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雑文ラノベ「王立魔法学校高等部の優等生」  作者: ぽっち先生/監修俺
出会い編
22/52

ウエストキャナル観光

さて、ジャックたちが来た翌日、僕はみんなをウエストキャナル観光へと案内する事になった。とは言っても如何に地元とはいえ、中学を卒業したばかりの僕が案内できる場所などたかが知れている。よって、専門のガイドを雇った。勿論払いはローザである。


しかし、僕らの年頃で歴史的寺院巡りや風光明媚な場所を歩いてもいまいちピンとこない。だから観光のメインは食べ歩きとなった。まぁ、ジャックやレオンはウエストキャナル系の魔法使いや勇者関連の遺物を管理している場所とかを廻りたがったが、そこは多数決のチカラが作用した。因みにこうゆう場合の男女の議決権配分は女子が3で男子は1だ。平等って本当は素晴らしいものなんだね。


ウエストキャナルを旧都とする元チャイニア王国地区では果物の生産が盛んだ。しかも南北に長い為、4国合併後は他国の果物の苗を持ち込んでの品種改良も盛んである。今ではパイナップルなどの一部の南国フルーツは原産国であった旧アラビニア王国地区を抜いて生産量ではトップである。


そんなフルーツをふんだんに使ったスイーツがウエストキャナルの名産だ。とは言ってもスイーツは生物なので他の地区に輸出する場合は大抵ドライフルーツ化して送り出している。確かに果物はドライフルーツ化してもおいしいが、やはり新鮮なものが一番だ。それを現王都であるイーストリバーを都としていた、旧ユーロピア王国地区からもたらされたクリームやケーキと組み併せた物がこの地区の女の子たちには大人気であった。当然観光ガイドもそれらのスイーツの有名店を推薦してくる。


「こちらの店では取れたての果物だけでなく、各種加工されたデザートが人気です。今ですとやはり旬の桃を使ったスイーツが人気ですね。」

そう言ってガイドは店舗のケースに並べられているスイーツをひとつひとつ説明してゆく。これには女の子たちが目をらんらんと輝かせた。いや、何故かロベルトもその中に混じっている。そうだね、まぁ男子だからって別に甘い物が好きでもおかしくないよな。うんっ、僕も好きだよ。スイーツ化したものはちょっと値が張るから滅多に食べられないけど。


「いや~ん、この桃のムースの甘さって絶品だわ~。」

「えっ、そうなの?ちょっと頂戴よ、レイチェル。私のチェリータルトも一口あげるから。」

「この柿の干したやつも、めちゃ甘いな!でも、これって砂糖の甘さじゃないよな?」

「うわ~、このメロンとクリームの組み合わせって最高ね!」

女の子+ロベルトのグループはケースにあるスイーツを片っ端から注文しては口に運んでいる。それでも大抵は切り分けたやつを4人で分けいてるので食べている量自体は大した事は・・、いや、あるな。ロベルトなんか既に桃を丸ごと3個は食べているんじゃないか?女の子たちも負けじとお皿を重ねているよ。


そんな光景を隣のテーブルに座って僕とジャックとレオンは見ている。まぁ、僕らだってそこそこ食べているのだが、隣が凄過ぎてそんな気がしないから不思議だ。


「いやーっ、俺も甘いものは嫌いじゃないけど、女の子たちには負けるね。」

「はははっ、まぁ確かにイーストリバーで食べるスイーツとは鮮度も種類も違うね。なんていうか、くどくなくてさっぱりしているから幾らでも食べられそうだ。」

女の子たちに比べるとそれ程でもないが、ジャックとレオンもここのスイーツが気に入ったらしい。


「イーストリバーでも果物は沢山取れるんですよね?」

「ああ、取れる事は取れるが、大抵は酒の原料として栽培しているから生食にはちょっと酸っぱいんだ。」

「ああっ、ぶどう酒やリンゴ酒が有名ですよね。」

「うんっ、大抵はお酒にしてしまうけど、一部はジュースにも加工されている。ただ防腐処理が難しいので出回る時期が限られるんだよな。」

「あーっ、それはこちらでも同じですね。ただ季節ごとに色々な種類が出回るので、店先に品物がなくなる事はないです。」

僕たちは女の子たちのように食べるのに熱中できないのでウエストキャナルとイーストリバーの違いなどを話題にする。


「後は水かなぁ。イーストリバーって北区と南区で水源が違うから水質が違うんだよな。」

「それはあるね。南区は硬水だから、魔法研究に使う水はわざわざ北区から引いているくらいだもんな。」

「あっ、やっぱりそうだったんですか!なんか味が違うなぁと思ったんです。」

ジャックたちの話に、僕はレイチェルの工房で飲んだ水の違和感を思い出した。


「昔と違って今は処理をするから、飲み水に関してはそんなに違わないと思うけど、洗濯なんかに使う水はそのままだから北区から南区に来るメイドたちは文句を言っているよ。」

「泡立ちが悪いんでしたっけ?」

「らしいね。」

僕はそれ程詳しくはないが、硬水と軟水の違いは魔法学では重要な事なので知っていた。特に薬品の調合では、水が違うと結果がまるで変わるから気をつけろと注意されたのを覚えている。


