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93. 乱暴な追跡方法

 エメラの話を聞いた俺は、ひとまずイゴットたちと合流することにした。ちょうど、情報共有のために集まるところだったらしい。集合場所である彼らの定宿へと向かった。


 宿に着くと、エメラ以外の三人はすでに集まっていた。その表情は一様に暗い。ニーデルが見つからなかったからだろう。


「ごめん、リーダー。待たせたね」

「エメラ……と、ジンヤもいるのか」

「ああ。ニーデルの話は聞いた」

「ジンヤが気になること教えてくれたんだ。だから一緒に来て貰ったんだよ」


 ろくな挨拶もなく、話が始まる。それだけ焦っているのだろう。気持ちはわかるので無駄口を叩かずに簡潔に事情を説明した。すでにコマタたちやエメラに説明したことの繰り返しなので、かなりスムーズに話せたはずだ。


 俺の説明を聞いたイゴットの表情は厳しい。


「ニーデルはそのスキルのせいで、失踪してしまったというわけか。しかも、エメラまでスキルを持っていると……」

「ああ。だが、俺ならそれを除去することができる。だから、エメラのことは気にしなくていい。それよりも、イゴット達もそのスキルを持っているかもしれん。確認させてもらっていいか?」

「俺たちも? ああ、本人は自覚できないんだったか」


 頷くと、イゴットはシステムカードを出現させた。他の三人も同様だ。スキル看破を受けるなら、ステータス表示でスキルリストを見せても同じという判断だろう。たしかに、そうだ。仲間内でも普通は見せないらしいが、それは俺がどうこういうことではない。


「なるほど、たしかにエメラにはあるな」

「え、本当に? 全然、わからないけど……って、リーダーにもあるけど」

「マジかよ……」


 もしかしてとは思っていたが、【凶魔の贄】はエメラだけではなくイゴットも持っていた。お互いに自分のスキルは認識できないが、相手のスキルは認識できるようだ。


「そういえば、特に錯乱したりはしないな。ジンヤの話だと、スキルの存在を指摘されると取り乱すって話じゃなかったか?」

「確かにな。たぶん、スキルレベルのせいだろう。低いうちはそれほど影響力がないんじゃないか?」


 イゴットの【凶魔の贄】もレベル1。シャスカに比べれば症状の進行はさほどでもない。不審な行動も出ていないようだし、スキルの影響はまだ小さいのだろう。


「ロンズとルバーは……ないみたいだな」


 ニヤリと笑いながら差し出すカードを見れば、そこに【凶魔の贄】の文字はなかった。


「ということは、イゴットとエメラ、それとおそらくニーデルだけがスキルを所持していたわけか。心当たりはないか?」

「といっても、パーティーで行動するなら、ロンズとルバーも一緒だ。三人だけっていうのはわからねえな。それに、何故、ニーデルだけが失踪を? アイツだけ進行が早かったのか?」

「種族的なもの、なのかねぇ?」


 俺とイゴットとエメラで原因を探る。ロンズとルバーは相変わらず無言――ではなかった。


「怪しいサルボ」

「ニーデルの知り合い」


 しゃ、喋った!?

 もちろん喋れるのは知っていたが、珍しいこともあるものだ。それにしても、端的すぎないか。


 ニーデルの知り合いのサルボねぇ。その上で怪しいとなると、俺にちょっかいをかけようとして、ルゥルリィの蔦攻撃を受けていたヤツがいたな。


 ソイツのことかと尋ねると、ロンズとルバーが頷く。俺の予想は当たっていたらしい。


「アイツがどうかしたのか?」

「慣れ慣れしかった」

「俺たちは逃げた」


 質問するとちゃんと喋るんだが……情報が小出しすぎて少しも要領を得ない。だが、イゴットとエメラには心当たりがあったようだ。


「なるほど。アイツ――たしか、ネイルだったか。変なヤツだったな」

「慣れ慣れしいというか……たしかにおかしかったかもね」

「おかしかった?」

「ええとね――……」


 鸚鵡(おうむ)返しに聞き返すと、いつもの如くエメラがそのときのことを説明してくれた。


 戦力のバランスが悪い『パワー&パワー』は魔法職のスカウトを考えていたらしい。俺が断ったあと、候補に挙がったのが、そのネイルというサルボだったという。面接というわけではないが、交渉のために全員で会ったそうだ。


「そのネイルってヤツが妙に握手をしようとしてくんのよ」

「握手? それのどこがおかしいんだ?」

「ヒュムにとってはおかしくないだろうし、ガラデンも似たような文化はあるよ? だけど、サルボにはそんな文化はないんだってさ」


 なんでも、サルボは人に触れたり、触れられたりするのを好まない種族らしい。全身棘だらけなのがその理由だ。接触を許すのはよほど気を許した身内に限るらしい。


「なのに、アイツはやたらと握手を求めてくるの。なんか必死でさ。あたいとリーダーはまあ仕方なく応じたけど……ロンズとルバーはまあ、あんな感じだからさ」


 エメラがちらりと二人に視線をやる。釣られて俺もそちらを見やると、ロンズとルバーは不敵な笑顔でポージングしていた。


 なるほど、あんな感じか。正直なところ、どんな感じなのか全くわからないが、褒めていないことだけはわかる。


「ニーデルは肩とか組まれて、本当に嫌そうにしてたのよ。ひょっとしたらあのとき……ってことでしょ。証拠はないけどね」


 喋り終えたところで、エメラが肩を竦めた。


 証拠はない。だが、そのネイルとかいうヤツが接触したときにその【凶魔の贄】を植え付けていたとすれば、辻褄は合うということか。


 接触の時間が長いほど、初期レベルが高くなると考えれば、ニーデルだけが失踪した説明もつく。決めつけるには弱いが、一考の価値はありそうだ。


 犯人候補は見つかった。ネイルというやつを問い詰めれば、何かがわかるかもしれない。とはいえ、すでに失踪してしまったニーデルをどうやって見つけるかという問題もある。犯人を捕らえたところでニーデルが戻ってくる保証はないからな。


 一応、ニーデルを探す方法についてはエメラから提案があった。


「……本気でやるつもりなのか?」

「もちろん。あたいが街を抜け出したら、後から追いかけてきてよ。それで、たぶんニーデルのところまでたどり着けるでしょ」


 あえて【凶魔の贄】に身を任せて、ニーデルの元に導いてもらおうという魂胆らしい。危険はあるが、ニーデルのことは急いだ方が良いのは確かだ。何しろ、“贄”なんて不吉な言葉が含まれたスキルだからな。面白い未来は思い描けない。


 やってみるしかないか。



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