26・これからのこと
今回少し短めです。
「マコトさん……無事に戦いが終わりましたね」
一回目の復讐であるフーゴ騎士団長を打倒して。
俺達——エコーと一緒になって、とある場所に来ていた。
グーベルグの滑らかな山道を歩き、町並みを眺めることが出来る丘のような場所である。
そこに用意されたベンチに——俺達は隣り合って座った。
「ああ」
「《ネドトロス》のリーダーになったことを伝えれば、きっとマコトさんはAランクになれますよ!」
「…………」
「この調子でSランク、SSランクにもなりましょう!」
「…………」
「SSランクにもなれば、ギルドから定期収入も得られることが出来ます。それは不安定な冒険者にとっては大きく、さらには街中から尊敬の眼差しで——」
「……マコトさん?」
エコーの言葉にほとんど沈黙で返していたら、下から顔を覗き込んでくる。
ドジなヤツだけど、エコーは間違いなく美少女である。
可愛い。
「えぃ」
「ふぇえ?」
思い立って、エコーのほっぺをむにゅとしてみる。
柔らかい。
癖になりそうだ。
「ハ、ハホホハン?(マ、マコトさん)」
「えいえいえい」
「ふぇえええ!」
ほっぺが変幻自在。
吸い込まれるような白肌。
むにゅむにゅむにゅ……。
ああ、こうしていると心が浄化されていくようだ。
「……よし!」
「ふんぎゃ!」
ほっぺを思い切り伸ばしてやって、離してやるとバチンという音を立ててエコーの顔が元に戻る。
「急に手を離さないでくださいよ〜」
ポコポコとエコーが叩いてくる。
それを適当に受け流しながら、俺は考えをまとめていた。
——そうなのだ。
このことをギルドに伝えれば、俺は正式にAランク冒険者になれるだろう。
Aランク冒険者になれば、高ランクの依頼もバシバシ受けられるに違いない。
そうなってしまえば、俺が最高のSSランクになるのも時間の問題。
エコーに聞く限り、SSランクになれば色々とメリットがあるらしい。
この異世界で好き放題していくためには、SSランクという地位はかなり役に立つだろう。
——しかし。
「それで本当に良いのかな」
「マコトさん?」
俺を叩いてくるエコーの手が止まる。
「だって、それって地味だろ」
「なに言ってるんですか?」
「地道にコツコツとランクやレベルを上げる……そんなの俺の性に合わない」
「なに言ってるんですか。何事もコツコツが大事ですよ」
「それは今までの俺の戦い方を見ても思うか?」
「そ、それは——」
エコーの言葉が詰まる。
俺は超能力によって、凡人がするであろう努力をいくつもショートカットしてきた。
そんな俺が今更地道にランク上げ?
NO、NO、NO。
そんなのナンセンスだ。
「じゃあ冒険者稼業は辞めるんですか? 《ネドトロス》という組織を得ているから、今度からは悪の道に……」
「冒険者は辞めない」
「へ?」
「いや——ある意味では冒険者を辞めることになるかもしれないが」
「マコトさん。なにを考えているか早く言ってくださいよ」
「悪い悪い」
前置きが長くなりすぎたか。
「よっ、と」
ベンチから立ち上がる。
グーベルグの街並み。
とても洗練されていて活気もあり、永住するにはもってこいの場所であろう。
でもそれだけでは足りない。
「俺は——」
エコーの方を振り返って。
腰に手を当てて、俺は当面の指針を告げる。
「取り敢えずギルドを乗っ取ろう」
第一部完です!
一区切り終えて、次から二部進めていきます。