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雑文ラノベ「王立魔法学校高等部の優等生」  作者: ぽっち先生/監修俺
出会い編
26/52

戦士vs剣士

さて、漸く僕のマイサムが落ち着いたので海から上がると、そこではシスター・ミッシェルとロベルトが模擬戦の準備をしていた。シスター・ミッシェルは飛行船に飾ってあった刃のついてない短剣をふた振り持っている。対するロベルトはこれまた装飾用の剣だ。だがこちらはロングソードである。


どちらも装飾用の剣ではあるが刃が付いていないだけで重量的には本物と変わらない。そんなロングソードをロベルトは軽々と操っていた。シスター・ミッシェルも短剣のバランスを慎重に確かめている。


「ではルールは寸止め、先に2本とった方の勝ちで宜しいですか?シスター・ミッシェル。」

「はい、結構です。でも当たっちゃったらごめんなさいね。」

「まっ、それは俺の技量不足という事で。レオン!合図を出してくれ!」

互いに立ち位置を決めたところでロベルトがレオンに声を掛けた。今回は模擬戦なので判定を下す審判がいる。レオンはロベルトと同じ剣術学科なので、その任を任されたと言う訳だ。


因みに子供たちは危ないので遠く波打ち際に避難させている。両者の間にはジャックが結界を張って万が一の事故に備えていた。


「了解。それでは双方、礼!始めっ!」

レオンの合図により試合が始まる。でも結果はあっけなく付いた。最初の組み手と言う事で、ロベルトはシスター・ミッシェルの技量を計る為、合図と共に3メートル程一気に後ろに下がったのだが、残念ながらシスター・ミッシェルの追撃の方が勝っていた。ロベルトが飛び下がって足場を固めた時には、既にシスター・ミッシェルの短剣がロベルトの首に掛かっていたのだ。う~んっ、さすがはシスター・ミッシェル。まだまだ現役でやれるな。


「馬鹿な・・。」

ロベルトが信じられないといった表情で呟く。


「1本という事でいいかしら?」

シスター・ミッシェルがロベルトの首筋に短剣を沿わせながら確認する。もう一方の腕はロングソードを握っているロベルトの腕にあり、動きを封じている。真剣勝負だったら、哀れロベルトは何が起こったのかも判らずに死んでいただろう。ひゅ~っ、怖ぇ~。


「ま、参りました・・。」

「ふふふっ、ちょっと油断していたでしょう?でもチャンバラごっこじゃないんだから相手の見極めなんかしてちゃ駄目よ。自分を信じて、玉砕覚悟で相手に向かわなくちゃね。」


「はははっ、これはまた、きつい教えですね。でも次は負けませんよ。」

短剣の当たっていた首筋に手をやりながらロベルトがシスター・ミッシェルの言葉に応えるが、これは多分強がりだろう。だってロングソードを持つ手が小刻みに震えているからね。


そんなロベルトにシスター・ミッシェルがまた声を掛ける。


「うんっ、その意気です。模擬戦なんか所詮は訓練です。一々落ち込んでたら前に進めません。戦いとは命のやり取り。負ければそれまでです。その事を忘れてはいけません。」

「負ければそれまで・・ですか。確かにそうですね。肝に銘じます。」


「どうします?少し休みますか?」

「何のこれしき。実戦なら休憩などしていられないんでしょう?」


「ふふふっ、ぞうですね。それではもう一手。」

「はい、続けましょう。レオン、仕切ってくれ。」


「OK、両者それぞれ位置について。礼っ!始めっ!」


次の手合わせは開始の合図と共にロベルトのロングソードが唸りをあげた。下から上へ剣を振り上げる事により、足元の砂をシスター・ミッシェルの方へ撒き散らしたのだ。多分シスター・ミッシェルの突進に対する目くらましだったのだろう。でもこれはシスター・ミッシェルに読まれていた。今度はシスター・ミッシェルの方が後ろに下がって砂を避けたのである。


しかし、そんな砂埃の中からシスター・ミッシェルの前にロベルトが躍り出た。そして上から一気にロングソードを振り下ろす。それをシスター・ミッシェルは半身だけ移動してかわした。


おいおい、ロベルト。それって寸止めになってないぞっ!シスター・ミッシェルが避けきれなかったら如何に模擬剣とはいえ、真っ二つだったんじゃないのか?


