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雑文ラノベ「王立魔法学校高等部の優等生」  作者: ぽっち先生/監修俺
出会い編
14/52

人生初が目白押し

その後、夜遅くに国家安全対策省の独房から釈放された僕はジャックの屋敷に連れて行かれた。聞くところによると明日にはウエストキャナルへ出発するらしい。部屋にはガードナー魔法工房の部屋から持ってこさせたと言う僕の私物も既にあった。とは言っても親方から渡されたダンジョン探索用の装備だけしか僕は持っていないけどね。そして、旅には国安の職員とジャックが付き添うそうだ。


ジャックの屋敷にはパーティのみんなが集まっていた。今回の事はみんなも心配してくれたらしい。特にローザはその元凶な為か、何かと僕によそよそしくも優しかった。


「全く、あなたが変な時に跳んで来るから、こっちはいい迷惑だったわ!」

ローザは僕を見るなりいきなり突っかかってきた。でもこれってただのツンだから。ただの誤魔化しです。自分のせいで僕が国安に捕まった事に対して素直に謝れないだけだから。


「はぁ、すいません。」

「なっ、何であなたが謝るのよ!ちょっとは言い返しなさいっ!」

な?ツンデレキャラは面倒なのだよ。


「はははっ、まぁローザも反省している事だし、今回の事は水に流してくれ。どうしても気がすまないって言うならロベルトに叱って貰うからそれで勘弁してくれ。」

「えっ、なんで俺が?」

ローザの言葉の意味合いをレオンが解説してくれる。そしてロベルトは期待を裏切らない唐変木キャラだ。


「いえ、そこまでして頂く事はありません。と言うか、国安に掛け合ってくれたそうでありがとうございます。」

「うんっ、気にしないでくれ。俺たちはもう仲間だろう?」

「ありがとうございます。そう言って貰えるとうれしいです。」

「わっ、私だってお父様にお願いしたんだからねっ!」

レオンの言葉に弱冠置いてきぼり感を感じたのか、ローザが話に割り込んできた。


「はい、勿論感謝していますよ。」

「うふふっ、アルベールは優しいのね。そもそも今回の件はローザのミスなのに。」

「だからちゃんと謝ったじゃないっ!」

うわっ、レイチェル。折角話が良い感じでまとまりそうだったのに蒸し返さないでくれ。後、ローザよ、君はいつ謝ったんだ?


「さて、せっかく集まって貰ったが今夜は時間も遅い。アルベールも慣れない牢獄で疲れただろう。それに明日は俺とアルベールはウエストキャナルへ出かける事になった。無事な姿も見たことだしお開きとしよう。」

ジャックが僕を気遣ってこの再会の解散を告げてくれた。うんっ、まぁ確かに散々な一日だった。というか、こっちに跳んできてから気の休まる時はなかったけどね。


「そう・・、そうね。ならアルベール。またいつか会いましょうね。」

「あっ、はい、ロゼッタさん。おやすみなさい。」

「じゃあな、何かあったら連絡をくれ。」

「はい、ありがとうございます。ロベルトさん。」

「もうすぐ夏季休暇だから遊びに行っても良い?」

「あっ、はい。狭い部屋なので泊まる場所はないですけど、ウエストキャナルにもホテルはありますから。是非ともいらして下さい、レイチェルさん。」

「俺は是非とも君が跳んだというダンジョンを見てみたい。」

「はい、案内しますよ、レオンさん。」

僕はパーティのみんなとお別れの挨拶を交わす。うんっ、いいね、こうゆうのって。まだ会って3日しか経っていないのにみんな僕を仲間と思ってくれている。なんか泣けてきちゃうな。


さて、挨拶の締めはローザだ。ローザは小さな袋を僕に突き出して言う。

「こっ、これ!何か途中で食べるといいわ!あなた文無しでしょうっ!」

「これは・・、うわっ!こんなに?」

小袋の中には銀貨がぎっしり詰まっていた。うおっ、全部で幾らあるんだ?下手したら僕の年収くらいはいっているんじゃないのか?


「わっ、私のお小遣いからだから!気にする事はないわっ!」

ローザって小遣いでこんなに持っているの?すごいな金持ちのお嬢さまって。まぁ、金でローザの負い目が軽くなるなら貰っておこう。でも、なんでローザは僕相手にどもっているんだ?