「水に関してはウエストキャナルも場所によって違うらしいです。ここいらは大抵井戸を掘るんですけど、川沿いの地区は川の水を処理して飲んでいるんです。でも処理水って味が悪くて評判が悪いんですよね。」

「川かぁ、イーストリバーでは相当源流に近い場所でないと川の水は飲まないなぁ。」

「そうなんですか?」

「基本、町の下水って川に垂れ流しだからね。上流でも放牧地なんかが側にあると病原菌なんかが心配になるらしい。」

「放牧地?ああっ、牛の糞尿ですか?」

「うん、昔感染症が流行してね。原因を調べたらどうやら放牧地の糞尿が原因らしいと判って、それ以来川の水を生で飲むのは禁止されたらしい。」

この事はやっぱり授業で習った。水の水質検査魔法は生活魔法では結構重要な魔法なのだ。でもこれがまた難しいんだよね。おかげで水質検査アイテムは魔法工房で売る人気アイテムだったりする。


「放牧地を移すのではなく、水を飲むのを禁止したんですか?」

「水よりバターやチーズの方が大切だったんだろう。水は地下水を汲み上げれば事足りたしな。」

う~んっ、食に対する人間の欲はどこでも同じだなぁ。


「でも今は遠くの水源から水を引いているんですよね?」

「イーストリバーもでかくなったからな。地下水の出ない場所も結構あるんだ。まっ、深く掘れば出るんだろうけど50メートルを釣瓶で汲み上げるのは大変だからなぁ。」

「50メートルですかっ!それは大変だ。」

「だから100年ほど前だったか、当時の国王が国家事業として遠くの水源から水を引く工事を始めたんだ。なんてったっけ?あの王さま。」

「ボルビクニス1世。別名水の王さまだよ。授業で習っただろう。」

ジャックの問い掛けにレオンが答える。


「ああっ、それそれ。でもあの王様って魔法使いには人気がないんだよな。」

「へぇ、そうなんですか?みんなの為に水を引いたのに?」

「その工事の資金を集めるのに、彼は魔法使いに重税を課したんだ。で税金を払いたくなければ水を引く工事を手伝えと脅したんだよ。」

「魔法使いを土木工事に?ああっ、重機代わりですか。」

僕はジャックの言った事に心当たりがあった。遠隔操作系の魔法って結構使い勝手がいいのだ。それでも土木工事を手伝えるような魔法を扱えるの魔法使いはそんなにはいない。


「ご明察。山を削り、谷を埋め、水路を敷設するのに魔法を使ったんだ。おかげで10年は掛かる工事が5年で完成してしまった。」

「はぁ、確かに魔法ってそうゆう使い方もできますけど・・。」

「うん、魔法で彫刻を掘るのは大変だけど、岩を砕いたり木をなぎ倒すのはそれ程難しくないんだ。まぁ、そうは言っても誰でも扱える魔法ではないけれどね。」

「つまり、文句を言っていたのは上位魔法使いたちですか。」

「そう、如何に出来るとは言っても、そこはほら、プライドが邪魔をしたんだろう。」

「ん~っ、判るような判らないような・・。」

僕が上位魔法使いの矜持に悩んでいると、隣の席からレイチェルがやって来て僕らに声を掛けた。


「あなたたち、なに堅苦しい話をしているの?折角の甘いスイーツが味気なくならない?」

「おっ、なんだ。あれ?もしかしてもう全種類制覇したのか?」

「ええ、大変美味しかったわ。でも別のお店はもっと種類があるらしいからそちらも見てみましょう。」

「それだけ食べてまだ喰い足りないのか・・。」

ジャックは隣のテーブルに積み上がった皿の山を見て呆れている。そして微かな希望を込めて反論した。


「レイチェル、今日はそのくらいにしておけよ。別にスイーツは逃げないんだからさ。それより魔法博物館を観に行こうぜ。仮にも君たちは魔法学科なんだからさ。」

「それを言うなら博物館こそ逃げないわ。でも果物には旬があるのよ。どちらを選べと言われたら当然スイーツよっ!」

うんっ、この手の女子論理には逆らってはいけない。どんなに正論を唱えようと彼女たちはそれを新たな論理で打破してくるのだ。もうこれは世界のことわりである。


「OK、付き合うよ。でも後1軒だけだぞ。」

「そうね、では腹ごなしも兼ねて歩いて行きましょう。目的のお店は西区らしいから丁度良いわ。」

「西区?どのくらい歩くんだ?」

まだここの地理に疎いレオンが僕に聞いてきた。


「えーと、5キロくらいかなぁ。」

「すごいな、ローザたちって普段は1キロ歩くのだって文句を言うのに。これがスイーツの魔力か。」

「えっ?たった1キロで?ダンジョンではちゃんと歩いていたと思うけど?」

「町中の移動とダンジョンは違うさ。普段の彼女たちはお嬢さまだからな。」

あらら、そうゆうもんですか。さすがは王立魔法学校の生徒だな。育ちが違うぜっ!