まぁ、そんな思いは素人の考えなのだろう。戦いの中に生きる者たちにとっては一挙手一投足が己を高める為の行為なのかも知れない。つまり本気と言う事だ。のんべんだらりと形だけなぞっていては上達しないのかも知れない。


まっ、それは剣の道だけに言える事ではないけどね。魔法の取得だって同じようなもんだ。多分、他の事だって同じだろう。何事も真剣に向かい合って鍛錬しているやつだけが、高みに昇る権利を得るのだ。但し、得られるのは権利だけで手に掴めるかどうかはまた別の話なんだけどね。


さて、ロベルトの斬撃により、またふたりの姿は飛び散った砂のカーテンの中に隠れた。そして舞い上がった砂が地に落ち視界が晴れた時には、シスター・ミッシェルの喉元にロベルトの剣柄が寸止めで押し付けられていた。そう、ロベルトは剣の刃ではなく手元の剣柄の方でシスター・ミッシェルを攻撃していたのだ。


「お見事です。大剣の斬撃だけに頼らぬ見事な対応。参りました。」

シスター・ミッシェルがニコリと笑って負けを宣言する。でも、シスター・ミッシェルの短剣もロベルトの伸びきった腕に当てられていたけどね。


でも腕と喉元なら喉元を抉られた方が負けなのだろう。腕一本失っても直ぐに死ぬ事はないが、喉を突かれたらあっという間に呼吸困難だ。いや、ロベルトの力なら首の骨すら砕けるかも知れない。本当に戦士と剣士の戦いって命のやり取りだよ。怖いねぇ。


「ふぅーっ、それでも腕一本持っていかれるんですね。なんともしたたかです。やはり経験の差なんですかねぇ。」

「大抵の戦いでは一対一は稀です。ならば仲間の為に少しでも戦力を削るのが定石。捨て身の攻撃はここぞと言う時まで取っておくものですよ。」


「いやはや、かさがさね重いお言葉だ。でもこれで並びました。最後の一手で決着を付けましょう。」

「負けませんよ?」


「それは俺も同じです。レオンっ!次で最後だ。」

「おうっ、それでは双方、位置について。礼っ!始めっ!」


レオンが開始を宣言するが、今度は両者とも動かない。でもそれは見た目だけで、実は両者の発する気合がお互いの中央でぶつかり合っている。多分見る者が見れば両者の真ん中でお互いが発している気合が爆発しているのが見て取れるのだろう。まっ、僕には見えないけどね。


だけどそんな睨み合いも一瞬だった。どんっという衝撃がお互いの中央で起こったのを合図に双方が突進を始める。いや、多分ね。だって速過ぎて目で追えなかったよ。気づいた時は中央でお互いの剣が交差し、きんっ!という金属音が響き渡っていた。


これは大上段から振り下ろされたロベルトの剣をシスター・ミッシェルの短剣が受けた音らしい。だが、ここで両者の得物であるロングソードと短剣の性能差が表面化する。ロベルトのロングソードはシスター・ミッシェルのふた振りの短剣をものの見事に叩き折っていた。その折られた短剣の刃が僕の足元に突き刺さったよ。あぶねぇなぁ。子供たちを離して置いて正解だったよ。いや、僕も避難しておくべきだった。巻き添えなんかごめんだよ。


「ふうっ、参りました。素晴らしい闘気ですね。完敗です。」

短剣をふた振りとも折られ、ロベルトのロングソードが顔の直前で寸止めされているシスター・ミッシェルが負けを宣言する。


「はぁ、はぁっ・・。勝ったのか・・。」

渾身の闘気まとわせてロングソードを振り下ろしたであろうロベルトは、呼吸も荒く肩で息をしている。でもシスター・ミッシェルはケロっとしているよ。


「はい、私の負けです。」

シスター・ミッシェルの言葉にロベルトはへたへたと膝を折って座り込んでしまった。どうやら本当に力を使い果たしてしまったようだ。いや、ギンギンまで張り詰めていた緊張が解けたのかも知れない。でもそんなんではまたシスター・ミッシェルに怒られるぞ。


「いや~、いい経験になりました。ありがとうございます。」

ロベルトはよたよたと立ち上がってシスター・ミッシェルへ礼を述べる。うんっ、傍から見たらどちらかと言うとロベルトが負けたように見えるだろうね。かっこ悪いぞ、ロベルト。


「シスター・ミッシェル。次は俺とお願いします。俺もロベルトと同じ剣術学科なんで。」

試合が終わったのを見計らって今度はレオンがシスター・ミッシェルに手合わせを申し出た。でもそんなレオンの申し出を傍で見ていたロゼッタが注意した。


「ちょっとレオン。シスター・ミッシェルはあなたたちの師範じゃないのよ。遊びたいならロベルトと遊んでいなさい。」

「えっ?あーっ、まぁそうなんだけどさ。でもロベルトだけ稽古をつけて貰えるのはズルくね?」

「そうゆう問題じゃないでしょう?申し訳ありません、シスター・ミッシェル。この子たち馬鹿なんで可哀想な目で見てあげて下さい。」

うんっ、なにやらレオンたちに対してロゼッタが辛口だよ。


「いいのよ、剣士たるもの剣以外の事はそれくらいじゃなくちゃね。でもさすがにあのレベルで二人目はきついのでまた今度ね。」

あらら、シスター・ミッシェルも結構容赦ないな。そうか・・、剣士って馬鹿じゃなくちゃ駄目なのか。


だからという訳ではないのだろうけど、レオンもロベルトもシスター・ミッシェルのまた今度という言葉に納得してしまった。でもそれってシスター・ミッシェルの社交辞令じゃないかなぁ。孤児院に帰ったら院長先生がいるからシスター・ミッシェルは相手してくれないと思うよ?