「ありがとうございます、大切に使わせて貰います。」

「じゃあな、後は頼んだぞジャック。」

「おうっ、任せろ。戻ったら連絡するよ。」

僕がローザがくれた銀貨の重みに呆然としていると、ロベルトが代表してジャックに挨拶する。そしてみんなは帰っていった。


「さて、風呂に入って今日はもう寝よう。色々あって疲れただろう?」

「あっ、はい。お世話になります。」

みんなを見送るとジャックが僕を促がしてくる。しかし、金持ちの屋敷ってでか過ぎだよ。風呂場だけで僕の下宿先の部屋よりでかいよ?屋敷中照明で明るいし、どんだけ魔石を使っているんだ?1個くらいちょろまかしたってばれないかも知れん。いや、後が怖いからやらないけどね。


さて朝である。僕は人生初のふかふかの布団で目が覚めた。ふかふか過ぎて初めは寝付けなかったくらいである。本気で床で寝ようかと思ったくらいだ。まぁ、それでもやっぱり疲れていたんだろう。悩んでいるうちに寝てしまったけどね。


そして食堂に呼ばれた僕は、またまた人生初となるすげー豪華な朝食を脇目も振らずに平らげた。だって昨晩は緊張の為か食欲もなかったからね。だけどここのご飯って、すげー美味いんですけど?同じパンのはずなのにどこが違うんだ?ハムだって僕がいつも食べているやつの万倍は美味いよ?まぁ、サラダはドレッシングが違うんだろうけど、料理って調味料が大切なんだなぁ。でもミルクはそんなに変わらないな。これは普通だ。もっとも注がれているカップはこれまたすげー高そうだけれども。


そんな至福の朝食を食べ終えて食後のお茶なんてゆうやつを満喫していると、ジャックの屋敷を訪ねてくるやつがいた。屋敷の者が出迎えて僕たちのいる食堂に連れて来る。ああっ、こいつが今回僕たちに随伴すると言っていた国家安全対策省の役人か。ふ~んっ、年の頃は20代前半かなぁ。年齢から察するとまだ駆け出しっぽいけど、雰囲気はいっぱしの国安だ。


「私は国家安全対策省魔法対策部のミハイル・レンフレッドだ。今回の確認に付き合うことになった。」

彼は胸から国家安全対策省の証明書を取り出し前に掲げた後、ジャックに握手を求める。当然僕にはなしだ。


「ジャック・イエーガーです。彼がアルベール・ドレステンだ。」

「そうか、では準備が出来ているのなら早速出かけたいのだが。」

ミハイルと名乗った男は挨拶もそこそこに出発を促がしてくる。


「ええ、大丈夫です。それでは出かけましょう。行くぞ、アルベール。」

「あっ、はい。」

僕は慌てて台に載せておいた装備を掴みジャックたちを追う。さすがは国安、仕事で来ているだけの事はある。お茶も飲まんのだな。実にビジネスライクだ。


その後、僕らはミハイルが乗ってきた馬車で町外れへ向かう。でも向かう先は街道ではない。馬車の着いた先は普通の牧場だった。そんな牧場の中にぽつんと建っているサイロの前で馬車は停まる。


「ここの事は口外無用だ。下手に喋ると捕まるからそのつもりでいてくれ。」

「ほうっ、察するにここが国安の跳躍ポイントなんですね。」

跳躍ポイント?なんだそれ?


「察しが良いな。まぁ、王立魔法学校高等部の総合魔法学科ともなればそれくらいは知っているか。」

「噂だけですよ。」

そんなやり取りをしながらふたりはサイロの中に入ってゆく。僕も遅れじと後に続いた。


サイロの中はがらんとした空間だった。本来あるべき飼料の山もない。その代わりふたりの男がそこにいた。ミハイルは僕らをサイロの中心に立つように促がし、男たちと何やら話し始める。


「何が始まるんです?ジャック。」

ちょっと不安になって僕はジャックに問う。

「ああっ、心配ない。多分ここは国安の保有する転移魔法ポイントだ。サイロに偽装しているけど、この棟全体が魔法陣の駆動装置だと思うよ。」

「転移魔法?この棟全体が!」


ウエストキャナルまでの距離はおよそ千キロ。街道を馬車で行っても20日は掛かる距離だそうだ。だから僕も最初はミハイルの用意した馬車で街道をのんびり旅するものと思っていた。だけどさすがは国家安全対策省。そんな悠長な事はしないらしい。なんと必殺技を繰り出してきたよ。そう、僕が連行される原因となった転移魔法と同じ方法でウエストキャナルまで跳ぶそうです。


まぁ、転移魔法と言っても僕が踏んづけたやつと同じではない。国家安全対策省が保有する官品のやつだ。これは王国の各所に配置されているらしく、国家安全対策省の職員はこれを使って全国を行き来しているらしい。これは国家機密なので僕は誓詞にサインをさせられた。ここで見た事や、どこに転移魔法装置があったかなどを口外しちゃ駄目よと言う内容だ。破ったら驚きの実刑5年だって・・。ならばそんなの使わないで僕は馬車で帰りたいよ。


