7、不思議な本とおしゃべりな魔獣?
ルシアと仲良くなったところで、本来の目的である魔法に関する本を探すことにした。彼女には古い古代魔法が書かれている本や、迷宮に関する本を探してもらうように頼んだ。
ルシアは店内の奥のドアへと姿を消した。その後も店の中で、魔法の本の他にも薬草などが記載されてる図鑑のような本も探した。今後、迷宮内にいくかも知れないと思っているからだ。
しばらくすると、ルシアが戻ってきた。残念そうな顔して、一冊の本を持ってきた。
『ごめんなさい、アル。ここにはこれしか古い本はないの。しかも魔法じゃなくて、なんか機械のことしか書いてないみたい』そう言って、アルに手渡した。
受け取って中身をみると、蒸気機関で動く動力のことや内部燃焼機構のことが図案とともに書いてある。その他には、金属の錬成の仕方などだ。たしかにこれだと、専門外ではある。興味深いが今は必要ないだろう。
『ルシア、ありがとう。この本は探していたものじゃないみたい。魔法陣の本と地図をもらえるかな?』先ほどの本を返して、魔法陣の解説書と、地図を買った。
『ありがとうアル。はい!これどうぞ!』彼女の顔に笑顔が戻った。
それから、しばらく他愛のない世間話をして、店を後にした。
こないだの古びたお店に行ってみることにした。商会とは反対方向の貧民街の近くの店だ。
相変わらず、この路地の雰囲気は鬱蒼としていて不気味だった。いつ営業しているかもわからない店ではあるが、アンティークといえば聞こえはいいが何に使うのかもわからないガラクタのような物もあり、スキルブックのような貴重なものもおいてあるような店ではある。
先日、古代魔法の本を読んだときに気になる記述があったから、もう一度見ておきたかったのだ。購入はできなくとも、閲覧はできる。
考え事しながら歩いているうちに着いてしまった。中へ入ると、老人の店主はまた何かの本をよんでいる。
『こんにちは、またあの本を見せてもらえますか?』
『おや、この前の坊やじゃないか。あれから誰も来ておらんから、好きに見ていくといい。ただし、一応ここは店じゃ。壊したり汚したりはせんようにな』
怒ってはいないようだが、なんとなく気難しい老人なのは変わらなかった。さっそく、あの本を探すことにした。前にきたときのしまった場所にそのまま置いてあった。
やはり中身をみると、古代魔法に関する記録と実験したようなメモなどが書かれている。召喚魔法についての記述のところに、魔法陣が書いてあった。そこに描かれている魔法陣の下には、召喚する際の手順や出てくる魔物が書いてあった。内容からすると魔物というよりは、精霊や悪魔に近いものだろう。
老人店主は、カウンターにおいてあるコーヒーを一口すすり、棚から一枚の硬貨を取り出してきた。
『坊や、これをあげよう。お守りみたいなものじゃ。わしにはもう必要ないから、持っていけ』鈍くひかる真鍮のようなコインだ。
『いいんですか?ありがとうございます』礼をいうと、老人店主はカウンターにもどりまた座り込んで本を読み始めた。
もらったコインをポケットにしまい、本をとじた。あたりを見回すと、鞘付きの小さいナイフが目に入った。抜いてみると刃渡り4センチくらいだろうか。作業用にはいいかも知れないと思い、老人店主に値段をきいた。銀貨1枚でいいとのこと。銀貨1枚で購入した古びた小さいナイフを受け取り、その店からでた。
商会へもどる途中、屋台で豚串を買って食べた。遅い軽い昼飯だ。そういえば、前世でも仕事帰りにコンビニでよく買い食いしてたっけ。
食べ終わって商会へ戻り、母親に仕事を終えたことをつたえ、部屋にいるからと言って自室へ向かう。
すれ違う従業員の人に挨拶をしながら、帰ってきた。先ほど購入したものを、テーブルに並べる。
魔法陣の解説書、この国の地図、小さいナイフ、謎のコイン。1番気になるのはやはりコインだ。通貨は違うみたいで、薄くはなっているが、何やら魔法陣のようにもみえる。解説書をみながら、紙にコインの魔法陣のようなものを写していく。
解説書をみるとそれぞれの記号などに意味がありそれを輪の中に書いていくと効果が変わるという。召喚する場合は魔力を消費するか、媒体となるものを置くと書いてあった。
写した魔法陣の横に、コイン裏側の模様も写した。何かの紋章なのかは不明だが、その周りにも何やら文字が描いてあるようだ。おもむろに小さいナイフでコインを擦ってみた。擦っても削れはしないようだ。少なくとも硬い金属であるようだ。
鞘にしまおうとしたとき、誤って指をきった。コインに血がつくと、光り輝いた。
空中に魔法陣が形成され、光の中から何かが召喚されたようだ。
光が収まると、そこには小さい黒猫に羽が生えたような生物がいた。魔物?魔獣か?いや、猫?
『お前が、新しい主人か?我は封印されし門番がひとり、ランディスカールである。我が出てくるのは200年ぶり。お前の魂2つあるようだな。今度は面白い主人だ』喋る黒猫はアニメでしか見たことない。
『こっちの世界ではアルスタード。訳あって、この子の身体を借りている、いわゆる転生者だ。よろしく頼む。できればこのことは秘密にしておいてほしい。あと、なるべくなら猫のように振る舞ってくれるか?もしくは呼ぶまでコインに戻れないか?』
『ではアルと呼ぼう。我もランディと呼ぶがよい。コインはある意味封印されてる状態なのだ。猫のように振る舞うしかできぬが、それでよろしいか?』
『それで構わない。あとのことはうまくやるさ。改めてよろしく。ランディ』
こうして相棒となる猫のような魔獣が仲間になった。