「ジャック~っ!終わったから解いてもいいわよ~!」

シスター・ミッシェルの言葉を受け、レイチェルが結界を張っていたジャックに声を掛ける。その声にジャックは手を挙げて応えた。


「さて、それでは私は少し休みます。アルベール、子供たちを見ていてね。」

「はい、シスター・ミッシェル。」

シスター・ミッシェルの言葉に僕は子供たちの方へ歩きだす。ロベルトとレオンも名残惜しそうではあったが僕の後から付いてきた。そんな僕たちを見送りながら残った女の子たちはシスター・ミッシェルを取り巻いてお喋りを始める。


「びっくりしましたわ、シスター・ミッシェル。ロベルトって、ああ見えて学校ではレオンについで二番の成績なんですよ。あっ、剣術に関してだけですけど。」

うん、レイチェル。それってあんまり褒めていないな。ほら、ロベルトに気があるローザが反論を始めたよ。


「レイチェル!ロベルトだってたまにはレオンに勝つ事はあるわ!それに食べっぷりに関してはロベルトの方が上よ!」

うんっ、ローザ。君の言い分もちょっとアレだね。まぁ、好きなやつが下と言われてはおもしろくはないんだろうけど、でも比べるのが食べっぷりってのは例えとしてどうなのかなぁ。でもロベルトたちって本当に剣術馬鹿なんだな。ある意味、羨ましいぞ。


さて、子供たちの下へ着くとジャックが話し掛けてきた。


「なんとも凄まじい試合だったみたいだね。剣先の破片がここまで飛んできたよ。」

そう言ってジャックは短剣の刃先を僕へ見せる。うぉーっ、あぶねぇ!こんなとこまで飛んだのかっ!すげーなロベルトの一撃って。はい、ジャック様さまでした。結界ごくろう!


「いや~、全然駄目だったよ。一応俺が2本取って勝った事になっているけど、あれはわざと負けてくれたな。そもそも野武士の試合だったら1本目で瞬殺されていたからな。後の2本は彼女にとっては座興さ。」

あれ?そうだったの?なんだ、シスター・ミッシェルはロベルトに華を持たせただけだったのか。


「ほうっ、お前にそこまで言わせるとはすごいな。」

「ああ、上には上がいるって事を痛感させられたよ。」


「そんな人がなんで孤児院でシスターをやっているんだ?」

「さぁね、知っているか?アルベール。」

ロベルトが僕に答えずらい事を聞いてくる。僕は理由を知っているけど、ちょっとシスター・ミッシェルの許しなしでは話せないな。


「えーと、それはちょっと僕の口からは・・。」

「そうか、まっ、どっちにしても慢心するなって事だね。」

あらら、突っ込んでこなかったよ。ふう~ん、ロベルトたちも何となく察しているんだね。


「さて、そんじゃ俺たちも緊張をほぐす為にひと泳ぎするかっ!」

「やめとけよ、ロベルト。お前チカラを使い過ぎてボロボロだろう?絶対痙攣をおこすぞ。俺は溺れかけている男なんかを助けたりしたくないからな。」

「いやいや、適度な運動は回復を早めるのさ。よしっ、ならばちびっ子たちに混ざって波乗りだっ!」

うんっ、ロベルトは元気だねぇ。しかも子供たちを煩わしいと思っていないんだ。なんとも優しい男だよ。


そゆうゆ訳でロベルトとレオンはちびっ子たちを背中に背負って波乗りを始めた。うんっ、ロベルトたちが浮き輪代わりだね。ちびっ子たちは大喜びだ。本当にロベルトは人の輪の中に溶け込むのが上手だ。このままでは僕の立場がなくなってしまいそうだよ。


その時である。沖合いから何やらでかいやつが浜に向かって突進してくるのが見えた。


「何だ、あれ?タコ?いやイカか?」

今まで見た事のない生物を僕は暢気に推測する。いや、ここはびっくりして警戒するべきところなんだろうけど、僕って海は始めてだからああゆうのもいるのかな、くらいの危機感しかこの時はなかったんだ。だけどロベルトたちは違った。向かって来るやつの正体を直ぐに見極め警告を発する。


「ジャック!クラーケンだっ!レオンっ、子供たちを陸に上げろ!」

えっ、クラーケン?クラーケンってあの海の魔物筆頭の怪物の事?なんでそんなのが現れるの?えっ、次回はイベント回?そんなの聞いてないよぉ。

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