12、故郷へ
翌日、目が覚めるとまだ夜は明けていない真っ暗な部屋に、ぼんやりと月明かりで部屋の一角が照らされている。ランディはベッドで寝息を立ててぐっすりと寝ている。
ゆっくりと起き上がり、キッチンのほうへと向かった。コップに水を汲んで一気に飲み干した。椅子に座り昨日のことを思い出していた。迷宮内であったことと、自分が魔獣を討伐してしまったこと、遺物であろう指輪を取得したことなど迷宮のことはファンタジー世界のようで夢のような感覚だった。
『眠れないのか?アル』ランディが、部屋から出てきた。毛づくろいをして、背筋を伸ばした仕草は猫そのものだ。
『急に目が覚めたんだ。昨日のことを思いかえしてたところだよ。起こしてたならごめん』
『いや、我も水を飲みに来たところさ。ナイフのことは秘密にしておいたほうがいいだろう。あれは特別な力だと思われる。我とは違う契約のようなもので縛られてるとも考えられる。いずれにしろ肌身離さず持ち歩くのが良い』
『わかった。指輪は詳しい人か、鑑定所に持っていこうかと考えている。魔道具ならそれなりお金になるだろう。今後の軍資金も欲しいところだし』
ランディはうなずいて、もう一度ベットのほうへと戻っていった。迷宮内でひろったものはすべてらんデイに預けることにしているから、保管には困らないだろう。
アルはもう一杯水を飲んでから、ベットに入りすぐに眠りについた。朝になり、いつものように起きて着替えをして、用意された朝食を食べた。
朝食を食べ終わり、母親と一緒に商会長のエルサのところへと向かう。今日は商会で発注したものを少し離れた町まで運搬することになっている。その途中で、自分の元居た町、リースタにも立ち寄るらしく、様子を見に行くために同行をお願いした。
運搬するメンバーは、サミアーノを先頭に商会から3名、護衛として冒険者ギルドから派遣された、射手のメル、剣士のモルガ、魔術師のジョンの4名の計7名で行くらしい。
冒険者メンバーは出発前に冒険者ギルドの前で待ち合わせして馬車で向かう。出発は一時間後。それまでに準備をしとくようにと言われた。一度部屋に戻って、着替えとかを準備をする。あのナイフもポーチの中に入れた。
出発時刻になり、馬車へと乗り込む。冒険者ギルドへ向かおうとしたとき、サミアーノが他のメンバーに聞こえないくらいの小さな声で話しかけてきた。
『アル、今回の遠征は比較的に長旅になることが予想される、冒険者は必ずしも善人とは限らない。荷物はしっかりもって歩け。あと、仕事の邪魔にならないように商談中は静かにしていろ。わかったか
』キツイ言い方だが、ごもっとな意見だ。
冒険者ギルドの前についた。予定していた冒険者チームが玄関先で待っている。サミアーノと簡単な挨拶と旅の経路を説明し、それぞれの馬や馬車に乗り込んで出発した。
門をくぐりぬけ、街を離れる。冒険者チームは、あたりを警戒しながら隊列を組んで同行している。ランディはポーチの中でぐっすりと寝ている。
荷馬車から見える景色は以前とはだいぶ違っていた。自然豊かな土地だったのに、魔獣のせいで荒らされており見るも無残なことになっている。木々は倒れ、地面はえぐれて整備された街道もボロボロで臨時の迂回路が出来ているくらいだ。
母親とにげてきてから約2ヶ月あまり、故郷だったはずの町はどうなっているのだろう。リースタの町に近づくのと同時に不安が募る。
二時間ほどきたところで、町の入り口が見えてきた。自分が元居た家はどうなっているのだろう。街中へ入ると、あちこちに瓦礫の山があり、大工が新しく住居を建て直している姿があちこちに見えた。復興は少しずつだが進んでいるらしい。荷馬車が冒険者ギルドの前に止まると、降りてゲルトルのところに向かった。安否が気になるからだ。
『あの、ゲルトルさんいますか?』見慣れぬ受付のハーフエルフの女性に尋ねてみた。
『はい、グランドマスターなら上の部屋にいると思います。何かお急ぎの用事でしょうか?』
『アルが来たとお伝えください。そうすればわかると思うので』
『わかりました、少々お待ちください。今確認してまいります』受付の女性は上の階へと向かっていった。以前、ここにきたときより冒険者の数は増えている。おそらく、魔獣の襲撃があったからギルドから討伐依頼や偵察依頼などが増えて近隣諸国からの冒険者たちが集まってきているのだろう。
5分くらい待った頃、ゲルトルが慌てたようすで降りてきた。
『アル!!よく無事だったな!!心配したんだぞ。あちこちの家は全壊してしまったが、幸い死者は出ていない。お前たちの家は残念ながら跡形もないくらい破壊されてしまっている。あのあとどうしたんだ?今はどこにいる?』これまでの事情をおおかた説明をした。
『なるほどな、とりあえず無事でよかった。商会から受け取った物資で復興も進むだろう。そうだ、帰りにまた寄るといい。道中気をつけろよアル!』満面の笑みを浮かべ、また上の部屋へと戻っていった。
故郷の冒険者ギルドを後にして、次の町へと向かっていくことになった。