「転移魔法は慣れないと転移酔いが酷い。まぁ君は千キロ体験者だからそうでもないかな?」

ロベルトが男たちの方から戻って僕に話しかけてくる。


「あーっ、どうでしょう?確かにあの転移では気分が悪くなる事はなかったです。まぁ、気が張っていたせいかも知れませんが。」

「そうか、では取り合えず次の転移ポイントまで跳ぶ。そこで様子を見て、大丈夫なようなら先に進もう。」

「はい、よろしく願います。」

そして僕は、本日何回目になるかすら数え切れない人生初をまたまた経験したのであった。あっ、転移魔法はもう経験済みか。


さて、結果から言うと僕はしこたま転移に酔った。せっかく食べた朝食を全部吐いてしまったくらいだ。もっともそこら辺は普通の事らしくてちゃんと足元に桶が用意されていて、床に汚物を撒き散らす醜態だけは避けられた。


「はははっ、千キロジャンパーも国安の転移魔法には抗えなかったか。」

ジャックが僕に回復魔法を掛けながら話しかけてくる。ううっ、背中を擦ってくれるジャックの手が暖かいよ。


「はぁ、はぁ・・。ジャックは大丈夫なんですか?なんか前の時と違ってぐるんぐるんにされたような感じなんですけど・・。」

「うんっ、かなり荒っぽかったな。さすがは官給品だ。性能優先なんだな。」

「性能優先?」

「跳躍に掛かる時間の誤差を極限まで短くしているんだろう。もしかしたら転移距離も100キロを超えているのかも知れない。」

そんなお喋りをしている僕らにミハイルが容赦のない事を言ってくる。


「うん、大丈夫そうだな。ならば次の跳躍は3時間後だ。壁際にベッドが用意してあるからそこで休むがいい。」

おいおい、いまの僕の醜態を見て大丈夫とはどうゆう了見なんだ?しかも3時間後にまた跳ぶんかいっ!


まぁ、後で聞いた話では転移には手続きと転移者の体調回復が必要な為、最低でも3時間のインターバルをあける規則が国安内で決まっているそうだ。となると1回の転移距離を100キロとすると、千キロ移動するのに10回跳ぶ計算になる。うへぇ~、後9回もあれを経験するのか・・。


しかし、荒っぽいジャンプだが、時間的にはすごい短縮だ。本来馬車で20日は掛かる距離を、転移魔法なら30時間で移動できるんだからな。国安みたいな仕事をしているやつらには、あのぐるんぐるんを差し引いてもお釣が来る装置なのだろう。


そうは言っても僕に10回連続ジャンプはきつい。それはミハイルも感じたのだろう。結局初日は3回のジャンプで仕舞いとなった。


そして次の日も3回のジャンプを何とかこなし、3日目にて漸く終わりが見えてきた。本来公式に実用化されている転移魔法の最大距離は100キロのはずだが、国安の装置は少し距離が伸ばしてあるらしい。10回は必要なはずと踏んでいたが9回で終わってくれた。


そして今、最後のジャンプを終えて僕は懐かしのウエストキャナルへと到着した・・、らしい。うんっ、着いた事はついたらしいが、僕は今それどころではない。9回ものジャンプを経験したにも関わらず僕は転移酔いに全然対応できなかった。ミハイル曰く、ここまで転移酔いを引きづるのは珍しいらしい。初回にでろんでろんになったやつでもさすがに9回目にはかなり慣れるものなんだとか。


まぁ、それでもジャックに回復魔法を掛けて貰い1時間ほど休むとなんとか動けるようになった。そして漸く僕は国安の秘密転移装置のある場所から外出た。


そこには夕日に染まる懐かしのウエストキャナルの風景が広がっていた。うん、懐かしいね・・。いや、ちょっと懐かしすぎないか?何だか僕はこの風景に覚えがあるんだが?あれ?これって孤児院の近くにあった牧場の風景によく似ているんだけど?あれ?あの山ってマウントチャイニアだよな?あれれ?あの木々の向こうに見える黒い屋根の建物って・・。


孤児院じゃんっ!


間違いないっ!ここって僕が育ったアミダニアン孤児院の隣の牧場だよっ!げげげっ、あの牧場って国安の秘密基地だったんかいっ!どうりで牛とかをあまり見かけなかった訳だ。孤児院の裏なんて殆ど僕たちの遊び場と化していたからな。ほんと、シスターたちも気にせず洗濯物とか干していたし、畑すら作っていたもの。


げげげっ、これは驚きの新事実だぜ!ミハイルはこの事を知っているのかね?何にしてもびっくりだ。

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