6、初仕事と小さい友達
翌日、母親はいつものように朝ご飯の支度をしていた。後ろ姿は少し寂しく思えた。
『ねぇ、アル。ここの生活はどう?まだ慣れないと思うけど、すぐに家に帰れると思うわ。思ったよりも被害は少なかったと聴いているわ。騎士団が魔物を討伐したらしいとも。ただね、壊れた建物や魔物のせいで街道が塞がって物流や復興まで時間がかかりそうって商会長のハンスさんが困っていらしたわ』母親の表情が曇る。被害が少ないのは嬉しいことではあるが、物流が滞るのは、この町にとってもあまり良くはない。ましてや商会ギルドとしては生命線でもある。商会ギルドからも冒険者ギルドへ依頼して人材を派遣し、近隣の街道の警備や街道の整備の手伝いなどを依頼、商会ギルド協会は各商会へ対して、復興支援物資の提供、物価高騰を避けるために価格帯を統一するなどの措置をしたと母親から聞いた。
ここまで迅速に対応できるのも、過去の教訓が町民ひとり一人に刻まれて受け継がれいるのだろうと感じた。
朝食を食べ終えたところに、ドアをノックするのが聞こえてきた。母親が対応すると、ドアの向こうにサミアーノさんがいるのが見えた。サミアーノさんは手短に要件だけを言って部屋のドアを閉めた。
母親は、仕事にいく準備を始めた。母親は元治癒師でもあり、ポーションなどの調合とかもできる。ここで売られているポーションの検品や接客などが、今の母親の仕事になっている。自分はここにきてからは、家事をしたり、本を読んで勉強したり、たまに外へ散策しにいくのが定着しつつある。以前のように魔法の練習をしたいと思うけれど、人目につく。自分の能力もまだ分かり切っていない状態ならなおさらだ。
先日行った、貧民街のあの古びた店も気になってはいた。なぜ、古代魔法の本があそこにあったのか。なぜ、自分には読めたのか。迷宮とはなんなのか、遺物とはどんな物なのか。考えれば考えるほど、好奇心が掻き立てられる。
洗い物を済ませて、母親を見送ったあと出かける支度をした。今日は街の本屋を回ろう。もう少し情報を収集する必要があるからだ。
部屋を出て階段をおり、店舗の方へ向かう。母親に行き先を告げるためだ。
店舗内に入ると、母親は接客中で薬品の説明をしている。待つ間、店内を見て回ることにした。色々な薬品やポーション、魔道具など丁寧な陳列されていた。最近では、化粧品も取り扱ったことにより、貴族にも好評だとか。
母親の接客が終わると、自分のところにきてバックヤードに来るように言われた。
『アル、頼み事があるのだけれどこの書状と化粧品をカミーナ子爵邸に届けて欲しいの。お願いできる?』
『わかった。本屋に行くついでにいくよ』品物と書状を受け取り、街へと出た。
貴族や上流階級の役人が住むところは区間が整理され、高級店などが立ち並ぶ。もちろん平民もいるが、お互いに避けている雰囲気でもない。アニメのイメージとは違うようだ。
商会から歩いて20分くらい経った頃、目的地の屋敷が見えてきた。白い壁で大きな屋敷で紺色の屋根が映える綺麗な屋敷だ。庭の手入れも行き届いている。
門番に書状と商品を見せて、取り継いでもらうようにいった。しばらくして、執事のような人物が、玄関先へと案内してくれた。
改めて、書状と商品を渡した。執事は商品をみて満足そうな顔で、お礼といって銀貨5枚を渡してくれた。いわゆるチップのようなものだろう。お礼を言い、頭をさげてその屋敷を後にすることにした。
本屋を探して再び街へと向かう。本屋は何軒もあるわけではなく、探すのも一苦労だが、街を散策しながら、どこにどんな店があるのか見れるのが楽しかった。
すると、一軒の本屋を見つけた。看板には【森の書庫】と書いてあった。中へ入ると、同じくらいの年の女の子が、本を陳列していた。
『いらっしゃいませ!何かお探しでしょうか?』にこやかな笑顔で接してくれた。
『えーっと、とりあえず、魔法に関する本があればお願いできますか?』
『魔法の本ですね!こちらなんていかがでしょうか?魔法の基礎と応用の仕方が書いてる、いわば入門書みたいな物です。もしくは、魔法の種類とか魔法陣とかについてのほうがよろしいでしょうか?』基礎部分は、家にあった本で学習している。魔法陣については、多少知識がある程度であまり知らない。この本にすべきだろう。
『この本でお願いします』先ほどもらった銀貨で買える値段だった。他の本も気になって、店内を眺めていると、先ほどの女の子が話しかけてきた。
『ねぇ、この辺の子じゃないよね?どこからきたの?』好奇心に溢れた目をしている。苦手なタイプかもしれない。
『え?あぁ、そうだね。ちょっと前に来たばかりで、この先の商会にお世話になってるところさ。君はこの店の子だよね?手伝いしてるの偉いと思う。』この歳で仕事しているのは、わりと珍しくはない。
『私ね、生まれつき身体が弱くてあまり外に出たことないの。だから、こうして本を並べたりしてお母さんのお手伝いしていたり、お店の掃除したりしているの。友達と呼べる子もいないし』俯いた彼女の顔が、寂しそうに見えた。
『ここにたまに、遊びきてもいい?僕も本は好きだから、色々と教えて欲しいんだ』彼女の顔が一気に明るくなった。
『ほんと!やった!じゃあ、私たち友達ってことだよね!私、ルシアっていうの!あなたは?』
『僕は、アルスタード。アルでいいよ』握手の手を彼女に差し伸べた。
『よろしくね!アル!』彼女は、ぎゅっと握ってきた。自分より少し小さい手で冷んやりしていた。この世界で初めての友達ができたのだ。ルシアから今後、色々な情報を得よう。このあとも、故郷のこととか好きなこととか話し合った。いつの間にか、話し込んでいて昼の鐘が鳴り響き始めた。




