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雑文ラノベ「王立魔法学校高等部の優等生」  作者: ぽっち先生/監修俺
出会い編
18/52

秘められた能力?

さて、親方を見送った後、僕らは3人で楽しく食事をした。ジャックもミハイルもウエストキャナルの郷土料理を食べるのは初めてだとかで、どれも美味しいと言ってくれた。おかげて店主が喜んで酒まで出してきたよ。まぁ、僕とジャックには砂糖たっぷりのミルクだったけどね。


「さて、アルベール。君も晴れて無職となった訳だが、今後のアテはあるのかい?」

熱々の砂糖入りミルクを冷ましながらジャックが僕の今後について聞いてきた。しかし、ジャックも僕に遠慮がなくなってきたな。無職という言葉は今の僕にはすげー重たいんだぞ。


「いえ、まだ何も。取り合えず魔法中学の先生に相談してみようかなと思っています。」

「そうか、まぁそれもいいがどうだろう、君が望むなら俺の学校に来ないか?」

「へっ?ジャックの?」

突然のジャックの申し出に、僕はジャックの名前にさん付けをするのを忘れてしまった。


「ああ、ミハイルさんとも話したのだが、どうも君のロープ操作魔法は君の持っている魔力ポテンシャルとそぐわない。だからもしかしたら君はまだ開花していない、内に秘めた能力を持ち合わせているんじゃないかと言う事になったんだ。」

「はぁ?」

僕はジャックの言う事がいまいち理解できていない。内に秘めた能力?この僕が?確かにロープ操作に関しては僕も驚いてはいる。なんせ並列術式がからな。魔法の並列作動って高等科の2年辺りで学ぶ技術だ。中卒の僕が独学で修得するには何年も掛かるはずなのだ。


でも何かの弾みで一部の魔法のみに特化して才能が開花するやつは結構いる。今回の僕の件はそれなんじゃないだろうか?いや、それはないか・・。そうゆうやつらって大抵裏で涙ぐましい努力をしているものだものな。


となると後考えられるのは、ダンジョンかあの転移魔法陣の影響くらいか。ダンジョンには魔力が充満している。だからそれまでの座学や校内での実技ではぱっとしなかったやつが、ダンジョン実習を受けた途端、ダンジョンの魔力を背景にいきなり魔法が上達する事があるのだ。そしてコツさえ掴んでしまえば後はぐんぐん上達してゆく。これは涙ぐましい影での訓練は関係しない。あくまで魔法を扱う要領の問題だからだ、


でも僕の場合はやっぱり転移魔法で跳んだボーナスポイントなんじゃないだろうか?なんせぶっ飛びの千キロ跳躍を経験したんだからな。あれ?でもジャックはさっき、僕の魔法ポテンシャルは大した事が無いって言っていたな。となると一体なんだ?あっ、ロープがマジックアイテム化したのか?ああっ、それなら辻褄が合うか!


「えーと、ジャックさん。僕のロープ操作に関してはロープがマジックアイテム化したのかも知れません。あのロープも僕と一緒に跳んでいますから・・。」

僕は自分で推測しておいて落ち込む。そう、ロープがアイテム化していれば、ちょっとコツを掴んだやつならあれくらいは操作できるはずだ。つまり僕のロープ無双は僕自身の能力ではなくて高性能化したロープのおかげかも知れない。うんっ、多分そうだ。


でも僕は今すげー落ち込んでます。実はちょっとは期待していたんだ。僕も一端の魔法使いになれたのかも知れないと・・。だけど真実は残酷だ。そんな期待はものの見事に砕け散ってしまった。そして、それに追い討ちを掛けるような事をジャックが言ってくる。


「ああっ、それは俺も考えた。だからあのロープに残っている魔力の残滓を調べさせて貰った。そしたら確かに君の魔法波長とは違うエネルギーをまとっている事が判ったよ。」

がーんっ!調べたんかいっ!そして違ったんかいっ!マジックアイテム説確定かよっ!


「それでな、面白い事が判ったんだ。あのロープの魔力波長は、この前俺たち3人で潜ったダンジョンのものと一致したんだ。」

「へっ?あのCランクダンジョンと?」

「ああ、完全に一致した。つまりあのロープはあのCランクダンジョンから魔力を供給されている。」

マジックアイテムの魔力供給源がダンジョンっ!それってA級アイテムって事じゃないかっ!あの工房に転がっていたロープがA級?いやいや、そんな訳ないじゃん!


