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95. バグ自慢

 エメラの目的地はやはりこの場だったらしく、到着してからはただ佇んでいるだけだ。だが、何も起こらない。不審な人物の影もない。いったい、ここに何があるというのか。


『ますた』

「どうした?」

『あのサボテン……』


 ルゥルリィが語りかけてきた。どうやら、例のサボテンを気にしているらしい。


 周囲が整っているというのに、一本だけ生えているというのは確かに気になる。だが、それだけだ。ここから見る限りでは、それ自体に取り立てて不自然なところはないと思うのだが。


 それはともかく、ひとまずエメラから【凶魔の贄】を抜き出しておこう。スキルが導いてくれるのはここまでらしいからな。エメラの手に触れ、スキルを奪う。


“なっ! そんな馬鹿な!”


 ふと、そんな声が聞こえた。


 聞き覚えのない男の声。いや、どこかで聞いたことがあったかもしれない。おそらく、この声は……。


 だが、周囲には俺たち以外には誰もいない。無論、イゴットたちの声でもなかった。砂嵐の影響か、イゴットたちとはまだ合流できていない。


「あ、ああ、ジンヤか。ずいぶん視界が悪いね……」


 正気を取り戻したエメラが周囲を見回す。先ほどまで気にした素振りもなかったが、やはり砂嵐の影響を受けているようだ。


「……ここが敵の本拠地? 何もないし、誰もいないね。作戦はうまくいかなかったか」

「いや」


 悔しがるエメラの言葉を否定する。エメラは【凶魔の贄】に憑かれたような状態だったせいで覚えていないようだが、確かに声が聞こえたのだ――――そこにあるサボテンから。


「ルゥルリィ、もしかしてアイツか?」

『うん。間違い、ない!』

「拘束してくれ」

「あい!」


 指示を出すと、ルゥルリィが姿を現しながら蔦を生み出した。できれば隠れたままやって欲しかったんだが……いや、これは俺の判断が甘かったらしい!


 ルゥルリィの蔦に抵抗するかのように、サボテンの前に茨の防壁が生まれる。それだけじゃない。茨は驚くべきスピードで成長していき、こちらを飲み込むような動きを見せている。それに対抗するように、ルゥルリィも草木の防壁を生み出してガードした。


「えっ、何!? ていうか、誰? どうなってるの?」


 突然の珍現象にエメラが騒ぐ。気持ちはわかるが落ち着いて欲しい。


「ペルフェ、ルゥルリィを援護してくれ」

『了解!』


 サボテンとルゥルリィの攻防は拮抗している。優勢を確保するために、ペルフェを向かわせた。その間に俺はエメラを退避させる。


「ちょっ!? 今度は槌が飛んでるんだけど! えぇ!?」

「落ち着け! あれは俺の仲間だ。そして、あのサボテンは敵……おそらく、ネイルってヤツだ!」

「はぁ!?」


 説明したはずなのに、余計にエメラを混乱させてしまったようだ。だが、それ以外に説明のしようがない。


「ネイルってサルボでしょ!? 似てはいるけど、サボテンじゃないでしょ!」

「擬態するスキルがあるんだよ! なんで、アイツが持っているのかは知らんがな」


 ネイルはおそらく【サボテン擬態】でサボテンのフリをしていたのだ。何故、そんなスキルを持っているのかは知らないが、少なくとも適性はあるようだな。意外とサルボなら初期スキルで選択できるのかもしれん。


 いや、だとしても取るか?

 あんなスキル……。


『突貫!』


 そのとき、ペルフェが不意打ちを仕掛けた。虚をつかれたサボテンは茨の防壁で防ぎ損ねて、大きく飛び退く。サボテンが飛び跳ねる様はなかなか不思議な光景だったが、そんな珍妙な現象を見られたのは一瞬だけだった。動きにくいので解除したのか、それとも別の理由があるのか。サボテンが……いや、サルボが擬態を解いたのだ。


「あっ、ネイル!」

「やっぱりか!」


 擬態が解けても、姿は大きく変わっていない。やはり、サボテンの正体はサルボのネイルだった。


「ぐぅ……まさか、【サボテン擬態】のスキルまで知っているなんてな! さっきの力のせいか!」


 苦々しく吐き捨てながらも、ルゥルリィとペルフェの猛攻をしのぐネイル。とても、借金が返せず奴隷落ちした探索者とは思えない。


 ……いや、シャスカやリーザも奴隷だ。だが、他の探索者に劣らない実力を持っている。奴隷だからといって、実力がないと見るのは危険か。


 それよりも気になるのは、“さっきの力のせいか”という言葉。それがなければ知ることがないと決めつけている言動から判断すれば、サルボの初期スキルとして取れるという可能性は低いな。では、何故、ヤツは知っているのか。


「くくく……驚いているな! お前だけの力ではないと言うことさ、スキルを奪う力はな!」


 ネイルがニタリと邪悪な笑みを浮かべる。わざわざ種明かししてくれるとはありがたい限りだ。


 だが、やはりそうか。バグみたいな能力を持つヤツが俺以外にもいるとはな。


 となれば、とても油断できる相手ではない。こちらも本気を出す必要がある。


「ペルフェ」

『あいよ~!』


 ペルフェを呼び寄せ手に取る。槌状態を解き、長杖へと変化させた。肉斬骨断も付与し、できるだけ魔法攻撃の威力を高めて放つのはシャイニング・レイだ。


 ギラつく光線が天から降り注ぐ。肉斬骨断の効果もあって、大穴ダンジョンで使ったときよりもかなり威力が強化されている。これならネイルも簡単には防げまい。ついでに、イゴットたちにも良い目印になるだろう。一石二鳥だ。


 ネイルは茨でシェルターを作ることで攻撃を防ぐつもりらしい。だが、光線が掠めるたびに茨は焼け落ちる。茨を成長させ焼け落ちた隙間を埋めようとしているがどう見ても間に合ってはいない。ネイルにも少なからぬダメージを与えていることだろう。


 だが、それでもどうにかしのぎきったらしい。ネイルが叫ぶ。


「な、なんだ、この馬鹿げた威力は! 俺はチートを手に入れたんだぞ!」


 ははは、そうだな。

 でも、チート度合いはこっちが上だぞ。こっちにはサブクラスシステムのバグもあるからな!

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