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魔力ゼロの魔法使い〜俺の超能力は異世界でもチートでした〜 作者:鬱沢色素

サザラント王編

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46/50

46・チョロインアリサ

「一回戦の相手は弱くて助かったな……」

 やっぱ一回戦は準備体操がてらにしたいしね。
 あのおじいちゃん、よくよく考えれば見たことがあったような気がするけど、気のせいだろう。

「マリーズとアリサの試合も見るか」

 一回戦は人数も多いこともあり、これから時間を持て余すことになる。
 控え室からモニターで試合を観戦することも出来る。
 このモニターってのが不思議なもので、魔石を駆使した最新式の機械らしいのだが、仕組みはあまり理解出来ていない。

「でも控え室って他の選手もいるんだよな……」

 俺、やたら他のヤツ等に絡まれることが多いしな。
 いちいち相手にするのも疲れる。
 どうせなら女の子に絡まれたかったものだ……。
 なのでここは控え室に行かず、観客席まで向かう。
 観客席に辿り着くと——、


「うわっ! どうしてフェイク選手がここにっ!」
「一回戦で優勝候補のヴァロ領主を倒したのに……息切れ一つ起こしてないっ?」
「サイン貰っておいたら、後で高値で売れるかな?」
「こら! 止めとけ。逆鱗に触れたら、ヴァロ領主を葬った魔法で吹っ飛ばされるぞ」


 さっきまで試合に集中していた観客の視線が、一斉に俺へと向けられる。

「……ここでも落ち着けないのかよ」

 ぼそっと呟く。
 まあどうやら怖がってくれているみたいで、直接話しかけてこないからこれでもいっか。
 可愛い女の子ならどんどん話しかけてくれていいんですよ?

「さて——おっ、丁度マリーズの試合が始まろうとしているのか」

 席の一番前列まで移動して、試合風景を眺める


『——始め!』


 アナウンスの高い女の声。

「ふふふ、行くわよ。私の魔法に酔いしれなさい!」

 マリーズの相手は大人の女性といった感じの人だった。
 三角帽子を被って、黒いローブを羽織っている。
 厚着しているためか体の線は見えにくいけど、それでも幼児体型のマリーズとは違う大人の魅力があった。

 そんな女性に対しても——マリーズは怯むことなく棍棒こんぼうを構える。

「アイスアロウ!」

 女性の高らかな声が観客席まで届いてくる。

 ——試合のステージから結構距離が離れているのに声が離れているのは、どうやらこれも魔法やら魔石の使用効果らしい。
 対戦相手の女性の手の平から氷の矢が飛び出した。
 それは一直線にマリーズへと伸びていき、直撃——

「マスターの力に比べたら遅い」

 ——しようとした瞬間、マリーズは目にもとまらぬ早業で棍棒を振り回した。

「なっ——」

 女性が息を呑む。
 それは席にいる観客も同じことであった。
 氷の矢が棍棒によって粉砕されてしまったのだから。

「次はマリーズの番」

 淡々とそう宣言し、マリーズを地面を蹴り上げる。

「くっ——ファイアーボール!」

 撃墜するため火球を放つが、それはマリーズの頬を掠めただけで直進を止めることが出来ない。

「マリーズはマスターの地獄の特訓を耐えた」

 ——まあそれ程、地獄でもなかったけどな。
 内心そうツッコミを入れている間に、マリーズは女性の懐へと入り込んだ。

「——フ、フォトン——」

 急いで女性は魔法を展開しようとするが、

「遅い」

 マリーズがぼそっと言い、棍棒は下から上へと振り上げる。

「グ、グハッ——」

 顎に強烈な一撃をお見舞いされ、女性の体が宙を高く舞う。
 落下し、ステージの床に何度か小さくバウンドする。

「……マリーズには目標がある。決勝でマスターと戦うこと」

 トコトコと女性が倒れているところまで歩き、首根っこを掴む。
 そのまま床をずるずると引きずって、ステージの外に女性の体を放り投げる。

「……カウント」
『あ、あっそうですね!』

 俺の時といい、この審判大丈夫だろうか。

 ふむ。
 女性がぴくりとも動き出さない様子を見る限り、テンカウントを聞かなくてもいいだろう。


「な、なんだあの可愛い女の子は!」
「勝つのは絶対魔法都市の代表選手だと思ってたのに」
「ど、どこの代表選手だ……冒険都市グーベルグだとっ? フェイク領主といい、グーベルグはどうなってるんだっ?」


 観客が騒然となっている。

「うんうん、これこそ俺の可愛い奴隷だ」

 十カウントが響くと、さらに歓声が大きくなった。
 マリーズも成長したものだ。
 そんじょそこらのヤツじゃ、マリーズに太刀打ち出来ないだろう。

「やはり決勝はマリーズか」

 そう口にして、観客席を去る。
 人混みは苦手だからだからね。

  ◆


「ククク……騎士都市の領主を倒した実力見せてもらお——グハッ!」
「グハハ! 面白ぇ! オレに立ち向かってくるヤツが——グハッ!」


 ダイジェスト形式になるが、無事に二回戦・三回戦も突破した。

「あっという間に準決勝だな……」

 この調子だったら、準決勝も楽勝だろう。
 それにしてもトーナメントに相手が弱すぎる。
 もう少し手応えのあるヤツがきてくれないかな……。


「あれ? アリサ、負けちゃったのか」


 控え室で休憩していると、アリサが肩を落として戻ってきた。

「クッ、すまない。グーベルグの顔に泥を塗ってしまった」
「いやいや、そんな大したことじゃないから」
「後一歩のところだったんだがな。足が思うように動けず、ステージに戻ることが出来なかった」

 うーん、かなり落ち込んでいるようだ。
 アリサはどうやら一回戦で負けてしまったらしい。
 アリサ、弱ぇ……とちょっと思ってしまったが、それを口にしてしまう程俺も性格は悪くない。

「そんなに落ち込むなよ」
「……ダメだ。私なんかダメなんだ……」

 声のトーンがどんどん低く、そして小さくなっていく。
 体も小さくして、今にもアリサが消えてしまいそうだ。
 半泣きのアリサの姿も可愛いけど、やっぱり女の子がしょぼーんとしていたら居心地が悪い。

「ほら、気にするな」

 アリサの頭を撫でる。

「——っ!」

 アリサの顔が強ばり、体が硬直する。

 ん? ちょっと大胆すぎたかな。
 童貞なので、女の子の扱い方がよく分からない。

「そんなに一緒に買い物したかったのか?」
「そ、そうだっ!」

 声を振り絞るアリサ。
 もしかして、アリサは『お一人様』っていうのが苦手なんだろうか。
 それなら俺も気持ちは分かる。元の世界からではあるが、俺だって初めての飲食店に一人で行くのは苦手だった。

「頑張ったご褒美だ。一緒に買い物行ってやるよ」
「そ、それは本当かっ!」

 がっとアリサは顔を近付けて、興奮したように言う。

「お、おう……」
「約束だぞ! 約束したからな!」

 いや、別に問題ないんだが、ここまで勢いよくがっつかれたら戸惑ってしまう。
 そんなに一人で買い物に行くのが恥ずかしかったのだろうか。

「これで一件落着だな……さて、そろそろ準決勝に行ってくるよ」
「頑張ってくれたまえ」

 アリサに見送られる形で、控え室を出る。
 こんなこと言っておいて、決勝にも行けず負けちゃったらカッコ悪いからな。
 今までの相手は弱かったけど、慢心はいけない。

「うっし」

 握り拳を作り、気合を入れ直して試合会場へと向かった。
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