13、山岳地帯へ
故郷のリースタを後にして数時間、次の町までは日数がかかるという。途中に小さい集落でニールという村があり、今後のスケジュールをサミアーノと冒険者チームと相談している。
長旅になる場合は、物資の補給も大事だが情報収集も大事でその土地柄の事情など色々聞くことによって、商品の需要がわかったりできるからだ。先日のリースタを襲った魔獣のこともあり、立ち寄った各町の情勢とかも聞いておく必要がある。
日用品や薬草類など今回の取引先で使うものを荷馬車に積んでいる。その積荷の空いたでスペースで先日買った魔法の本を読みながら、待っていると馬車が動きはじめた。ニールまではあと2時間くらいのところまできているらしく、夜中に危険を冒して進むリスクを避けるため今日はニールで一泊することとなった。
小さい村ではあるが、宿屋もあり各地から訪れている冒険者や商人の姿があった。積荷に問題が無いか確認作業していると、メルがやってきた。
『ねぇ、君。その連れている魔獣は飼育しているの?』ランディに興味があるらしく、目を輝かせているようだった。
『え?あぁ、この子は森で怪我しているところを保護して、それから懐いちゃってこうやって色んなところに連れて行ってるんです。変ですか?』
『変とかではないけど、珍しいなぁって!いつか私もそんなペット欲しいと思ってるけど、なかなか機会にめぐり合わないのよね。ごめんね、仕事中に邪魔しちゃって。それじゃ!』酒場のある方へとメルは走り去っていった。
確認作業が終わり、宿へと戻るとサミアーノが待っていた。部屋の鍵を渡され無言で部屋へと案内された。質素なつくりだが寝泊りするには十分だ。
『明日は早めに出発する、今日はゆっくり休みなさい』サミアーノは、そういって自分の部屋へと入っていった。
『アル、確認しておきたいことがある』ランディが目の前にすわり、真剣な表情でこちらを見ている。
『どうした?なんか気づいたことがあるのか?例のナイフはしまっているし、指輪は無くしてなんかないぞ?』
『その指輪だが、召喚器具かもしれない。覚えているかアル?日記に書いてあったことを。おそらく何らかの発動条件があってそれで起動するようになっているのかわからんが、装飾品に価値はあるかもだが魔力を帯びている時点で怪しい。もう一度みせてくれないか?』ポーチから指輪とナイフを出し、ランディの前においた。
じっと指輪を見つめたまま、無言になってしまった。何を感じ取っているのかわからないが、声はかけないでいたほうがよさそうだ。
『やはりそうか、アルこれは装飾品でもなければ副葬品でもない。魔術師で言えば杖のような役割だ。この指輪を媒体にして、召喚するものだ。我の魔力属性は違えど、性質は似ている。危険なものではなさそうだが、何が起こるかわからん。上級魔術師、あるいは鑑定できるやつに見てもらったらどうだ?どのみち、我らには手に余るものだ』
『そうか、わかった。大きな町にいったときに、鑑定してもらう。それまでランディが預かっていてくれないか?そのほうが安全だろう』そういってランディの亜空間魔法の収納してもらうことにした。
そして一晩過ごした宿を出発し、次の町へと向かう。数日近くに村などはなく野営することになりそうだ。何事もなく無事に着くのが一番ではあるが、魔獣の存在、野党の襲撃など不測の事態もありえる。まわりの景色を荷馬車から見回してみると草木も少なくなりだんだん山岳地帯へと入っていく。
山から吹き降ろす風はひんやりとして、少し肌寒く感じられた。この旅での危険とされているカスト山岳地帯。魔獣の生息が多く、行きかう人々の魔獣に襲われた報告が多い場所でもあり、冒険者が討伐依頼でここを訪れることも多いという。
もちろん、今回雇っている冒険者チームもここに来たことはあるらしく、討伐や探査依頼などで何度も訪れている。野営地も熟知しているというわけだ。
魔術師のジョンが何かを探知したらしく、馬車を止めさせそれに応じてメルやモルガも戦闘準備をする。ランディの様子はいつもと変わらずで、魔獣ではなさそうだ。
『モルガ、何者かがこちらに向かってきます。人数は8人。警戒しておくといいでしょう』そういって、荷馬車の近くで杖を構えている。
『わかった、ここは俺が先に仕掛ける。メルは援護してくれ。ジョンは念のため結界魔法で守りを固めて、くれ。商会の皆さんはなるべく安全な岩陰などに身を潜めてください』
モルガは腰の剣を抜き、臨戦態勢になる。まもなく野党と思う連中が、こちらに向かって走ってくる姿が見えてきた。
サミアーノや商会メンバーは言われたとおり、馬車をおり岩陰に隠れた。ランディが肩にのってきて、耳元でささやいた。
『ナイフを使うな。万が一やばくなったら我がなんとかする。アルは何もできないフリをしていてくれ』そういって、肩からおりて足元で様子を伺っている。
戦闘は激しいもので剣を交える音や、野党の罵声が聞こえてくる。ほどなくして戦闘は意外と早く決着がついた。冒険者チームのほうが腕は上だったようだ。
そして、また隊列を組んで先を急ぐのであった。