さて、本来なら1時間くらいで着く距離だが、女の子たちは道すがらの商店をあれこれ見ながら寄り道をするので結局目的の店に着くのに3時間も掛かってしまった。成程、確かにこれくらい時間を掛ければあの量のスイーツも消化できるのだろう。つまり彼女たちは準備万端で次の宴に突入できるわけだ。


そんなこんなでまたまた彼女たちのテーブルにはスイーツのお皿が積み重なってゆく。前の店で食べたスイーツも味比べだと言って食べているくらいだ。


「んーっ、なんかこの店のは甘みが抑えられている気がするわ。」

「そう?それって先にパイを食べたからじゃないの?」

「そうかなぁ、でも私としてはこちらの方が好みかもしれない。」

「あらあら、それはこれを食べても言っていられるかしら。」

「うわっ!なにこれ。甘さの感じが全然違うわっ!」

「でしょ~。色合いはちょっとアレだけど凄く上品な味よねぇ。」

ローザとロゼッタはウエストキャナルのご当地スイーツである餡蜜を食べてご満悦のようだ。そしてミッシェルとロベルトは別のスイーツについて感想を交わしている。


「このココナッツミルクに入っているぷるんとしたやつはなんだろうな?ぷりぷりしていて変わった食感だ。」

「そう?私はいまいちかな。」

「ミッシェル、スイーツは味覚だけでなく食感も大切だぜ?甘いだけではやがては飽きてしまうものさ。」

「はいはい、お子ちゃま舌で悪うございました。」

う~んっ、女の子たちの会話に自然と溶け込んでいるロベルトが凄いね。しかもウンチクが一角あるよ。


そんな彼女たちを見ながら僕らはお茶をすすっている。さすがの僕も、今日はもう甘味はご馳走様だ。というか、もしかして今までの人生で食べた分を超えているんじゃないか?いやはや、こんな事で生まれの差を感じてしまうとは思わなかったよ。


そして2時間後、漸く彼女たちの宴は終わった。でも何故かローザの元には箱詰めされた大量のスイーツが置かれている。そう、ローザは食べた分とは別に大量のスイーツを買い込んだのだ。なんでもそれは孤児院の子供たちへのお土産らしい。


しかしなんだな。ローザに悪気はないんだろうけど、シスターたちは良い顔をしないかも知れない。如何にお土産とはいえ、孤児院の子供たちにとってこんな事は滅多にない事だ。そして一度覚えてしまった味は、以後子供たちを誘惑してしまう。しかし、孤児院ではその誘惑を叶えてやるのは難しいのだ。


ローザたちはいずれはいなくなる。その時、子供たちにお菓子を与えてくれる者はいなくなるのだ。その事を理解し昇華できる子供は少ない。僕はシスターたちに駄々をこねる子供たちの姿が目に浮かんで少し困った。


「ローザ、気持ちは嬉しいんだけど、あまり子供たちへ物を与え過ぎるのはシスターたちが困ると思うんだけど・・。」

僕はローザの気持ちを波立たせないように慎重に言葉を選んでお願いする。でもローザもちゃんとその辺の事は理解していた。


「アルベール、あなたの言い分も最もだと思うけど、それは孤児院という環境を貶めていると思うわ。確かに子供たちは後日駄々をこねるかも知れない。でもそれは今まで知らなかった事を知ったが故の我侭です。知らずにいれば湧き上がらなかった感情でしょう。でも、それって普通でしょう?どの家庭の子たちだって大なり小なり経験する事だわ。なら経験させなければ駄目よ。そして経験とは人を成長させるものだわ。その感情を経験せず育った者はその感情を理解できない。孤児院で育った子だからと言って、そんな歪んだ心の持ち主には私はなって欲しくないの。」

う~んっ、なんか論破されてしまった。でもその感情に対処するのはシスターたちなんだけどなぁ。そんな僕の気持ちを悟ったのかロゼッタが僕に話し掛けてくる。


「アルベール、これは子供たちにとっては一時の夢よ。大きい子たちはそれを理解できるわ。そして小さい子に言い聞かせるでしょう。でも夢は見なくては希望も湧かない。その欲望をどのように叶えるか道を示すのがシスターたちの役目のはずだわ。あなただってその一役を担いたくて孤児院へ仕送りをしていたんでしょう?」

「そっ、そうですか・・。うんっ、そうかも知れませんね。難しい問題ですけど避けてばかりいたんでは壁は超えられませんもんね。」

僕はなんだかかんだ言って厄介事を避けようとしていたのかも知れない。シスターたちが大変だと言いながら、結局は僕がその厄介事に巻き込まれるのが嫌だったのだろう。でもなぁ、ぴいぴい泣きついてくるお子ちゃまたちの相手って大変なんだけどなぁ。あいつら言葉で言っても全然聞かないし・・。


まっ、そうは言ってもこの事によって子供たちのローザに対する株は神の域に達した。ローザが余興を見たいと言ったら子供たちは去年の年越し祭で演じた寸劇まで披露したよ。くっ、こいつら僕への態度とは偉い違うじゃないか!やはりお子ちゃまを懐柔するには物が一番なのか・・。それも何だかなぁ。うんっ、シスターたちも苦笑しているよ。

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