「それって、たまたまあのダンジョンで使ったからじゃないんですか?」

「実は君のロープを調べさせて貰ったのは2回目なんだ。最初はドクトレイブの森で君が寝ている間にね。そして結果はどちらも同じだった。俺もあのロープの魔力波長があのCランクダンジョンと同じだと判った時は驚いたよ。なんせ最初に調べた時は、千キロも離れていたんだからね。」

う~んっ、話についていけない。それって転移魔法陣と何か関係があるんだろうか?


「つまり、やっぱりロープが転移に伴ってマジックアイテム化していたと?」

「普通に考えればね。ところがそれでは説明が出来ない部分があるんだ。実は君のロープの槍化はちょっと面白いと思ってね。ドクトレイブの森で君が寝ている内にちょっと借りて試したんだよ。そしたら俺の魔力には全く反応しなかった。」

「えっ、ジャックさんの魔力で?そんな訳ないでしょう。」

ジャックの魔力は量、質共に最高ランクのはずだ。それでマジックアイテムが扱えない訳が無い。


「いや、これが本当にうんともすんとも反応しなかった。試しに無理やり槍化しようとしたら魔力を弾かれたよ。」

「そんな馬鹿な・・。マジックアイテムが使う人を選ぶなんて話、聞いた事が無いですよ?」

「そうだね、まぁ俺の魔力が弾かれたのは魔力波長の違いが原因だったのかも知れない。でも君の魔力波長も、ロープのものとは違うから話が面倒なんだ。」

あらら、僕の波長とも違うんかいっ!高性能マジックアイテムってやつは一筋縄ではいかないね。


「僕は意識してやっていた訳ではないんですが・・。まぁ、一応操作しようと念じてはいますが・・。」

「ああ、だから先ほどの秘めたる能力という考えが出てきた。」

おおっ!これは先ほどの落ち込みを回復させて余りある事態になってきたぞ!僕専用のマジックアイテムだなんてかっこいいじゃないかっ!


「そこで国家安全対策省経由で魔法ギルドに話を通し、君を特待生として王立魔法学校に入学させてはどうかとミハイルさんから話を持ちかけられてね。」

「はぁ?」

なんで?なんでここでミハイルがでてくるの?しかも話を持ちかけたのはミハイルの方からだって?


「学校の教授たちも乗り気だそうだ。君は特異種かも知れないってね。」

「はぁ?」

おいおい、いつの間にそんな話が進んでいたんだ?そもそもミハイルと会ったのだって5日前だぞ?しかし、そんな僕の考えを遮るようにミハイルがジャックの話を引き継いで説明してくる。


「君の学資や王都での生活費は魔法ギルドが肩代わりする。これは元々そうゆう制度があるそうだ。成績いかんによっては返済も免除される場合もあるって事だ。だから君にとっても悪い話ではないだろう?」

「あの・・、特待生ってなんですか?」

「一般的には一芸に秀でつつも、家庭の事情やその他の成績が振るわないが故に入学する事が出来ない生徒を学校に招く制度さ。」

僕の質問に今度はジャックが答えてくれた。


「僕がその候補に?」

「君はちょっと特殊かな。どちらかと言うと教授たちのモルモット、検査体として手元に置きたいと思われているのかも知れない。」

うわっ、出た!でも魔法能力の研究では普通に行なわれている事だな。別に解剖されちゃう訳じゃないから害もない。ちょっと精神的なストレスはあるらしいけど。


しかし、王立魔法学校かぁ。うんっ、魔法使いを目指す者にとっては憧れのエリートコースだよな。でもそれ故に競争も激しい。入学したはいいが、授業に付いて行けずに自主退学するやつも結構いるらしい。


だけど、卒業できれば未来は明るい。はっきり言って王立魔法学校の卒業生は各方面から引っ張りだこの売り手市場だからね。初任給なんか中卒の3倍なんて当たり前の高待遇らしい。


しかも、配置される部署は最初から高技能が必要とされる花形部署だ。彼らは下積みなんかしないのよ。いきなりF1カーを渡されて優勝争いを繰り広げられるエリートたちなのだから。でもF1カーってなんだ?


