速すぎて何をどうしているのかが私には判りませんっ!ですが双方の間に飛び散る火花がその凄まじさを物語っています!すごいですねぇ、剣と剣がぶつかると火花が散るんですね!私、初めて見ました。おーっと、ここで両者初めて動きが止まったぁ!互いに剣で相手の剣を受け止め、次の動きを牽制しあっている模様です!しかし、5分近くに及ぶ斬り合いで双方かなりの体力を消耗しているのでしょう。双方激しく肩で息をしています!この小休止にも見える静寂は、体力の回復に努め、相手が先に動くのを待っているのかっ!』

「はあ、はぁ、やるじゃねぇか、ロベルト。ちったぁ上達したか?」

「はっ、はっ、当たり前だっ!こちとら常時戦場の気構えなんだっ!息をするのだって鍛錬なんだよっ!」

「はあ、はぁ、そんなんで強く慣れたら世話ないわっ!戯言をいうんじゃねぇっ!」

「はっ、はっ、剣の道は技量だけじゃねぇ!心の強さが最後は必要なんだっ!要は気構えよっ!」

「はあ、はぁ、ざけんなっ!そんなのは先に進むやつらに追いつけないやつの言い訳だっ!」

「はっ、はっ、そんな考えだからあんたは伸び悩んでいるんだよっ!剣の高みに昇る道はひとつじゃねぇっ!」

「はあ、はぁ、ああっ、だが王道ってやつがあるんだよっ!才能のあるやつはそこをとんとん拍子に駆け上がりやがるっ!全く生けすかねぇっ!」

「はっ、はっ、おうっ、全くだぜっ!初めて意見があったなっ!」

「はあ、はぁ、だからお前には絶対負けねぇっ!」

「はっ、はっ、俺だって、あんたには絶対に負けらんねぇんだよっ!」

「はあ、はぁ、・・。」

「はっ、はっ、・・。」

只でさえ呼吸が荒いのに口喧嘩などしていては呼吸を整えるのもままならない。しかし、当人たちにはそんな事も判らないようであった。さすがは剣士。頭に酸素がいかなくなってますます馬鹿になったらしい。


「はあ、はぁ、お前、さっきからはっは、はっは、うるせぇぞ!お前は犬かっ!」

「はっ、はっ、ほざけっ!あんただって同じだろうっ!後、何処の世界にこんなかっこいい犬がいるかってんだっ!」

「はあ、はぁ、いやウチの飼い犬はお前の何倍も凛々しいぞ?しかも素直で従順だ。」

「はっ、はっ、えっ、ラインハルトんち、犬がいるの?犬種はなに?シェバード?レトリバー?まさか、チワワじゃないだろうな?でも、今度見に行っていい?」

「はあ、はぁ、馬鹿やろうっ!貴族が飼う犬っていったらドーベルマンに決まっているだろうっ!」

「はっ、はっ、えっ、そうなのか?知らなかったぜっ!」

「はあ、はぁ、でもチワワもいるぞ。母上さまが飼っている。しかも2匹だ。」

「はっ、はっ、うわ~っ、触りてぇ~!」

「はあ、はぁ、誰が触らすかっ!あの犬は俺だって抱かせて貰えないんだぞ!母上様は俺が抱きしめると骨を折りかねんとと言って触らせてもくれないんだ。」

「はっ、はっ、くーっ、チワワってちっちぇからなぁ。でも見るだけならいいだろう?な、な!」

「はあ、はぁ、見るだけだからなっ!足元にも気をつけろよ。あいつらちょこまかと擦り寄ってくるから危ないんだ。」

「はっ、はっ、くぅ~っ、可愛い過ぎるぜ!すりすりしてぇ~っ!」


はい、最初は本当に子供の口喧嘩のようだったが、何故か途中からペット談議になってしまった・・。このふたり、試合中に何をやっているんだか・・。だが、ふたりの間では話がついたのだろう。次の瞬間、気合と共にふたりはそれぞれ後ろに飛びのき、剣を構え直した。そして再び相手に向かって突撃を開始する。

「はあ、はぁ、・・。でやぁーっ!」

「はっ、はっ、・・。はっ!」

『おーっと、ロベルト選手とラインハルト選手。暫く動かないと思ったらまたまた斬り合いを再開しましたっ!ですが今度は動きが激しいっ!先程と違い位置を激しく変えての応酬戦です!ですが剣技に疎い私には何をやっているのか皆目検討がつきませんっ!なのでここはナレーションを担当している自称『俺』さんに実況して貰いましょうっ!』

