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24・未来予知の超能力

【side フーゴ騎士団長】


 ——今度は舐めてはいけない。


 敗北した、とは思っていない。

 ただ奇襲をかけられ、こちらの人数も少なかったことから起こってしまった事故。


「騎士団長、準備が整いました」

「うむ」


 フーゴの前には——ざっと千人の騎士団。

 鎧を身につけた千人が並んでいる光景は壮観で、ぎゅっと集中力が増していく。


「諸君! 敵は北でモンスターが蔓延っている森にいる! 騎士団の力を見せてやるのだ!」

「「「「おーっ!」」」」


 地を震わせるような声。

 フーゴ達、千人の騎士団はまだ朝日が昇っていない頃に王都を出発した。


 ——《ネドトロス》の本拠地は簡単に見つけることが出来た。

 そもそも今まで本拠地が見つからなかったから、攻め入っていないわけではない。

 ただ——虫共を駆除するより、もっと大事な任務があったから、わざわざ足を運ばなかっただけだ。


(だが……今回ばかりはそうもいかない。オレをコケにした報い。受けてもらうぞ——《ネドトロス》のリーダー、フェイクとやら)


 そして——《ネドトロス》の本拠地前へと到着。


 古ぼけた塔。

 まずは百人で塔の中に攻め入って、どんどん兵を投入していく。

 入りきらなかった残りは後方で魔法を放ってもらったり、回復等の支援をしてもらう予定だ。


(前はヤツ等に奇襲をやられてからな……今度はオレの方から奇襲をかけてやる)


 フーゴは剣を持った右手を挙げる。


「突撃!」


 その声を皮切りに、爆発したかのように兵士が塔へと攻め入る。

 中で寝ているであろう《ネドトロス》のヤツ等の悲鳴——そして訳も分からず命を落とすこととなるのだ。

 その時に「ああ、騎士団に逆らわなければよかった」と後悔しても遅い。


 そのはずであった——だが、



「いないっ?」



 塔の中はもぬけの殻のようで、人っ子一人いるような気配がしなかった。


「どういうことですか! 騎士団長。ここに《ネドトロス》のヤツ等いるんじゃ……」

「慌てるな!」


 兵の言葉を遮るが、フーゴの頭の中は混乱していた。


 ——どういうことだ?


 どうして中に誰もいない?

 情報が間違っていた?


 いや、我が軍の諜報部は優秀だ。ゴロツキ連中ごときの本拠地を探すのに偽の情報を掴まされるわけがない。


 ならば——たまたま外に出かけている?

 ありえない。

 もしそうだとしても、それは一部のはずだ。

《ネドトロス》の総勢は二百人と聞いている。

 その二百人全員が塔から出て、留守番一人も残さないなんて非現実的だった。


「なにかが起こっている……」


 キーンキーンキーン!


 頭の中の警鐘が鳴り止まない。

 ただちにフーゴは踵を返し、塔から出ようとすると——。



 ズゴォォォォーン!



 塔が揺れる。


「な、なんだっ!」


 近くの柱に掴まりながら、フーゴは現状を把握しようとした。

 炎? 塔が燃えているのか。

 もしや外で待機していた騎士団のヤツ等が魔法を暴発させた?

 いや、そんな愚か者は騎士団にはいないはずだ。


 ならば——。



「うぉぉおおおお! やっちまうぞ!」



 塔を破壊しながら、外から人が入り込んできた。

 そいつ等の顔はフーゴにとっては忘れられるものではなかった。


「ネ、《ネドトロス》……」


 そう——。

 奇襲をしかけたと思っていたフーゴ。

 逆に後ろから《ネドトロス》に二度目の奇襲をしかけられることとなったのだ——。


【side アリサ】


(全く……彼という男は……)


 闇討ちをしかけようとしてきた騎士団の後ろを取って。

《ネドトロス》の元首長——アリサは魔法を浴びせながら、少し前のことを思い出していた。


「ふぁあ、よく寝た」


 マコトが目を覚まし、背伸びをしながら上半身を起こす。


「良いご身分だね。私達は騎士団がいつ奇襲をしかけてくるか分からないから、ほとんど寝ることが出来ないよ」

「ん? 寝ないとダメだぞ。だって騎士団が闇討ちをしかけてくるのは明日の深夜なんだから」

「寝たくても寝られない——って明日?」


 マコトがあまりにも当たり前のことのように言うので、ついつい聞き逃してしまった。


「ああ、騎士団の連中は明日の深夜。闇討ちをしかけてくる」

「ほほお、それは良いことを聞いた……ってどうして君にそんなことが分かる?」

「俺は一週間先くらいの未来までなら予知することが出来るんだ」

「……はあ?」


 アリサの口から間抜けな声が漏れる。

 マコトの力については説明を聞いていた。

 なんでも、マコトがいた元の世界において、魔法よりも優れた力があったらしい。


「——未来予知の超能力」


 人差し指を立てて、マコトがそう言った。


「大丈夫。俺の超能力は絶対だ。だから安心して眠れ」

「マ、マコトさん! 凄いなのです!」


 いつの間にかエコーが部屋に入ってきていて、飛び跳ねている。

 ……最初から思っていたのだが。


「……エコー。君はマコト……いやリーダーのなんなのかね。奴隷かなにかかね?」

「ど、奴隷っ! そんな立派なものじゃないですよっ」

「いや……奴隷は喜ばしいものではないと思うが」

「私はマコトさんの仲間なのです! 冒険者として一緒にパーティーを組んで、様々なクエストをこなしてきました……」

「俺はネコ探しと《ネドトロス》潰ししか記憶がないんだがな」


 マコトがツッコミを入れる。


「う〜、マコトさん! それを言っちゃダメですー」


 エコーがポカポカとマコトの頭を叩いている。

 マコトはそれを嫌がらず、受け入れていた。



 ドクン——。



(どうしてだろう。私は君達を見ていると胸が苦しくなってくるよ)


 ——よく見ると、受け入れているというか相手にするのが面倒臭いだけのようにも見えるが。

 しかし仲良さそうな二人の姿を見ていると、胸の動きが激しくなってきて、息をするのも苦しくなってくるのだ。


(この症状は……? ふんっ、まさか。女を捨てた私にそんな感情が残っているわけがない)

「うん? アリサ、どうした?」

「なんでもない」


 マコトの問いかけに、アリサは首を振って答えた。


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