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魔力ゼロの魔法使い〜俺の超能力は異世界でもチートでした〜 作者:鬱沢色素

サザラント王編

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47/50

47・奇跡の業

「ここまでよくぞ勝ち上がってきたな。しかし今度ばかりはそうはいか——グハッ!」


 準決勝もすぐに終わりました!

「ふう! 後は決勝だけか!」

 腕で額の汗を拭う。
 なかなか疲れた。

 控え室に戻って、椅子に腰掛けていると、

「——ん? なんだこの歓声は」

 この控え室にいた状態でも、外から震えんばかりの歓声が聞こえてきた。
 今日一番の歓声じゃないだろうか。

「外でなにが起こっているんだ?」

 まあ俺には関係ないか。
 後は決勝を控えるだけだし。

 それにしても——やっぱり決勝の相手はマリーズになるだろうか。
 マリーズも順当に勝ち抜いていって、準決勝まで駒を進めているらしいからな。
 マリーズの実力から考えて、準決勝も突破して決勝にやって来ることは間違いない——。

「……マスター」
「うおっ!」

 考え事をしていたものだから、後ろから急に声をかけられ驚いてしまう。
 座ったままジャンプをかまして、そのまま方向転換をすると、

「なんだ……マリーズか」
「…………」

 マリーズは元からテンションが高いじゃない。
 それにしても、今はより一層暗いオーラをまとっているような……。

「どうした、マリーズ。そんな暗い顔して」
「……負けた」
「ふうん?」
「準決勝で負けた。これでマスターとは戦えない」

 淡々とした口調ながら、その声には悔しさが滲み出ているようであった。

 マリーズが準決勝で負けた?
 先ほどの歓声はマリーズ敗北によってだろうか。
 それにしては、マリーズの姿は全体的に汚れてなく、とても戦ってきたものとは思えない。

「一体相手は誰なんだ? マリーズは任せるなんて」
「奇術都市の領主——だったと思う。気を付けて。ヤツは奇っ怪な技を使うから」
「そうなんだ」
「うん。いつの間にかステージの外に追い出されたと思ったら、体が動かなくなっていた」
「そのまま十カウントをされて負けた、と」

 俺の問いかけに、マリーズはコクリと首を縦に動かした。

 ——奇術都市の領主か。
 確かやたら俺に絡んできて、キャンディーをくわえている男の子だよな。
 強キャラ感は最初から醸し出していたけど、グーベルグのエースに勝つとは。


『決勝戦が執り行われます。選手の方は速やかにステージの方までお越しください』


 思いを馳せていると、アナウンスの声が聞こえてきた。

「おっ、時間みたいだな。じゃあマリーズ、行ってくるよ」
「マスター。負けないで」
「おいおい、誰にそんなこと言ってんだ。俺が負けると思っているのか」

 そう言って、俺はマリーズの頭をくしゃくしゃと撫でる。
 マリーズってちっちゃいし、まるで猫を愛でているような気分になって癒されるんだよなー。

「俺がマリーズの分までかたきを取ってやるから」

  ◆

『さて! いよいよこのサザラント最強決定戦もとうとう決勝戦までやってい参りました! なんと決勝は領主対決! 領主ともなると、やっぱり腕っ節も強いものですね〜。冒険都市の領主も奇術都市の領主も、どちらも魔法を使って相手を叩きのめしてきました。魔法VS魔法——さて、どちらが勝つのか全く予想出来ませんね〜』


 実況の声に、今日一番の歓声。
 スタジアムは満員。
 大歓声とぎっしりと埋め尽くさんばかりの観客をステージから見ているだけでも、目が回りそうであった。

「人酔いしそう……」

 俺ってシャイだから、人が多いのって苦手じゃん?
 元の世界においても、祭りとか嫌いだったし。

「……ってか魔法じゃないんだけどな」

 まあこれについては今更ツッコミを入れても仕方ないだろう。
 改めて、俺は真正面の敵を見据える。

「まさかお前が決勝に来るとはな」
「僕はお兄ちゃんが決勝に来るのは予想出来ていたよ!」

 奇術都市の領主——アルヴィン。
 アルヴィンは相変わらずキャンディーを右手に、ニコニコと笑みを浮かべている。
 その様子からはとてもトーナメントを勝ち抜き、マリーズを打ち破ったようには見えなかった。

「お前、マリーズを倒したってのは本当か?」
「マリーズ? 準決勝の棍棒を使っていた女の子? うん! 運良く僕が勝つことが出来たんだよ〜」

 マリーズ曰く、手も足も出なかった感じだからアルヴィンの言っていることは嘘だろう。
 もしくは謙遜か。

 ……いや、謙遜じゃないか。アルヴィンがとてもそんな気を回せるとは思えないし。

 やっぱりこうして見ると無邪気な女の子にしか見えないな。
 まるで妹みたいだ。
 ……元の世界でも妹なんていなかったけど。


『始め!』


 そんな感じで会話をしたら、いつの間にか開戦の火蓋が切って落とされた。
 俺は構え——というわけではなく、いつもの自然体のままアルヴィンを視界で捉えたまま。

「お兄ちゃん」
「ん? なんだ」
「どうして僕がお兄ちゃんをお兄ちゃんって言ってるか分かる?」
「知るかっ!」
「ふふふ。僕はお兄ちゃんに親近感を覚えていたんだよ。『あっ、この人僕と同じ種類の人間だ』ってね」

 そう言って、アルヴィンはウィンクをした。
 うむ。男のくせに一つ一つの動作がやけに可愛い。
 アルヴィンはキャンディーを一舐めしてから続ける。

「その予感はトーナメントでお兄ちゃんの戦いを見てから確信に変わったよ。お兄ちゃんの使う技も『魔法』なんかじゃないんだよね」
「お前、一体なにを言ってるんだ」

 ——ご名答。だが、俺の使う超能力が魔法じゃないことに気付いたのは、異世界ではアルヴィンただ一人だけだった。
 もしかしたらこいつ——。

「もうここまで言ったら分かってるんじゃないかな。お兄ちゃんも僕と同じ——」

 アルヴィンがキャンディーを持っていない方を手を掲げる。


「『奇跡のわざ』を使える一人だってこと——」


「——!」

 今まで感じたことのない感覚。

 ふわぁっと体が持ち上がった瞬間。
 俺の体はそのまま後方に吹っ飛ばされてしまったのだ。

 アルヴィンは指一本俺に触れてないというのに——。
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