70. 新スキルの把握
さて、続いては新規スキルの把握だ。この間の狩りではコマタ……というかシャスカに絡まれて面倒だったが、ボス格モンスターと戦えたので新スキルの獲得という意味ではなかなか有意義だった。
新たに獲得したスキルは【魔法範囲強化】【領域把握】【竜の血族】【大暴れ】【環境耐性:砂】【巨竜の足技】【凶魔侵蝕】【ハードボディ】の八つだ。
「とりあえず、【魔法範囲強化】と【領域把握】、【環境耐性:砂】は俺が使うか」
魔法系スキルと耐性系スキルは俺が優先して使うことにしている。領域把握はスキルの簡易説明にある“自らの生成した領域”というのがわからんが、種族適性に問題もないし、マイナス効果はなさそうなので俺が使ってみることにした。
「【竜の血族】は強そうなんだが……俺が使うと大幅弱体化なんだよな」
あらゆる外部ダメージの軽減。生命とマナの回復速度上昇。そして、詳細はわからないが、一部スキルの効果上昇。スキル説明を見る限りは、かなりの強スキルだ。だが、種族適性のせいで、大幅弱体化するらしい。今まで弱体化はあっても、大幅弱体化はなかったので、どの程度の性能を発揮できるのか疑問が残る。
「ペルフェとルゥルリィの種族適性はどうなんだ?」
「ルゥは使えないよ」
ルゥルリィはふるふると首を横に振る。取得不可のスキルらしい。
『僕は使えるけど……やっぱりジンヤが使った方がいいんじゃない?』
ペルフェはアーマニアという特殊な精霊のため、スキルの効果を生かし切れないらしい。特にマナに関しては所有者――つまり、俺のマナを消費するため、ペルフェ自身のマナ回復速度が上がっても意味がないようだ。
「それなら【竜の血族】も俺が使おう」
「あい!」
『それがいいよ』
さて、次は【大暴れ】だ。生命が一定値を割り込んだときに、魔法系のステータスが下降する代わりに物理系のステータスが上昇する効果なのだが……正直に言えば微妙だ。物理系上昇だけなら良いのだが、魔法系下降がいただけない。まあ、説明を見る限り任意発動なので習得しておいても問題はないが。
俺は魔法攻撃も使うので、少し相性が悪い。ルゥルリィは魔法攻撃主体なので、まず使わないだろう。
「ペルフェが使うか?」
『うーん、僕の場合、生命じゃなくて耐久力だからなぁ』
アーマニアには人間の言うところの生命というものがないらしい。従って、スキルの発動条件を満たせるかどうかがまず怪しい。
結局、誰か必要とする者が現れるかもしれないと言うことで、残しておくことにした。インベントリの肥やしになりそうな気もするが……。
【巨竜の足技】はいつものモンスタースキルで使い道がない。【凶魔侵蝕】はセプテトに確認をとるまでは保留。残るは【ハードボディ】だ。
【ハードボディ】
耐久力が大幅に強化され物理ダメージが軽減される
身体を使った打撃攻撃の威力アップ
種族適性によって取得不可
「これはペルフェ向きだな」
『もちろん、僕が使うよ! いいでしょ!』
「まあ、俺もルゥルリィも使えないしな」
『やったぁ!』
物のついでとして奪い取った【ハードボディ】だが、これはペルフェには有用なスキルだった。おそらく、ハンマー状態ならばあらゆる攻撃の威力が上がる。わかりきっていることだが、レベル20ちょっとの探索者が持つ武器としては破格すぎるな。ファントムのときならともかく、ジンヤのときにはあえて弱い武器に乗り移ってもらうことを考えた方がいいかもしれないな。
「よし、次は実際に試してみるか」
「あい!」
『オッケー!』
まず、試してみるのは【魔法範囲強化】だ。明示的に使う必要はなく、魔術スキルを発動するときに範囲を強化しようとイメージするだけで効果を発揮するようだ。まずは〈ファイアボール〉から試してみよう。
「お!」
『へぇ』
「大っきい!」
ひとまず全力で使ったところ、普段ならソフトボールほどの火球がサッカーボールくらいになった。その分、マナの消費も大きい。正確に確認したわけではないが、五倍くらいにはなってそうだ。地面に着弾したときに舞い上がった土煙は普段より派手なので、多少は威力も向上しているようだが……単純に五発放った方が効率は良いだろうな。
「単体魔法のときには使う必要はなさそうだ」
というわけで、次に放つのは〈バーストフレイム〉。今度は少し加減して。マナ消費が2倍程度になるように魔術を放つ。巻き起こる炎は普段よりも広い。半径にして二倍ほどか。面積で言えば、四倍近く。
「なるほど、使えそうだな」
魔物寄せの香を使っているときには、効率が良さそうだ。うっかり範囲を広げすぎて、味方を巻き込まないようにしないといけないな。ソロならあまり問題ないが。
さて、ちょっとわかりにくいのが【領域把握】だ。
「領域って何なんだ?」
『んー、魔術の影響範囲かな。攻撃魔法じゃなくて、設置型の……ほら、あの恐竜が砂嵐を使ってたでしょ。あんなのだよ』
「あれか」
砂嵐恐竜は【操砂術】で広範囲に砂を操っていた。そういえば、砂嵐の中、奴は大きな体格差がある俺に的確に踏みつけ攻撃を仕掛けてきたな。もしかして、この【領域把握】が有効に働いていたのか?
試しに〈サンドストーム〉を使ってみる。
巻き上がる砂嵐。視界は極めて悪い……が、以前ほどの不快感がない。これは【環境耐性:砂】の効果だろうな。
「おお、これはすごいな!」
視覚ではない……不思議な感覚で、砂嵐の中の様子がわかる。全域を同時かつ瞬時に……というわけではないが、注意を向ければその場所の様子がかなりはっきりとわかるようだ。気配察知で魔物の位置はぼんやりとは認識できるので、組み合わせれば目を瞑っていても魔物に対応できそうだ。これはうまく使えば面白いな!
『……で、ルゥルリィは何をやってるの?』
「かくれる」
「いや、窮屈なんだが……」
ルゥルリィが砂嵐を嫌ってか、俺の外套に顔を突っ込んで被害を免れようとしている。当たり前だが、子供サイズとはいえ一人が隠れるスペースなどないので、二人羽織のような不格好な状態だ。
「わかった。砂は止めるから出てくれ」
「ルゥ、砂、苦手」
外套から出てきたルゥルリィは不満そうな顔で俺を見た。どうやら、予告なしでサンドストームを使ったことが不服らしい。それなら、宿環に戻れば……とも思ったが、街にいるときには宿環から出られないのだし、できることなら外にいる時間を減らしたくないのだろう。
そういうことなら、【環境耐性:砂】はルゥルリィに使わせればよかっただろうか。いや、だが、俺も砂まみれは辛いしな。
「また、出てこないかな、あの恐竜」
だが、あの狩り場で魔物寄せの香を使うと、きっとコマタたちが出てくるよなぁ。困ったものだ。




