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66. 話のわかるマスコット

 さて、こちらのターゲットは倒したが、ボス格モンスターはもう一体いる。コマタ達の方へと視線をやると、戦いはまだ続いているようだった。


 巨石ゴーレムは5mほどの大きさ。砂嵐恐竜に比べると小さく見えるが、それでも十分に巨大だ。何より、物理的攻撃に対するタフさは恐竜以上に見える。屈強な探索者たちが、足下をガンガンと叩いているがビクともしていない。あれを物理攻撃で倒すのは難しそうだ。


 探索者たちはうまく立ち回っているが、思ったよりも苦戦している印象だった。コマタたちならばボス格モンスターと戦った経験がありそうなものなのに意外だ。それとも、一般的な探索者の戦い方はこんなものなのか?


 まあ、魔物寄せの香のせいもあって、雑魚モンスターもうじゃうじゃいる。そちらへの対処もあるから、いつも通りとはいかないのかもしれないな。


『ますた、あの石の、どうするの?』

「そうだなぁ」


 ルウルリィの問いかけに考える。勝負ごととはいえ、それぞれに担当を決めたわけだから、手を出せば反感を買うのではないかという躊躇(ためら)いはある。


 とはいえ、せっかくのボス格モンスターだ。レアスキルを持っている可能性は高い。できれば奪っておきたいという気持ちもあった。


『とりあえずスキルを確認しとけば?』


 俺の迷いを見て取ったのか、ペルフェが提案する。もっともな話だ。欲しいスキルがなければ、手出ししなければいいのだから。


 早速、巨石ゴーレムを対象に〈スキル看破〉を発動。その所持スキルを暴く。


 ほとんどは既知のスキルだった。知らないスキルは【ハードボディ】くらいか。正確な効果はわからないが、おそらくは防御能力を高めるスキルだろう。回避重視の俺にはそれほど必要ではない。コマタたちの戦いに割って入ってまで欲しいスキルではなかった。


 それよりも、だ。


「また、このスキルか」


 リストの最後に【凶魔侵蝕】というスキルがあった。レベルは3。他のスキルに比べると低レベルだ。


 ボス格モンスターが標準で持っているスキルかとも思った。だが、その可能性は低いだろう。〈スキル看破〉を習得する前とはいえ、結構な数のボス格モンスターと戦い、そのスキルを奪ってきたのだ。そんな中で一度も【凶魔侵蝕】というスキルを手に入れたことはなかった。それを考えると、ボス格が必ず持っているスキルというわけではなさそうだ。


「気になるな」


 砂嵐恐竜はやけに強かったし、コマタたちは巨石ゴーレム相手に攻めあぐねている。その原因はもしやこのスキルにあるのではないか。何の根拠もない推測ではあるが、否定する材料もない。


『で、どうするの?』

「しれっと混ざって、一つ二つスキルを盗むか」

『ルゥは?』

「積極的に攻撃はしないつもりだ。ルゥルリィは宿環に戻っておけ」

『あい』


 ルゥルリィを帰してから、巨石ゴーレムの方へと向かう。立ち塞がる魔物はもちろん粉砕だ。できればこっそり近づきたかったのだが……さすがに無理か。


「ファントム!?」

「まさか、あの大物をすでに仕留めたのか!」


 ある程度近づいたところで、あっさりとバレた。夜だったら、外套の効果でなんとかなったんだがなぁ。


 雑魚処理担当の探索者たちの間を抜け、ゴーレムと対峙している者たちのもとへと向かう。俺の接近に気がついたコマタが、一瞬だけ俺を見て言った。


「ファントムか。どうやら、勝負は私の負けのようだニャ」


 一方的なライバル宣言をしてきたわりには冷静な反応だ。変な対抗意識を燃やして、面倒くさいことになるのではと警戒していたが、落ち着いている。さすがはベテラン探索者といったところか。これなら、ちゃんと話もできそうだ。


「聞きたいことがある。あの魔物、いつもと違ったところはあるか?」


 尋ねると、コマタは周囲に“少しの間、任せる”と言ったあと、こちらに向き直った。


「いいのか?」

「構わない。奴はタフなだけで、攻撃はたいしたことはニャい。私がいなくても対処はできる」


 コマタの言うとおり、戦況は膠着状態といったところだ。双方、有効打を与える手段がないのだろう。だからこそ、こうやって情報共有できる余裕もあるわけだ。


「さて、違いといったニャ。奴は明らかに硬くなっている。足を潰してバランスを崩させてからの一斉攻撃がセオリーなのだが、全くと言っていいほど通用していない」

「なるほど。魔法はどうだ?」

「ダメージが通りはするが……そちらも通常よりは効き目が薄い印象だニャ。魔術だけで攻勢をかけるのは厳しい。途中でマナが尽きるだろうからニャ」


 それでこの状況か。戦いながら有効な策を探っているのだろうが……今のところ好転は見込めそうもないな。


 どうやら、この巨石ゴーレムは防御面が大きく強化された個体であるらしい。【凶魔侵蝕】が原因であるかどうかはわからないが、それは奪ってみればはっきりするだろう。


「試してみたいことがある。手出ししても構わないか?」

「我々の獲物だ……と言いたいところだが。長期戦になれば集中力も途切れる、か。面子を優先して無用な危険を抱え込むのも愚かなことだニャ。構わない、やってくれ」


 俺の提案に、コマタはあっさりと頷く。思ったよりも器が大きい。なんで、コイツがいきなりライバル宣言なんかしてくるんだ? 俺が何かしたか?


 まあ、許可は取れた。それなら、遠慮なくやってみようか。

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