3、襲撃
母親がなぜ王都に行ったのか聞けぬまま、数日が経った頃、またあの貴族らしき人がやってきた。
話しを聞くと、どうやら第二騎士団の団長で、名前はイーサンという。亡くなった父と幼馴染だそうだ。この辺り一帯の見廻りを任されているという。
定期的に母のところを訪ねて、回復薬のポーションとかを置いていってくれたりする。
特別な感情があるとは言わぬが、なにやら事情がありそうだ。イーサンが居なくなって、しばらくして母が話しがあると言い、テーブルにつくように言ってきた。
『ねぇ、母さんこの前王都に行ったのは覚えてるわね?実は、王都のほうで魔術師協会に呼ばれたの。国王の暗殺未遂があり、魔法使いの仕業ではないかとの疑いが出て、父さんの幼馴染のイーサンから助力してと言われて行ってたのよ。黙っててごめんね』
『ううん、僕も勝手にこんなことしてごめんなさい母さん』優しい眼差しで見つめる母はそっと頭を撫でてくれた。恥ずかしさと嬉しい気持ちでいっぱいになった。
『さすが母さんの自慢の子だわ!魔法の才能は母さん譲りね!』少し自慢げに言う母親の顔がおかしくて、くすりと笑った。
その日の夜のことだった。遠くのほうが赤い光でぼんやりと照らされている。かすかに焦げ臭いような匂いが窓からする。
次第に赤い光は大きくなり、火事だとわかった。急いで、母親のところに言いにいくと、母親はすでに異変に気付いていたらしく、荷物をまとめて避難する準備をするようにと言われた。
急いで身支度を済ませて、家から出てみると大型のモンスターがすぐそこまで迫ってきていた。第二騎士団員が必死の抵抗を見せているが、正直もちこたえるとは思えない。どこかにイーサンの姿はないか走りながら見てみたが、見当たらなかった。
街とは反対方向へ走って避難をする。街道沿いを走り隣町の方へいこうとした。先ほどのモンスターのせいなのか、戦闘の痕跡が続いている。騎士団員の亡骸も数人あった。その中にイーサンが居ないことを祈りながら、安全なところまで急いで行った。
すると、目の前に手当をしている人影がみえた。イーサンである。彼は木にもたれかかり、治癒魔法で傷を癒していたところだ。
『イーサン?!よく無事で!見かけないからてっきり…』
『一応騎士団だからね。これくらいは平気さ。それよりもあのモンスターは?どこまで被害が出てる?』治癒魔法を続けながらも冷静に考えてるようだった。
母親が避難直前の詳細な情報を彼に伝え、家から持ってきたポーションをわたした。
彼はもらったポーションを一気に飲み干し、颯爽と馬にまたがりモンスターの居る方へと走り去っていった。
彼の無事を祈りつつ見送ったあと、再び隣町へと向かい始めた。
そして、2時間くらい歩いただろうか。狭い街道を抜けて隣町の明かりが見えてきた。もう足はガクガクで疲労はピークに達していた。母親はまわりを警戒しつつ、自分の前をペースを乱さず歩いている。
幸い、街に入るまでモンスターや盗賊の襲撃はなかった。街に入りすぐに宿をさがす。夜遅くだから人通りはほとんどない。たまに警備隊と酔っ払いがいるだけだった。
しばらく歩くと、宿をみつけた。中に入ると冒険者や行商人が、大きな暖炉があるロビーに併設してある酒場で飲み明かしていた。受付を済ませて、鍵をもらい酒場を横目に3階の部屋へと入った。
荷物をおろして、ひとまずベッドに横になった。母親も同じだった。おそらく自分より相当疲れているはず。そんなことを考えている間に眠ってしまっていた。




