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魔力ゼロの魔法使い〜俺の超能力は異世界でもチートでした〜 作者:鬱沢色素

騎士団長編

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25/50

25・最初の美酒

 ——という感じで。

 未来予知の超能力だか魔法だか、なんだか知らないが不思議な技を使って。
 見事、マコトは騎士団の闇討ちを当ててみせたのだ。
 そうなったら話が早い。


『奇襲をしかけてくる騎士団に、奇襲をしかけてやろうぜ』


 単純明快な策。
 しかしそれは自分の策に絶対の自信を持たなければすることが出来ない。

「ど、どうしてだ! なにが起こっている?」
「まさか俺達の中に裏切り者がっ?」
「バカ……滅多なことを言うんじゃねえ。とにかく今はこの状況を乗り越えることを考えろ!」

「良い気味だね」

 塔の中で虫けら共が騒いでいるのを見ると、絶頂してしまいそうな快感が背中を走る。

「はぁぁあああああ! サンダー・コメット!」
「ぐはぁっ!」

 巨大な雷の球体を騎士団の連中に直撃させる。
 外では残りの《ネドトロス》のメンバーも戦っている。
 普通なら、いくら奇襲をしかけたとしてもアリサ達が騎士団に勝つことは不可能であった。
 だが、マコトの使う『身体強化の超能力』とやらで、騎士団の一人一人と互角に渡り合うことが出来る。

「私達に刃向かったことを後悔するんだね——フレイム・ランサー!」

 アリサが一つ魔法を放てば、五人の兵士が吹っ飛ぶ。
 元々、アリサの力は騎士団一人一人に匹敵していたのだ。
 そんなアリサにマコトの身体強化の超能力が加われば——答えは言わなくても分かるだろう。

(ふん……やはり騎士団長とやらはいないか)

 戦いながら、キョロキョロと目を動かして騎士団長の姿を探す。
 マコトの未来予知通りなら騎士団長は——。

(後は任せたよ。マコト)

 マコトの顔が脳裏にかすめるものの。
 すぐにイメージを振り払い、アリサは目の前の戦いへと集中していった。

  ■

 塔の中、そして外への混戦の模様。
 俺は塔の最上階で『千里眼』の超能力を使うことによって、眺めていた。

「なかなか壮観だな」

 どんどん騎士団が押されていっている。
 ただでさえ俺の身体強化の超能力によって、《ネドトロス》のメンバーは強くなっているのだ。
 それ上、奇襲で混乱していたら……。
 こんな状況になるのも仕方ないだろう。

「この調子だったら騎士団に楽勝で勝てるな」

 目は窓の外。
 意識は千里眼によって、塔の内部の状況を見ていたら——。


「楽勝? 油断は大敵だぞ——フェイク」


 後ろから声が聞こえた。
 俺はそのことを、未来予知の超能力によって予め知っていたので、余裕を持って振り返った。

「ククク、貴様はこの騎士団の長と言ったか」
「そうだ——いくら敗北必死の状況であっても、貴様の首さえ取れば戦いは終わる」

 ——塔の最上階まで上り、俺に声をかけたのはフーゴであった。

 フーゴは金色の鎧に身を包み、巨大な剣を携えている。
 その剣のサイズは子どもくらいあるだろう。
 そんな大きな剣をフーゴはいとも簡単に持っていた。

「結局、最後は俺と貴様の勝負ということか」

 重い腰を上げる。

「そういうことだ。貴様は少々優れた魔法を使うようだな。その魔法でオレの心臓を貫けるものなら——」
「いや——どうせなら、貴様と同じ剣で勝負してやる」

 俺は部屋の隅に置いてあった剣を手に取る。
 フーゴのものと比べて、その剣は細く今にも折れてしまいそうであった。

「——っ!」

 それを見て、フーゴは一瞬顔を強ばらせる。
 しかしすぐに口元に笑みを浮かべて、

「ほぉ——オレも舐められたものだ。この剣一つでオレはドラゴンを倒せるのだぞ? そのオレと剣で立ち向かうとはな」
「ふん、ドラゴンを倒したくらいで調子に乗るな」

 ドラゴンくらいなら。
 俺だって、王都から出てエコーを助けた時に一発で葬った。

「そんなことを言いながら、どうせ魔法を使うつもりだろう?」
「いや、魔法は絶対使わない」

 魔法はな。

 ——そう言ってから、俺とフーゴは睨み合いしばしの沈黙。
 やがて塔のどこかで爆発音が聞こえ、


「はあっ!」


 それが開戦の合図となったのか。
 フーゴは剣を振り上げ、俺に襲いかかってきた。

「ふんっ、遅すぎるな」

 鼻を鳴らす。

 ——それは嘘ではなかった。
 身体強化によって十倍……いや、百倍にまで押し上げられている俺の力。
 フーゴの動きが止まっているように見えた。

「はあっ! はあっ!」

 何度も剣で一刀をかましてくるフーゴ。
 俺はそれを冷静に、細い剣で受け流していた。

 無論、この細い剣でフーゴの大剣だいけんを受け止めれば、根本からポキッと折れてしまうだろう。
 剣にも超能力を施し、強化しているためこのように互角に渡り合えるのだ。

