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魔力ゼロの魔法使い〜俺の超能力は異世界でもチートでした〜 作者:鬱沢色素

サザラント王編

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48・二人目の超能力者

「くっ……」


 ステージ外の壁に叩きつけられ、現在進行形で体がみしみしとめり込んでいく。
 今すぐ脱出しようにも、自分の意志で指一本動かすことが出来なかった。

「……驚いたな。お前も超能力を使うのか」
「超能力? なにを言ってるの。これは奇跡だよ。君と僕は——神様から奇跡を授けられたんだよ」

 腕を広げ、天を仰ぎ見ながら答えるアルヴィン。


『おーっとぉぉおおお! いきなり奇術都市領主、アルヴィン選手の魔法が炸裂だぁぁああああ! 今回も一発で終わってしまうのか?』


 まさか俺以外にも超能力を使えるヤツがいるなんてな。
 これはサイコキネシスの超能力だろう。
 だんだん体が壁にめり込んでいく中、俺は冷静にそう分析していた。

ワン! ツー!』

 カウントがスタジアムに響く。

「ふふふ、本当に——魔法なんてものと一緒にしないで欲しいよね」

 アルヴィンが恍惚の表情で続ける。
 ……超能力をかけられるのって初めてだから、なかなか新鮮な気持ちになるな。
 動けないのはアルヴィンがサイコキネシスをかけ続けているからであろう。

スリー! フォー!」

 カウントは止まらない。

「僕は神の代理人なんだ! この力さえあれば世界を支配出来る! その証拠にトーナメントでは敵なし! お兄ちゃんですら一撃で倒すことが出来る!」

 なかなか悦に入っているようだな。
 うーん、お遊びにもう少し付き合ってやってもいいんだがな。

 同じ超能力を使う者として、親近感を覚えるのは事実だし。
 ただいい加減体の節々が痛くなってきた。

エイト! 九(ナイン!)——』

 十カウントが告げられようとした瞬間。

「ふん」

 ——壁から体を離し、そのままミサイルのようにステージへと飛んで戻った。

「えっ?」

 アルヴィンの前に着地する。
 口を半開きにして、キャンディーを床に落としてしまっていた。

「そんなビックリすることか? 俺が超能力を使えるってのはお前も気付いていたんだろ?」
「バ、バカな……僕の奇跡からは何人なんびとたりとも逃れられないはず……!」
「今までそうだったかもしれないな」

 腕を回して、骨をポキポキと鳴らす。


 ——サイコキネシスの超能力。


 俺が一番得意とする超能力でもある。
 サイコキネシスで押さえつけられていた体を、同じサイコキネシスで無理矢理動かしたのだ。
 アルヴィンはなかなか強力な超能力を使うものの、俺にとっては赤子をひねるようなもんであった。

「さて——続きを始めようじゃないか」
「——さすがお兄ちゃんだね。楽しい遊戯はまだまだ終わらない!」


『おーっとぉぉぉおお? 二人の体が——浮き上がって?』


 俺とアルヴィンの体が宙に浮き上がる。


 ——浮遊の超能力。


 これによって、床から数メートル浮き上がったところで止まり、そしてお互いの目を睨み合う。

「いくぞっ!」
「きて!」

 アルヴィンに向かって突進をかます。
 当たる寸前で体を翻されて、回避されるがすぐに方向転換をしてパイロキネシス——つまり発火の超能力を発動するため指を鳴らす。
 するとアルヴィンの体が発火し、あっという間に炎に包まれてしまった。

「さすがだね、お兄ちゃん! でも僕はこんなものでは終わらない!」

 炎に包まれながら冷静にアルヴィンはパンと手を鳴らした。
 その矢先、なんとあれ程燃えていた炎が消滅してしまったのだ。

「本当にお前に驚かされる。まさかアンチサイを使えるとはな」

 アンチサイ——超能力や魔法を無効化する超能力である。
 アルヴィンはサイコキネシスだけではなく、俺と同じように二つ以上の超能力を使えるみたいだ。

「お兄ちゃんにもビックリだよ。やっぱりお兄ちゃんは僕が思っていた通りの人物だった」
「減らず口を叩いている余裕はあるのかな?」

 宙に浮き上がった体をぶつけるようにして体当たりをかます。
 それを迎え撃つアルヴィン。
 交錯する時——アルヴィンの口元には笑みが浮かんでいた。
 ふと自分の口元に手を当ててみれば、同じように吊り上がっていた。

 ——俺はこの戦いを楽しいと思っているのか?