えっ、あ、はい。それでは実況いたします。ふたりは先程の刃合わせにより打ち合いでは埒があかないと判断し、今度は機動戦へと戦法を変えた。一太刀浴びせては位置を変え、相手が追撃してくるところを迎え撃ち、再度位置を変える。そんなやり取りが、随時攻守を交互に変えながら行なわれていた。『動』と『静』。見る者によってはそれはまるで予め打ち合わせがされていたかのようなやり取りに見えるであろう。そう、高い次元でやり取りされる立会いは、見る者にまるで剣舞を鑑賞しているような錯覚を覚えさせる。そんな芸術と言っても良いような剣のやり取りがふたりの間で繰り返された。

だが、観客には聞こえぬが、交わされているふたりの会話はやはり子供の口喧嘩レベルだった。

「おらおらっ!足がついてこれてないぞ、ロベルトっ!」

「うるせぇーっ!ちょこまかと逃げるんじゃねぇ!」

「逃げてるんじゃねぇよ、誘っているのさっ!ほらほら、ここに隙を作ってやったぞ、打ち込んで来いっ!」

「誰が打つ込むかっ!わざわざそんな罠にはまりにいくかってんだっ!」

「はははっ、だが本当は打ち込みたくてうずうずしているんだろう?そうだよな、ここに打ち込めば勝てると思えるんだからな。その衝動に抗うには筋肉への抑制がハンパないだろう?ほらほら、お陰で動きがぎこちなくなっているぞ!お前もまだまだだなっ!」

「うわっ!このぉーっ、心理戦かっ!ずりぃーぞっ、ラインハルト!どこでそんな素的な戦法を覚えたっ!」

「覚えたって・・、いや、これって2年の前期の授業で教わっただろう?お前にとってはついこないだのはずなんだが?」

「えっ、そうなの?ん~っ、思い出せねぇ。」

「お前、それは思い出せないんじゃなくて、元々覚えていないだけだろう?どうせまた授業中、目を開けて寝ていたんじゃないのか。まったく、戦闘技法担当教授の諦め顔が目に浮かぶぜっ!」

「あーっ、あの教授、なんだかこの頃俺に優しいんだよな。前は毎回のように俺に質問しくさったのに、この頃はなかん俺の順番を外してくれるんだ。なんかいい事でもあったのかね?」

「お前、幸せなやつだなぁ。ちったぁ、空気を読めよ。そんなんじゃ、学年末にしっぺ返しを喰らうぞ。もう一回2年をやるつもりなのか?いや、それだと教授の授業をまた受ける事になるか。それは教授も嫌だろうからさっさと進級させて厄介払いをするな。はははっ、駄目だめな生徒でも徹底すると進級できるんだな。」

「誰が駄目だめだぁーっ!」

「お前の事だよっ!」

「俺は駄目だめじゃねぇっ!」

「いやっ!誰がどう見たってお前は駄目だめだっ!」

「うがぁーっ!ラインハルトっ、あんたは斬るっ!」

「駄目だめ風情に斬られてたまるかっ!」

はい、もう一度言いますが、ふたりは立ち話をしている訳ではありません。こんな会話の最中も激しく剣刃を交えています。えっ、それを説明するのがお前の仕事だろうって?えーっ、そんな面倒な事したくないなぁ。でも仕方ない、やるか。

ラインハルトに駄目だめと言われたロベルトはその鬱憤を剣にぶつける。只でさえ重たいロベルトの打撃に更なる勢いがついてラインハルトに襲い掛かった。だがラインハルトはにべもなくその剣をいなす。いや、さすがに剣で受けるには重過ぎるのか、体位を翻し、受け流すようになった。打撃の集中点を失ったロベルトの剣はぶんぶんと唸りを上げてラインハルトの廻りを掠めてゆく。しかし、その全てをラインハルトは皮一枚の差で見切っていた。

そして、勢い余ってロベルトの剣が流れる隙を突いてラインハルトも反撃をする。しかし、ロベルトもまた体位を変えて凌ぐのであった。そんな戦い方の変化に実況が気付く。

『あれ?どうしたのでしょう。なんかロベルト選手もラインハルト選手もお互い剣が相手に当たらなくなりました。ぶんぶん剣を振り回してはいますが掠りもしないようです。んーっ、なんかいきなり地味になりましたね。』