「はあはあ……どういうことだ?」

 このままじゃらちがあかないと思ったのか。
 一旦、フーゴがバックステップをし俺から距離を取った。

「何故、そのような貧弱な剣でオレの攻撃を受け止めることが出来る? やはり魔法で——」
「だから魔法じゃないって」

 この異世界に召還されてから、同じことを何度も繰り返されてきた。
 いい加減、飽き飽きしてきた。

 終わらせよう——。

 俺は剣を放り投げ、手の平をフーゴの方へと向けた。

「やはり貴様はペテン師だな。まあそんな胡散臭い仮面を被っているからして、卑怯なことは分かっていたが……」
「ああ? じゃあ仮面外してやろうか」

 俺はもう一方の手で仮面をゆっくりと取った。

「なっ——!」

 フーゴが言葉を詰まらせる。

「……思い出したか?」
「き、貴様は異世界人! ど、どういうことだ。貴様は死んだんじゃ……」
「あの偽物の死体に騙されたのか」

 ククク、と笑いがこぼれる。
 なにもかも、こいつは滑稽なヤツのようだ。
 全てが思惑通りに進みすぎて、気持ちよささえも感じてくる。

「では魔力ゼロ——というのは賢者様の間違いだったのか? 魔法でも使わないと、オレと対等に立ち向かえるはずがない」
「だから——いや。お前がただ弱いだけなんだ。俺、本物の剣なんて触るの初めてだぞ? そんな俺に……魔法ならともかく、剣で負けるなんてな。お前、もしかしてメッチャ弱いんじゃないか?」
「——クッ! 嘘を吐くな。魔法も使わずに……いや、でも魔力ゼロというのは?」

 フーゴが混乱している。
 確かに——魔法ではないが、超能力を使っているという意味では俺は嘘を吐いているのだろう。
 実際問題、フーゴの剣技けんぎはまあまあのもののように思えたし、超能力を使わなければさすがの俺でも勝てないだろう。

「ククク……」

 だが、俺はフーゴの絶望を味あわせてやる。

 ——今までの鍛錬は嘘だったのか?
 ——魔力ゼロの少年だぞ? 本当に剣技だけで?
 ——オレは本当に弱いのか?

 フーゴは頭の中で、そんな自問自答を繰り返しているだろう。

「さて——剣で俺に勝てないことは分かっただろう」
「——はっ、ほざけ。まだ勝負は……」
「ほう? あれ程やって、まだ実力差が分からないのか?」
「そ、それは……」

 フーゴの言葉が淀む。

 ——フーゴはきっと、優秀な剣士でもあったのだろう。
 だからこそ、超能力で強化した俺との絶対的な実力差を感じているに違いない。

 ——こいつにはもう勝てない。
 ってな。

「だから最後は魔法で葬ってやる」

 手の平に熱が込められていく。

「くっ、例えそうであっても! オレは敵を前に背を向けるわけにはいかないのだ!」

 フーゴが特攻してくる。

 ——ああ、お前の動きは飽きたよ。
 だから全てを終わらせよう。

 俺はエネルギー弾を手から放った。
 エネルギー弾を避けることも出来ず、フーゴがその剣で斬り裂こうとしてくる。
 だがそんな簡単にいくわけもなく、剣が手から離れ、そしてそのままフーゴにエネルギー弾が直撃する。

「オ、オレが……こんなところで朽ちるわけには……っ!」

 なんとか吹っ飛ばされず、その場に止まろうと気力を見せたフーゴ。
 しかし——それがフーゴの最後の姿であった。

「ぐはっ!」

 やがてエネルギー弾に勢いに負け、フーゴの両足が床から離れ壁へと激突する。

 いや、壁に激突しだけけでない。
 そのまま壁を突き破り、空の彼方へと消えていってしまったのだ。

「ふう……久しぶりに本気を出しすぎたか?」

 椅子に座り直し、穴が空いた壁から夜空を見上げる。
 でもすっきりした。
 まだ復讐は三分の一しか済んでないわけだけど。

「でも……まあ、今日くらいは勝利の美酒に酔っておこうか」

 指を鳴らすと、右手にワイングラスが持たれる。
 超能力によって赤い液体が注がれ、それを口へと傾けた。

 ——勝利の美酒はちょっと苦かった。
新連載の方をはじめましていただきました。
よかったらあわせてお読みください!
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