4、ロストテクノロジー
避難してきて、数日。ここの町はカストール。歴史が古く、前大戦の戦火から復興した町。自分がいたリースターの町とは違う。城壁があり、警備は厳重で町には衛兵がいる。貴族たちも住む大きな町だ。
宿の生活も悪くはないが、いつまでもこのままでは生活費が底をつくのは想像にかたくない。見習いでもいいから何か仕事はないか考えた。そうだ、冒険者になろう。年齢制限はないがそのかわりに自分の技量のみで狩りをして、ギルドの報酬と魔石や素材を換金して生活をする。しかし、常に命の危険と隣合わせでもある。
母親は元冒険者のAランク治癒師。自分が産まれたから冒険者は引退して、平和な道へと進んだという。時折、近所の人が薬草をもらいにくるのはそのせいだろう。治癒師は魔法と薬学の知識が必要だからだ。そのおかげで、カストールの町で薬を扱うお店に働くことが決まった。名前はルイード商会。
薬を扱うためのお店には、国王とギルドの許可がいる。余計な事故などを防ぐために。ここのルイード商会はカストールでも5本の指に入るほど老舗で、大きい。事情を話すと、使っていない部屋があるからそこで住み込みでよいとのこと。私達の新しい生活が始まった。
従業員は全部で15人、商会長のエルサ、秘書のハラン、人事のナルド、事務長のサミアーノ。この他には、身の周りをお世話してくれたメイドのカーマイン。このメイドには本当にお世話になった。母親が働いている間、商会のことや歴史など色々教えてくれた。雑務を手伝うこともあった。それを見てエルサもよく働く子だと、遠くから微笑んでることがある。
商会で取り扱う物は、各種ポーション、魔法具類。冒険者から貴族まで幅広い客層で、日々賑わっている価格帯は、リースターの店よりは5%ほど高い。それでも品質は高い。この価格帯でも納得はいく。
雑務の間に、店の在庫や商品の陳列の仕方など見てまわり、町にも出掛けていったりして過ごした。
商店街を歩いていくと住宅街と飲み屋街がある。飲み屋街を歩いてぬけると、治安の悪そうな雰囲気の路地裏に行き着いた。いわゆる低所得帯や無職が住むところで、道端に座り込む人や寝てるのかどうかわからないような人がいた。世界が平和でも、市民全員が幸せだとは限らない。格差社会の弊害でもある。
ある店が目に止まった。看板は文字がかすれて読めない。気になって入ってみる。中は埃っぽく、老人が1人店の奥で座って、何が本を読んでいた。
『いらっしゃい坊や。ここは世界に忘れさられた"モノ"たちが集まるお店。わかる人にはわかるそういった物じゃ。ガラクタだと思うなら、色々触ってみるとよいじゃろう』そういって、また本を読みはじめた。
いわゆる、遺失物とか古代の遺跡から発掘したものなのだろうか?どうみてもガラクタにしか見えない物ばかりが無造作においてある。何かの金属の歯車とかそういったものから、木製の箱とか色々。
鈍く光る真鍮製と思われるランプを手に取った。アンティーク調の装飾と使い込まれた感じがよい味を出している。個人的には好きな方だ。
すると、老人の店主が本を閉じて、無言でマッチを取り出してそのランプに火をつけてくれた。
ゆらゆらと燃える火の灯りであたりが明るくなった。そのときである、突然魔法陣が展開したのであった。魔法が起動して、あたりの風景が変わった。幻影の一種だろう。見たこともない街並みがあたりには広がって見えた。遠くには海もみえる。
『昔はこういった職人がたしかにいたんじゃ。今となっては、生活の便利さを追求したあまり、味気ないものばかりになってしまったのじゃ。これを作った職人は遊び心と共にどこか切ない気持ちがこれに込められてるのじゃよ。わかるかな?坊や』にやりと笑う老人。また本を手に取り読み始める。
ロストテクノロジーっていうのかわからないが、素晴らしい物には間違いないだろう。前世でも時代と共にテクノロジーが発展して生活が豊かになったと同時に使われなくなったものは歴史という名に埋もれて、いつか忘れさられていく。
この老人がどれだけのモノと出会ってきたのか想像もできないが、時代に取り残されたモノにとっては理解者なのかもしれない。
さらに埃まみれの本が目に入った。埃を払うと、紺色で金色で装飾された装丁が現れた。中を開いてみると、見たこともない魔法に関する記述が図案と共に書いてあった。