「う~んっ・・。」

僕は降って湧いた夢のような誘いに戸惑い迷う。これが現実を知る前の中学3年の時なら何の迷いも無く飛びついたはずだ。だってあの頃はまだ本当の挫折というやつを知らなかったから。でも今の僕は自分の実力を知っている。王立魔法学校の卒業生たちが売り手市場なのは、彼らがそれに値する実力を有しているからだ。単なる人手不足からくる仕方無しの高倍率求人競争ではない。


だから僕は迷う。入学したはいいが、授業についていけなければ待っているのは自主退学だ。それでもちゃんとした手続きを経て、まかりなりにも自分の実力で入学した者たちなら、自主退学してもそれなりの実力を持っているからやり直しも容易だろう。


でも僕のように一発芸&モルモットとして入学させて貰った者には後悔しか残らないかもしれない。そんなやつらには、王立魔法学校中途自主退学の経歴は全然役に立たない、どちらかと言うと隠したい経歴になるはずだ。


しかし・・、しかしである!仮に最下位の成績でも卒業さえ出来れば、中卒の経歴でこの後仕事をがんばるよりも数倍安定した結果が残せるはずなのだ!王立魔法学校の卒業証書にはそれだけのチカラがあるのである!


それに院長先生にも胸を張って自慢できる。仕送りだってもっと送れるはずだ。王立魔法学校を卒業した者がいるとなれば周囲の孤児院を見る目も変わるはずだ。子供たちだって周りに自慢が出来るだろう。


うんっ、この誘いは受けるべきだ。勉強なんか結局は僕のがんばり次第だ。・・なのだが、がんばりきれるだろうか?いや、何を躊躇しているんだ。こんなチャンスは二度とないぞ!試す前から諦めてどうする!宝くじは買わなきゃ当たらないんだ。ならば踏み出すべきであろう。それが茨の道だとしても歯を喰いしばって進むんだ!


「判りました。手続きをお願いします。」

心の中では色々な葛藤が渦巻いたが結局僕はこの申し出を受ける事にした。


「おっ、結構すんなり決めたな。もうちょっと躊躇するかもと思っていたんだが。」

「はい、そうですね。でも決めました。挑戦してみます。」

「OK、それでは学校の方には私から話をつけておく。頑張りたまえ。」

「はい、ミハイルさん。ありがとうございます。」

「とは言ってももう直ぐ学校は夏季休暇に入る。君の編入は9月の新学期からだな。」

ああっ、そうなの?なんだ、また夏休みを体験できると思っていたのに。学生とぷー太郎じゃ、同じ休みでも世間の見る目が違うんだよ?仕方がない、どこかでアルバイトでも探すか。


「よしっ!それではアルベールの我が高への編入を祝して乾杯といこうっ!店主っ、この店で一番いい酒をくれ!後、この場にいるみなさんへも振舞ってくれ!祝い酒だ!あっ、アルベールは水で割るか?」

僕の決意にジャックがお祝いをしてくれる。


「お祝いですからね、少しだけ頂きます。」

「はははっ、まぁ、我が校で学べば酒の味も覚えるさ。良い酒は会話の潤滑剤だからな!」

ジャックはさすがに上流階級だ。その歳で結構な場数を踏んでいるんだな。最初のミルクは僕に遠慮していただけか。


そうこうしている内に店内にいたみんなへも酒が配られた。突然のタダ酒にみんなも上機嫌である。しかも一番いい酒らしいからね。カップをふたつもっているやつまでいるよ。


「それでは、アルベールの我が高への編入を祝して乾杯っ!」

「かんぱーいっ!」

ジャックの音頭でみんなが酒を掲げた後飲み干す。みんな中々の飲みっぷりだ。さっそく空になった器を店主に見せてお代わりをねだる者もいる。


「さぁ、みんな飲んでくれ!仕事が残っているやつは今日は仕舞いだ!なんだったら他のみんなを連れて来い!今日は飲むぞ!酒は俺の奢りだっ!」

そう言ってジャックは店主に金貨を放る。

「おおーっ。」

ジャックの奢り宣言が嘘ではない事に、店中から驚きの声が挙がった。あらら、ジャックは随分ご機嫌だな。今日はこれからダンジョン調査の進み具合を見に行くんじゃなかったのか?


僕はチラっとミハイルの方を見る。ミハイルは少し困った顔をしたが、どうやら諦めたようだ。残った酒を一気に飲み干し、店主に空になった器へ酒を注ぐよう促がしている。う~んっ、ミハイルって今公務中じゃないのか?確か国安の仕事は自分を厳しく律しなければならないって言ってた気がするんだが・・、何だかなぁ。まっ、この雰囲気でそんな事を言われたらしらけちゃうか。おっしっ!僕もちょっと飲んじゃおうかな。おっちゃん!ミルクのお代わり頂戴!


そして店内はあっという間にドンちゃん騒ぎとなった。しかしなんだな、ジャックって期末試験はないのか?今日は7月15日だぞ?

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