1、ここはどこ?
目見知らぬ天井。某ロボットアニメのタイトルのようなフレーズが出てしまう。
(あれ?たしか俺は、足場が崩壊してそのとき滑落して死んだはず、、だよな、、、。)
ーそう、ここは異世界。現世ではない。
異世界と気付くまでは、そう時間はかからなかった。よくあるやつかと思っていた半分、一度は行きたいと思っていたのが半分だったからだ。
まずは現時点で何が必要なのか、自分が誰なのか分かる必要があった。当然だが、インターネットやスマホなどはない。調べようがない。
少し離れたところに本棚に何冊か本かあるだけ。他には、机や椅子。今寝ているベッドくらいなもの。照明器具は、オイルランプのようなものだが見知った形ではない。
ふつうなら、起きて色々と確認したいところではあるが、何があるかわからないこの世界でむやみやたらに動きまわるのは危険だと、臆病にもこのベッドから起き上がれずにいた。
すると部屋の扉をノックする音と共に、優しい女性の声がした。
『アルスタード、いつまで寝てるの?早く起きなさい。もう朝よ。』
おそらく母親であろう女性は窓をあけて、部屋から立ち去った。朝の清々しい空気が、窓からそっと入ってくる。まぶしく光が入ってきた景色は、田舎。
ベッドから起き上がり、服を着替えて部屋を後にする。リビングには、先ほどの女性が朝食を忙しそうに用意してくれている。
『早く食べないと、スープが冷めるよ』そう言ってスープを渡されてる。見たこともない野菜のスープだ。
ひとくちそのスープを飲むと、野菜の旨味が溶け出して、体の芯から温まるようなそんな優しい味。焼きたてのパンとそのスープを食べるときにその女性は言った。
『今日は、ゲルトルさんに手紙を渡して、帰りに薪を買ってきて欲しいのだけれど、頼んでもいいかしら?』少し申し訳ない感じでこちらの様子を見る視線が、どこか懐かしい感じがした。
『わかった』パンをまた一口食べて、スープで流し込み、食事を終えた。
『ごちそうさま』食事を作ってくれた、些細な感謝を込めて言って、玄関へと向かう。
『じゃあ、行ってくるよ』古びた木製の扉をあけて外に出る。改めてまわりを見渡しても、この家の他に数軒ある程度で、のどかな田舎町といったところだが、見知らぬ土地であることには変わりはない。
アスファルトやコンクリートでできた街並ではなく、アニメでみたそのままの世界。ただ、不思議なのが、全く知らない訳ではない。どこの家に誰が住んでいるのか、街の名前とかは知っている。きっとこの身体の持ち主の記憶である。
通い慣れた、通学路をいくような感覚で目的地へと足を運ぶ。どこかで、パンを焼いているような香ばしい香りや、木々や草の香りが心地よく感じられた。
異世界とはいえ、古い街並みは中世のヨーロッパのような趣きのある情緒がある落ち着いた街並みだ。石作りの外壁、瓦のようなオレンジ色の屋根、大通りの市場には露天が立ち並んでる。見たことのない野菜や果物、魔導書、魔道具、武器、ありとあらゆるものが売っている。遠くから買い付けしにくる人もいるだろう。小さい町だが、賑わいがある。
大通りの市場を抜け、ギルドがある大きな建物がある、この町の冒険者ギルドだ。各地の冒険者が集まるところで様々な戦闘職の人たちが集まっている。中に入り受付で、ゲルトルがいるかどうか尋ねた。
ゲルトルは、ここのグランドマスターでありながらも現役の冒険者でもある。階級はSランクの最高ランク。どうやら、この身体の持ち主の叔父らしい。
少し待って、奥から身体ががっちりした身体に古傷のある男が出てきた。
『やあアル。今日は何の用事かな?』とにこやかに語りかけてくる。
『おはようございます、ゲルトルさん。今日は、母からこれを渡すように言われてきました』持ってきた手紙を彼に渡し、その場で読み始めた。しばらく読むと顔がこわばって真剣な表情になっていくのがわかった。
手紙を読み終えたゲルトルは、ため息をつきながらぼそっといった。
『まったく、面倒なことばかりクリスティーは言ってくるな…お前の母さん、昔から抜け目がないというかなんというか。アル、そろそろこの町のどこかのギルドに所属せねばならん。そこで職業を決めるのだが、母さんは冒険者ギルドには参加させないようにと書いてある。一応聞くが、やりたいことはあるのか?』
この世界には複数のギルドがある。冒険者ギルド、魔法ギルド、商業ギルド。主にこの3つ。王都までいけば、騎士団もある。さらに細かい職に分かれていく。
アニメである程度の知識はあるが、実際にやれといわれてできるものではない。とくに魔法。技術職なら、前世での経験があるからそれなりにできるだろう。ただ、この世界の知識と前世の知識が混在しててどれがいいかとか、正直選べない。
『アル、悩むのもわかるが人それぞれ適正がある。とくに魔力量によってつける職業も変わってくる。一度測ってみたら、どうだ?』
ゲルトルは2階を指差し、半ば強引に手を引いて連れていかれる。2階のあがった先の角の部屋に通される。
部屋には記録簿がずらりと並んで、部屋の奥に水晶の玉がおいてある。
『この玉に触れてみろ。目を閉じて念じるようにしてみたら、その玉が光りだす。その色と光り方で魔力の属性と魔力量がわかる優れものだ。見本をみせてやる』ゲルトルがそのたまに触れると、赤く強く光り始めた。
『アル、やってみろ』後ろに移動し、腕を組みながら、こちらを見ている。そして、恐る恐るその玉に触れてみた。ひんやりと冷たく、触り心地が良かった。
目を閉じて、触れてる手に意識を集中する。じわっと温かい感覚になる。これが、魔力なのだろうか。当然、イメージだけで実際にやるのは初めての経験だ。
触れていた玉が、白い光りでまぶしく光出した。次の瞬間、その玉にピキッと音がして亀裂が入った。
『うそだろ?!』唖然としている彼の顔が見えた。
『えーっと、どういうことですか?』自分の魔力とか言われても、ピンとこない。ましてやこの状況が理解できてない。
『アル、白は神聖属性で世界で1%にも満たない貴重な魔力なんだよ。神官長クラスだぞ?!本来なら、神聖属性を持つものは特殊な魔法ギルドへの参加が義務化されている。なぜだかわかるか?この世界の魔物を封じるための封印結界は神聖属性しかできないからだ。ましてやその魔力量、みたことない』興奮気味に問い詰めてくる。正直、ドン引きする。
『と、とりあえず今日は帰ります。また後日来ます。ありがとうございました』
『お、おう。気をつけて帰れよアル』
早々とその場を立ち去り、ギルドから出た。頼まれていた薪を買いに市場の方へと向かう。
薪を売っているお店につき、太めの広葉樹の薪を購入した。ずしりと重いを背負うようにロープで簡易的に結び、来た道を歩いて帰った。