実況を担当しているローリーは魔法使いである。故に剣士同士の戦いには疎い。見るものが見れば、凄まじいやり取りが行なわれているのだが、それを素人のローリーに判れというのは酷であろう。

そんな見た目だけはチャンバラごっこ然としたふたりの戦いだが、そこで放出される一太刀事のエネルギー量はハンパないものだった。もしもふたりのステータスを見る事が出来る者がここに居たとしたら、凄まじい勢いでHP、いやエネルギーゲージが減っていくのを見ただろう。もしもそれが4桁のデジタル数字で表されていたら1の桁は数字の変化が速過ぎて読み取る事は出来ないはずである。


そしてとうとうロベルト、ラインハルト双方のエネルギーゲージがレッドゾーンへと減じた。それは双方とも自覚しているようであった。なので次の一撃で決めようと、双方あらん限りの気合を込めてお互いの奥義を繰り出した。

「ツカハラ流奥義っ!斬鉄剣 鬼斬りっ!」

「マスター ザ エッセンスっ!カッティング・ソードっ!」

ふたりは同時に魔剣総戦のルールに抵触しない範囲で最大級の剣技を繰り出す。そしてふたりの中央でそれは激突した。ロベルトの発したツカハラ流奥義『斬鉄剣 鬼斬り』も、ラインハルトが放った『マスター ザ エッセンス カッティング・ソード』も、どちらも相手の剣を無効化する為の奥義である。その威力は軽くAレベルを超えているが、対人用ではない為、特例として魔剣総戦での使用が許可されていた。

そんなA級越えの奥義がぶつかり合ったのである。当然その衝撃は凄まじい。その瞬間、ふたりを包み込むように発生した衝撃波は音の速度で周囲に広がってゆく。


『きゃーっ!えっ、なに?なにが起こったの?うわぁ、会場を取り巻く遮断障壁がぐらんぐらんに揺らめいています。ちょっとこれ危なかったんじゃないの?なんでAレベル超えの技が認められているのよっ!えっ、特例?えーっ、信じらんないっ!』

あまりの衝撃に遮断障壁がぐらついたのを見て解説者のローリーが実況中なのを忘れて文句を言う。観客席にいる生徒たちも前席はヤバイと思ったのか後ろの席へと移動を始める。そして漸く我に返ったローリーが実況を再開した。


『はい、どうしたことでしょう。ロベルト選手とラインハルト選手の剣が重なり合ったと思われる瞬間、いきなり衝撃波と眩い光が発生しました。その威力たるや軽くAレベルを超えています。これには実行委員会の安全担当も頭を抱えている模様です。まさか対人用ではない剣技がここまで相互作用を及ぼすとは思ってもいなかったようです。あっ、みなさん掲示板をご覧下さい!ただ今のロベルト選手とラインハルト選手の魔力レベルが表示されましたっ!あらら、どちらもSレベルですっ!えーっ、なんで?あの技ってAレベルなんでしょう?それがなんでSレベルの威力になつちゃうの?えっ、相互作用?魔力の注入量が限界を超えていた?はぁ、そんなことしたらふたりとも立っていられなくなっちゃうじゃないですか。やっぱり剣士って馬鹿なのかしら?』

ローリーの実況はなんとも辛口である。だが、確かに戦いにおいて動けなくなるまでチカラを出し切ってしまうのはよろしくない。特にチーム戦では、例え相手を倒したとしても倒れこんでいるところを別の選手に止めを刺されては戦績として意味がなくなるのだ。