 サイコキネシス、パイロキネシス、触手の超能力、千里眼、マインドリーディング、エネルギー弾、テレポーテーション——。

 俺が使えるありとあらゆる超能力を駆使する。
 それに対して、アルヴィンは期待に応えるようにして超能力で相殺してくれる。
 やがてステージの床、そして壁は削られ観客席にまで超能力は飛び火した。


「あ、危なっ! ってか危険だ危険。逃げろ逃げろ!」
「二人が一体なにをやっているか分からないよ……」
「凄い戦いなのは分かるけど、速すぎて見えない……!」


 観客が逃げ惑い、スタジアムから去っていく姿が見える。
 そう——俺達との戦いに最早観客はいらない。
 俺とアルヴィンはお互いの意地をぶつけ合っているのだ。
 二人の力は拮抗していた。
 ここまで実力が対等なのは元の世界と比べても初めてだったので、汗をかいてしまった。

 しかし、やがて——。


「ガッ!」


 アルヴィンが後方に吹っ飛ぶ。
 そのままの勢いで床を滑っていき、壁にぶつかったところで動きが停止した。

「勝負あったな」

 アルヴィンに近寄り、見下ろしながらそう告げる。

「……あーあー、負けちゃったか」
「まさか俺相手にここまで対抗出来る相手がいるとは思っていなかったぞ」
「僕もそうだよ。なんだかんだで最終的に勝つのは僕だと思っていたのに」
「まあ、お前は誇ってもいいと思うぞ。元の世界と合わせても、俺をここまで本気にさせたのはお前が初めてだから」
「も、元の世界……?」

 アルヴィンが首を傾げる。

「それにしても酷い顔だな」

 アルヴィンの顔はススだらけ。それに服も所々千切れたり破れたりしていた。
 戦いの最中、アルヴィンはキャンディーを手放してしまったせいでその手にはなにも持たれていなかった。

「ハハハ、お兄ちゃんも同じだよ」

 とアルヴィンが無邪気に笑った。


 ——楽しかった。


 戦っていて、こんな感情が生まれたのは初めてだった。

「それにしても、どうして僕はお兄ちゃんに勝てなかったのかな? 多分、奇跡の力は同じくらいだったと思うのに……」

 不思議そうにアルヴィンが口にする。

「そうだな……多分経験の差じゃないか?」

 きっとアルヴィンはこの奇跡の業のせいで、今まで敵らしい敵に遭遇してこなかった。
 それは俺も同じだけど——元の世界で何度も命を狙われているため、それを潜り抜けるために超能力を使わなければならなかった。
 それこそが俺とアルヴィンの差。

 正直、この異世界で立ち向かってくる魔法だとか敵より、元の世界であった銃の方が強かったんだよな〜。

「じゃあ——もう戦いは終わりにするぞ」

 俺はアルヴィンに手の平を向ける。

「う、うん。優しくしてね?」
「なんだ。女の子みたいなことを言うんだな」
「——お兄ちゃん。トーナメントが始まる前に言おうとしたけど、僕は女——」

 アルヴィンが全てを言い切る前に、エネルギー弾を発射する。
 スタジアムを包み込むような光。
 目の前が真っ白になりなにも見えなくなった。


 ——エネルギー弾の光が消えると同時。


 エネルギー弾の衝撃によって、服が完全になくなってしまったアルヴィン。
 そのアルヴィンの姿を見て、俺は驚くことになったが、それはまた別の機会に話すとして——。

 俺は戦いに勝利し、誰も見ていない中で腕を天に突き上げるのであった。
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