だが、今のふたりには他の事など頭になかったのだろう。目の前の敵を倒す。その一点に集中した結果がこのドローだった。


「くそっ、駄目かっ!」

「ちくしょう、もう動けねぇ。」

最後の力を振り絞って相手にぶつけ合ったふたりは、もはや立っている事すら適わないのか、地面に大の字になって寝転がってしまった。

そんな、お互い疲れ果てて動けなくなっているところにジャックがやって来た。


「なにやっているんだ、お前たち。子供だってもう少しスタミナ配分を考えて遊ぶぞ?お前たちは電池が切れるまで騒いでばたりと倒れる赤ん坊かっ!」

「うーっ、なんか例えが酷いんだけど?普通仲間に対してそこまで言うか?」

力尽きて起きる事も出来ないでいるロベルトは地面に伏したままジャックの言葉に反論する。だが、そんなロベルトにジャックの返事は容赦がなかった。

「こっちはレイチェルとペアを組んで漸くユリウスからギブアップを得たってのに、試合だって事を忘れて遊んでいたやつに労わりの声は掛けられないなぁ。」

「重ね重ね言い方がきつい・・。俺だってただ遊んでいたんじゃないのに・・。」

「ほら見ろ。遊んでいたって自白したじゃないか。」

「あっ、むーっ、誘導尋問に引っかかっちまった。」

「さて、それじゃ俺は行くからな。メイファンが動き出したんだ。自分の始末は自分で付けろよ。」

「げっ、この状態でメイファンとやれと?それって何ていう無理ゲーだよ。」

「知らん、じゃぁな。」

そう言うとジャックは、少しはなれたところで倒れこんでいるラインハルトに二言三言言葉を掛ける。すると、ラインハルトは悔しそうに小さな声でギブアップを宣言した。


そして、そんなジャックと入れ替わるように今度はメイファンがラインハルトのところにやってくる。

「ラインハルト、あなたユリウスをサポートする役割の癖して何遊んでいるの?そんなんだからいつまで立ってもうだつが上がらないのよ。」

「うっ・・、その言い方はないんじゃないのか?一応ロベルトの足は止めたんだぞ?」

「そんな事で満足していたら戦場では生き残れないわよ。この試合ってチーム戦なんでしょう?ならもっと全体を把握して立ち回りなさい。」

「くそぉ、あんたは人を労わるって気持ちがないのかよっ!」

「甘えるんじゃないわ、当初の役割は果たしたですって?そんなの当たり前じゃない。それをこなして尚、先に進むのが本物の剣士よ。それとも、あなたのような甘ちゃんには元々無理な話だったのかしら?」

「くっ・・。」

メイファンの言葉に反論しようとしたが、ここで反論しては自らを貶める事になる事に気付きラインハルトは沈黙する。


「あなたは今、剣に溺れかけている。相手とチャンバラごっこをするのが楽しくて、剣の道の何たるかを学ぶ事を忘れかけているわ。足止めをした?それに何の意味があるの?相手に勝って、且つ生き残ってこその勝利よ。剣の道は心の鍛錬こそが高みへ到達する最後の関門。その頂に立ちたいのなら自分を律し甘えを捨てなさい。」

「くっ・・。」

「さて、ではあなたが討ち漏らした獲物に止めをさすとしますか。ロベルト・ニコラスっ!ギブアップ?オア デス?」

メイファンが腰の短剣に手を掛けながらロベルトにギブアップするか、それとも死ぬかを問い掛ける。

「ううっ・・、ギブアップだ・・。」

「あら、お利口ね。なら大人しくそこで寝ていなさい。」

そう言うとメイファンもまたジャックの後を追ってその場を離れた。


「くそぉーっ、あいつの目には俺たちの死闘もお遊びのチャンバラにしか見えないのかよっ!」

去ってゆくメイファンの後姿を悔しげに眺めながらラインハルトが心情を吐き出す。それにロベルトが応えた。

「俺たちってそこそこやったと思うんだけど、上位者の目からするとまだまだなのかなぁ。」

「そんな訳あるかぁーっ!お前がだらだらと負けを認めねぇからこんな事になったんだっ!」

「なんだと!それを言うならあんただってちゃらちゃらと受けるばかりで、がつんと向かってこなかったじゃねぇかっ!」

「剣には戦い方ってもんがあるんだよっ!猪武者相手に真っ向からぶつかったりするかっ!」

「猪突猛進こそが剣士の矜持だっ!」

「自分で猪武者って認めてるぞっ!」

「あれ、これってそうゆう意味なの?」

「かーっ、馬鹿の相手はこれだから疲れるぜっ!」

「なんだとっ!馬鹿って言う方が本当は馬鹿なんだからなっ!」

「だれが馬鹿だっ!」

「あんただっ!」

「お前だろうっ!」

大地に寝転がりながらふたりは空に向かってまた言い争いを始める。だが、その言葉の奥には刺々しい感情は見られない。そう、例えるならばカラっとした春の空気のような清々しさがあった。それは互いを認め合っているからこそ言える軽口なのかも知れなかった。


かくして、ユリウスチームはふたりが脱落。ジャックチームもひとりが戦列を離れる事となったのである。

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